レビュー Expert CRWi (旧Expert Carbon)

説明

 Expert CRWi(旧Expert Carbon、エキスパートカーボン)は、ハンガリーのハンドメイド=手作り卓球工房OSP(オーエスピー)より販売されていたラケットの1つになります。katsuo000が購入させていただいたときは、Expert Carbon(エキスパートカーボン)という名前で購入したのですが、現在OSP社では、Expert CRWi(エキスパートCRWi)という名前で取り扱っているようですね。

 Expert CRWi(旧Expert Carbon、エキスパートCRWi)は今流行りのインナーカーボンラケットになりますが、オールラウンダー向けラケットのカテゴリーで販売されています。OSPではExpert II(エキスパートII、5枚合板)という同じ名前とコンセプトの5枚合板も販売されています。どちらもオールラウンダー向けラケットになっていますが、Expert CRWiの方がカーボンを使っている分、スイートスポットが広くてスピードも出しやすい仕様になっているようです。まずはエキスパートシリーズのラケットと現在メインでちょくちょく使用しているVirtuoso AC(ヴィルトーソAC)とを比較してみます。

Expert II(エキスパートII) 
 5 ply woods / Black Limba / 5.40 +/- 0.05 mm 160×151 mm
 weight: 85-90 g  Speed: 5.0  Sweet spot: 6.5  Outer ply hardness: 6.5
 control: 9.5    Spin: 9.5  Arc: 9.0

Expert CRWi(Expert CRWi)(旧Expert Carbon(エキスパートカーボン)
 5+2 Inner Carbon / Black Limba / 5.40 +/- 0.05 mm 160×151 mm
 weight: 86-92 g  Speed: 6.0  Sweet spot: 8.0  Outer ply hardness: 6.0
 control: 8.5    Spin: 8.5  Arc: 8.5

Virtuoso AC(ヴィルトーソAC)
 5+2 Inner AC / Limba / 5.65 +/- 0.05 mm 158×150 mm
 weight: 86-93 g  Speed: 7.5  Sweet spot: 8.5  Outer ply hardness: 6.5
 control: 8.0    Spin: 8.5  Arc: 8.5

やはり大きく異なる点としては、ラケットのブレードの薄さになります。個人的な見解かもしれませんが、ブレード厚さが5.50 mmを切ってくると打球感がまた1段階かわるイメージで、5.40 mmの厚さになってくるとかなりしなりが強くなるイメージです。ぶつけるように打っても勝手にしなってボールに回転を与えてしまうようなイメージですね。ぶつけるようにしてドライブなどの回転をかける人には、ラケットの芯を感じにくくて気持ち悪く感じるかもしれませんし、しなりやすさから回転をかけやすいと感じるかもしれません。それくらい打球感が変化してくると思います。OSPの性能値でみるとVirtuoso ACとExpert CRWiはかなり類似な点もありますが、個人的にはかなり別物です。

OSP Blades

 OSPはハンガリーの卓球ラケットのハンドメイド工房になります。
ホームページ: https://ospblades.com/
 実際にオーダーメイドをお願いしたことがないのですが、ホームページの情報からオーダーメイドすると、下記のように様々な仕様のラケットをお願いすることができるようです。

ラケットモデル(種類)

 OSPのラケットの特徴は、弾み過ぎず強い球持ちのあるラケットです。トップ選手にとっては弾みの弱さや爽快感の低さを感じるかもしれませんが、中級者以上の層にささる高い安定感とラリー志向のラケットが多いと思います。球持ちがあるけどボールが軽くなったり威力不足になるラケットや、もっと弾むラケット、スピードのでるラケットは他メーカーでも扱いがあると思いますが、ここまで球持ちと安定感のあってボールの重さや威力を感じるラケットを販売するラケットメーカーは少ないと思いますね。注目のラケットを以下に挙げます。

Martin AC(マーティンAC)
 アラミドカーボンアウター仕様のラケットです。最新のラインアップで、まだWRMで取り扱いはありません。アウターカーボン、板厚5.8 mm、上板リンバのラケットになります。非常にスタンダードなブレードの厚さですが上板Limba(リンバ)なので、張継科ALCや林高遠ALCよりも柔らかくて球持ちを感じるはずです。打球感が近そうなラケットはフレイタスALCになりますが、フレイタスALCはブレード厚さが6.0 mで、マーティンACの方が薄いので飛距離も抑えられておさまりが良いと思います。水谷隼ZLCシリーズも上板がリンバなので、打球感は似ているかもしれません。

Martin Pro(マーティンプロ)
 7枚合板なのに珍しい板厚6.0 mm、上板リンバのラケットです。上板リンバは、例えばミズノのフォルティウスFT REなどが挙げられるますが、板厚6.0 mmはフォルティウスFT Reの6.1 mmよりも薄いので注目しています。7枚合板の力強さと、飛距離が抑えられたラケットではないかと想像します。

Virtuoso AC(ヴィルトーソAC)
 このラケットは、自分をインナーカーボンに導いてくれたラケットですね。ブレード厚さが5.65 mmと薄く、最近流行の張本智和インナーフォースALCよりも薄いので飛びすぎということは少なくて非常におさまりが良いです。そして上板リンバで抜群に球を持ちます。バックハンドでもかなり持つのでオススメのラケットです。WRMさんではブレード面積やや広めの158 × 150 mmが販売されています。バックハンド主戦を目指すなら海外サイトで157 × 150 mmのレギュラーサイズ(OSPではスモールサイズ)を購入した方がいいかもしれません。非常にオススメの一本で、最近また使うようになってきました。

Virtuoso+(ヴィルトーソ+)
 5枚合板で板厚5.8 mm、上板リンバのラケットです。非常に球持ちを感じるオーソドックスなラケットです。5枚合板なのに、しっかりとした重量があって好印象でした。5枚合板のラケットは、同じ値段のラケットでも、個体を選別して選ばないと軽い個体と重い個体とではかなり異なるラケットになってしまいます。参考までにSTIGA(スティガ)のラケットを一本購入したことがありますが、公表重量よりも10 gも軽い個体で、少しおもちゃのように感じさせるラケットでした。一方で5枚合板でも重量のあるラケットであれば、ボールの威力やスピードは高いことが保証される印象です。5枚合板はやはり中級者以上では重いラケットの方が威力と扱いやすいさを両立できると思います。そういう意味でヴィルトーソ+は重かったので非常に好印象でした。

Vario AC+(ヴァリオAC+)
 最新のOSPラケットで、片面は上板コト材にアラミドカーボンアウター、もう片面は上板リンバにインナーアラミドカーボンという、男心をくすぐる一本ですね。片方は攻撃的に、もう片方は球持ちを重視するという構成になっています。合板構成も芯材から非対称となるラケットはあまり一般的ではなく中途半端になりやすいと言われますが、一般層でフォアもバックも同じレベルでスイングできるレベルの人は少ないわけで、こういったラケットの需要は少なからずあるのではないかと想像します。自分が持っているラケットではPro-13Sという中国製のラケットが近いと思いますが染色剤を上板に使用していてやや硬めのイメージです。OSP製のVario AC+の方が球持ちを抜群に感じられるのではないかと想像します。

グリップ

OSPの特徴として、全てのラケットについて、グリップ形状を6種類から選ぶことができます。
 フレア(FL)
 ラウンドストレート(丸ストレート、R-ST)
 スクエアストレート(角ストレート、S-ST)
 コニック(Co)
 アナトミック(AN)
 中国式ペンホルダー
最近はフレアが主流ですが、ストレートでも2種類から選べるのは嬉しいですね。どのグリップも手に吸い付くようなグリップでオススメです。

ヘッドサイズ(ブレード面積)

 OSPでは、ヘッドサイズ(ブレード面積)もオーダーできるようですね。katsuo000はそこまでヘッドサイズ(ブレード面積)にこだわりはないのですが、S、M、L、XLLなどから選べるようです。ブレード面積が広いとラバーのサイズも必然的に広くなるので、その分ラケットが重くなる印象がありますね。

インナーカーボン

 このExpert CRWi(エキスパートCRWi)はInner Carbon(インナーカーボン)ラケットになります。インナーカーボンは現在の卓球界では主流のラケットカテゴリーです。カーボンの威力はやや落ちますが、木材ラケットと類似の高い球持ちと、強振したときのカーボンらしい威力が前に出るラケットです。インナーカーボンは個人的には避けていたのですが、近年自分のバックハンド技術の低さに、球持ちのよいラケットをどんどん探求して、ついにインナーカーボンに行きつきました。今はインナーカーボンで落ち着いた感があります。

上板ブラックリンバ

 このExpert CRWi(エキスパートCRWi)およびExpert II(エキスパートII)では上板にブラックリンバを使用しています。数値上、リンバよりも硬いのが、ブラックリンバのようですね。リンバそのものの球持ちって本当に安心感があって、自分も好みです。一番自分の卓球が伸びて楽しかった時代に自分も上板にリンバを使用したラケットを使って卓球をしていました。あの球持ちと安心感は本当にバツグンでした。結局自分も安心感を求めていくと、上板リンバ系に落ち着く印象です。もちろん、エキスパート系ラケットにもちいられているブラックリンバもリンバに類似の球持ちを感じさせてくれます。少なくともコト材を上板にもちいたラケットよりも球持ちは強いですね。普通のリンバと比べると気持ち硬さを感じさせてくれます。この硬さはもしかしたら好みが分かれるかもしれませんが、リンバ好きなら練習量でカバーできる程度の硬さだと思います。

性能表

 OSPのホームページより数値を確認して作成しました。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: OSP_table.png

Expert CRWiの特徴

ほぼ木材系の打球感/球持ちに抜群のしなり!

 Virtuoso AC(ヴィルトーソAC)と比較はおそらくあまり適切ではなかったでしょう。やはりオールラウンダー向けのラケットということで、球持ちはもちろん非常に高く、カーボンらしさはほぼ感じませんでした。卓球をする場所にもよると思いますが、体育館などの広い場所では正直「これカーボンラケットだよね?」と感じさせるくらい、木材らしさの強いラケットでした。ただ、カーボンが入ることで芯の強さも感じられて、ぶつけることで一発が、それ以外は上質なつなぎができて良かったです。扱いやすさは抜群で、中級者以上であればすぐに慣れてしまえるだろう、高いコントロール性能でした。この高いコントロール性能は気持ちいいかもしれません。
 また「しなり」を強く強く感じるラケットでした。ブレード面積が広くて160 mm × 151 mmもあります。ほぼカットマン用と同じレベルですね。これだけブレード面積が広いとしなりますよね。ぶつけるように打ってもしなってしなってウナギのようにどこが軸なのかわからなくなってしまいそうな打球感でした。もちろん先述のとおり、カーボンが入っているので、芯は感じられるのですが、同じインナーラケットよりも明らかにラケットの芯の柔軟さを感じられるラケットだと思います。こういったラケットでコントロールを身に着けるというのは非常に良いことだと思いますね。個人的には初級者の方にもオススメできるような品質の高いラケットだと思います。

粘着ラバーを扱いやすくする!

 WRMのうたい文句としては、粘着ラバーの性能を引き出しやすい、ということが書かれていたと思います。katsuo000が感じたExpert CRWiの特徴は、ラケットのしなりのおかげでスイングスピードが遅くても粘着並の回転量を与えてくれる点にあるのではないかと感じました。昨今、プラボールや抗菌ボールで回転量が減っています。そんな中でも一定の回転量を得やすいのがExpert CRWiだと感じました。Maxの回転量は、もっとハードなラケットでないとさすがしなり過ぎて回転のエネルギーを伝えきれていないようにも感じました。Maxの回転量ではなく、回転のかけやすいさ、ラバーのポテンシャルを高さの引き出しやすさが、抜群に優れているのが、Expert CRWiだと思います。

玄人向けのラケット

 ネーミングからもわかるとおり、玄人向けのラケットになっています。ここまでしなると、さすがにスピードが出しにくいラケットになっていて、この部分は好みが分かれるのではないかと察しします。Virtuoso ACは5.65 mmの薄さですが、威力は抜群に出ますし、ノータッチエースも狙えるラケットになっています。一方エキスパートCRWiは中陣から一発で打ち抜くには、さすがにラバーをかなり攻撃的なラバーにしないと難しいと思います。またこれだけしなるラケットは、Dignics(ディグニクス)系のラバーとの相性は悪いと思います。ハイエンドラバーを扱いやすくするためにラケットを球持ちの良いものに変更する、ということは良く行うことだと思います。ただディグニクスはなぜかラケットのとの相性があるようで、硬めのラケットとあわせないと性能、特に高い回転性能を活かすことが難しいラバーだと感じます。その理由はおそらく、シートがかなり硬くなっているためで、ラバーの性能を引き出すにはくい込ませる必要があるのですが、くい込ませるためにぶつけるように打球してもラケットがあまりに柔らかすぎるとラケットがエネルギーを吸収してしまい、ラバーの回転をかけるエネルギーが減ってしまうのだと思います。他にもシートが硬くてスポンジが柔らかいミドル硬度のラバー(Rasanter R45(ラザンターR45)、Evolution EL-S(エボリューションEL-S)、Rhyzer Pro 45(ライザープロ45)、Q Quolity(キュークオリティー)など)も相性がやや悪いのではないかと想像します。ミドル硬度ラバーはアウターやインナーの攻撃的なラケットを使いこなすためにバックハンドなどに貼るラバーが多いので、エキスパートCRWiのようなしなりの強いラケットとの相性はお互いの良さが出過ぎて逆にポテンシャルを引き出しにくいということが生じるのではないかと想像します。ご参考いただければ幸いです。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量(Max)
 Virtuoso AC > Expert CRWi > Mizutani Jun Super ZLC

スピード
 Virtuoso AC > Expert CRWi(katsuo000所有のラケットの中でもトップ3に入る遅さ)

飛距離
 Virtuoso AC > Expert CRWi > Virtuoso+

リンク

 WRMさんでの販売: https://rubber.ocnk.net/product/2968
 OSPでの販売(英語): https://tabletennis-pingpong.equipment/home/40-osp-expert-mk2-crwi-uni-all.html
 WRMさんへ投稿したレビュー: https://rubber.blog.jp/archives/51936335.html

SNSでもご購読できます。