テンションラバー vs 粘着ラバー

テンションラバーとは?

 テンションラバーとは日本卓球、特に男子で主流のラバータイプになります。テンションラバーもいくつかの分類がありますが、現在主流で最もテンションラバーはスピン系テンションラバーになります。

テンションラバーの名前の由来

 テンションラバーの名前の由来は、まさに「テンション」にあります。Tensionというのは、直訳すると緊張という意味になります。これはラバー=ゴムが引っ張られている状態を形容しており、たるんだ状態ではなく、一定の張力を受けた状態のラバーであることを表現しています。なお、テンションラバーが登場する前は、「高弾性」ラバーというものが、卓球界の主流でした。

 テンションラバーの歴史:

テンションラバーの特徴

 テンションラバーの特徴として高いスピン性能とスピード性能が特徴になると思います。特にラバー全体にテンションがかけられているので、強く食い込ませた時にボールの回転量やスピードが非常に優れたものになります。もちろんテンションがかかっているために、スピードが出やすい分、飛距離が出やすくコントロールも難しくなる傾向があります。テンションラバーは2021年現在、日本卓球において最も主流となるカテゴリーのラバーであり、多様な種類があるためラバーごとに特徴が異なりますが、粘着ラバーと比較した際の特徴は、スピードと飛距離と言えるでしょう。テンションラバー間で比較する際は、テンションラバーの細分化もkatsuo000検討しております(現在作成中)ので、ご参考ください。

 テンションラバーの分類:

 代表的なテンションラバー:
   Tenergy 05(テナジー05)
   Dignics 05(ディグニクス05)
   V>15 Extra(V>15エキストラ)
   Rakza X(ラクザX)
   Fastarc G-1(ファスタークG-1)
   Evolution MX-P(エヴォリューションMX-P)
   Rasanter R48(ラザンターR48)
   Blue Storm Z1 Turbo(ブルーストームZ1ターボ)
   Dynaryz AGR(ダイナライズAGR)
   Vega X(ヴェガX)
   Omega VII Tour(オメガ7ツアー)
  など

粘着ラバーとは?

 粘着ラバーとは中国卓球で主流のラバータイプになります。シート表面が手で触るとネバネバしていて、ボールを強く押し当てると引っ付くようなラバーのことです。粘着の強さもさまざまで、強粘着と言われるラバーでは、ラバーにボールを引っ付けて逆さまにしても重力に逆らってボールがラバーに引っ付けることも可能です。微粘着や微々粘着など、ほとんど粘着を感じないような粘着ラバーも存在します。粘着ラバーも分類が増えてきているとともに、卓球帝国中国を代表する特徴であるため一部の熱狂的なユーザーがいるラバーカテゴリーでもあります。粘着ラバーシートのネバネバしたものの正体は可塑剤といわれるゴムと比べると分子量が小さい材料によるものだそうです。

粘着ラバーの特徴

 粘着ラバーの特徴は打法にもよりますが、テンションラバーよりも打球点を落としてもスピードドライブが打てたり、台上が浮きにくいなどの特徴が挙げられる一方で、スピード性能はテンションラバーに劣るという点は共通です。卓球王国さんがまとめられている粘着ラバーの分類を、katsuo000も採用させていただいております。

 粘着ラバーの分類:

 代表的な粘着ラバー:
   Hurricane(キョウヒョウ)シリーズ
   Dignics 09C(ディグニクス09C)
   AIBIS(アイビス)
   Triple Double Extra(トリプルダブルエキストラ)
   Rakza Z(ラクザZ)
   Hurricane Pro III Turbo Blue(キョウヒョウプロIIIターボブルー)
   Hybrid K1J(ハイブリッドK1J)
   Blue Grip C1(ブルーグリップC1)
   Omega VII China Ying(オメガ7チャイナ影)
  など

テンションラバーが得意

スピードドライブ
 テンションラバーの特徴としてスピード性能が挙げられます。もちろん、スピン系テンションの中にもスピードが出しやすいラバー、逆にスピードドライブが難しいラバーは存在しますが、粘着ラバーと比較するとボールのスピードは圧倒的に出しやすいでしょう。スピードドライブが打ちやすいラバーは比較的やわらかいラバー、または同じスポンジ硬度でもシートの粒が倒れやすい設計になっているラバーがスピードドライブが打ちやすいラバーになります。

 スピードドライブが容易なラバー例
  Dignics 64(ディグニクス64)
  Tenergy 05 FX(テナジー05FX)
  Brice Highspeed(ブライスハイスピード)
  Blue Storm Z1 Turbo(ブルーストームZ1ターボ)
  Rasanter R42(ラザンターR42)

スマッシュ
 テンションラバーはスピードが出しやすい点と重複してスマッシュがやりやすいことがあげられます。この特徴が反映しているものとして、中国トップのFan Zhendong(樊振東)選手がロビングに対し、ラケットを反転してスマッシュすることが挙げられます。中国トップ選手はフォア側にHurricane(キョウヒョウ)シリーズのラバーを使用することが多いのですが、キョウヒョウはドライブは得意な一方で、スマッシュは少々難しかったりします。使用者はわかると思うのですが、スマッシュのようにハードにボールをラケットに当てる技術では、ラバーにくい込みが生じるため意図せずボールの起動が変化したり回転がかかったりすることがあるのです。そこで、樊振東選手はロビングがあげられると、バックサイドに貼ってあるスピン系テンションラバー(最近はディグニクス05を使用しているようです。)でスマッシュをします。

 スマッシュが容易なラバー例
  Tenergy 80(テナジー80)
  Fastarc G-1(ファスタークG-1)
  Rasanter R50(ラザンターR50)  

5球以上のラリー
 ラリーが続けば続くほど、テンションラバーの方が有利と言われています。これは、粘着ラバーと比較してスピードボールが打ちやすいことに起因していると思われます。粘着ラバーを使っている場合にスピードボールを打つために身体全身を使って出す必要があり、ラリーが続けば続くほど、体力を消耗するとも言えるでしょう。またラリーが長びくことに伴い、台から下がってしまった場合でも、ボールのスピードや飛距離が出しやすいテンションラバーの方が有利といえることも自明と考えられるでしょう。このようにラリーが長くなればなるほど、テンションラバーが有利であり、テンションラバーであればラリーが長びくほど逆転の可能性もあると思います。

中陣・後陣からのロビングやフィッシュ、カウンター
 ラリーと同じような理由になりますが、飛距離とスピードが出しやすいテンションラバーは中陣や後陣からの守備的といわれる技術も有利と言えるでしょう。テンションラバーであれば、ロビングやフィッシュといわれる技術もやりやすいのは、スピードや飛距離の点からも自明です。

粘着ラバーが得意

台上、ツッツキ・ストップ
 粘着ラバーが得意な技術として、台上が挙げられます。粘着ラバーは回転の上書きがしやすく、強い回転がかけることができれば、多少角度を間違えても相手のコートへ入れることが容易となります。これは飛距離が出にくいことも一役かっていると思います。また、ツッツキやストップが非常にやりやすいのも粘着ラバーの特徴になります。対照的にテンションラバー、特に柔らかいテンションラバーは食い込みが良い分、回転の影響を受けやすかったり飛距離が出やすかったりするため、ストップや低くツッツくことがやや難しくなる傾向にあります。つまり、サーブ、レシーブ、三球目までであれば粘着ラバーの方がミスをしづらいと言えると思います。

対下回転に対するドライブ
 下回転のかかっているボールをドライブする際、回転に敏感な硬いテンションラバーでは、スイングスピードが遅いと回転の影響の方が勝ってしまい、ボールが落ちてしまいます。一方で、柔らかいテンションラバーの場合は球持ちはよくなりますが、回転の影響は受けやすいので、やはり回転にあわせて角度や飛距離をコントロールする必要があります。粘着ラバーのメリットとして、どのような下回転のボールに対して、どのような角度で捉えたとしても、粘着によって一定の球持ちと回転の上書きが可能であるため、同じようなスイングでふっても高い安定感をもってドライブ返球することが容易になる点が挙げられます。サーブ3球目から5球目までを考慮すれば粘着ラバーが有利と言えるでしょう。

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