レビュー Fortius FT ver. D(フォルティウスFT ver. D)

説明

 スポーツメーカーの大手、mizuno(ミズノ)が扱うトップ選手用のハイエンドラケット、Fortius FT ver. D (フォルティウスFT ver. D)になります。日本男子代表だった大島選手用に、世界で戦うために新たにmizunoで開発された7枚合板+アウター特殊素材ラケットになりますね。現行の7枚合板として扱いやすく弾みもあるFortius FT(フォルティウスFT)の合板構成をそのまま継承しながらアウターに特殊素材を採用しています。中心からアユーズ材、ヒノキ、アユーズ材、特殊素材、リンバ材の構成で、特殊素材はDual Webという高強度ポリエステル繊維を採用しています。DはDual Webのことをさしカーボンのような際立った弾みを付与するのではなく台上の繊細なプレイには木材らしさを維持しながら後陣からの強打時などには特殊素材らしい弾みをサポートする素材だそうです。Dual Webという特殊素材を採用したラケットは今までにありませんでした。

 ケミカルの知識からコメントすると、ポリエステル(Poly ester)は化学構造としては、アリレート(Arylate)と類似構造で、ザイロン(Zylon)も類似といえば類似です(正確には、ザイロンはより分子間結合が強い構造を有します)。従いまして、Butterfly(バタフライ)のTimo Boll ZLF(ティモ・ボルZLF)などに近い打球感だと思います。廃盤になってしまったバタフライのBISIDE(バイサイド)というアウターにアリレートを配したラケットと打球感はかなり近いと感じました。バイサイドは自分が中学生の時にかなり使い込んだラケットなので、このフォルティウスFT ver. Dも、なんの違和感なくすぐに使いこなすことができたと感じました。アウターにアリレートやザイロンなどのファイバー材料を採用した7枚合板+特殊素材ラケットといえるでしょう。

フォルティウスFT ver. Dの特徴

1. フォルティウスFTから継承した
・広ブレード面積で先端重心/7枚合板重量級ラケット!
 →攻撃時は遠心力が活かせるパワフルさ!
 →守備時はブロックがど安定!

 フォルティウスFTとほぼ変わらないブレード設計ですので、フォルティウスFTの特徴がそのまま継承されていますね。広ブレード面積で、先端重心/重量級ラケットの特徴がそのまま現れています。
先端重心なので、スイングの仕方にもよりますが、3球目など攻めに転じたときの一発の威力はとてもパワフルです!角にあて安くはなりますが、フォアなら人差し指を少し立てるようにすると、バックなら手首を強く使うと、威力抜群のボールが打てるようになりますね!
重たいラケットですので、守備時には相手のボールに押されづらくブロックが非常に安定します。7枚合板を使うメリットでもあります。
攻撃も守備も7枚合板らしい特徴があふれるラケットになりますね。

2. フォルティウスFTから進化した、上板リンバ×板厚6.4 mm × Dual Webによる球持ちと回転性能!

 大島選手が、打球感を損なわず後陣からの威力を求めた結果、フォルティウスFTとほぼ変わらない打球感と扱いやすさを維持したまま、アウターに配したDual Webによって、フォルティウスFTから進化した特徴が現れていると思います。非常に安心感のある上板リンバ系の球持ちを維持したまま、しなやかさとタフさを感じるDual Webがアウターに入ることで、軽打から強打までしっかりとした球持ち感、グリップ感、と安定した高い回転量が得られます。フォアもバックもしっかり回転をかけてドライブの回転によって安定させることができます!感覚的にはフォルティウスFTよりも回転量が増えたと感じました。また攻撃的なブロックも容易に安定するのがとても良いですね。7枚合板らしいブロックが可能で、Dual Webが邪魔することはなく、むしろブロック時にブロックをサポートしてくれている部分も感じるので、とてもやりやすいです。
 板厚6.4 mmは7枚合板の中では、バランスの取れた板厚で、厚過ぎず薄過ぎず、ちょうど良い板厚だと思います。回転性能を損なわず、飛距離も出過ぎないと感じますね。最大の威力やスピードはSK7やもっと厚い7枚合板の方が出ると思いますが、その部分をDual Webが入ることでフォルティウスFT ver. Dでは、より安定した回転量とスピードが得られます。

3. Dual Webによるスイートスポットの広さ!

 フォルティウスFT ver. DはフォルティウスFTと比較して、さらに良さを感じるのがスイートスポットの広さです。自分は特にバックハンド系技術のやりやすさとスピードが増し、打ちミスや打ち損じが減りました。木材系ラケットはどうしても角やスミに当たったときのボールの飛び方が、ラケットセンターで打った時とで、異なると感じます。このフォルティウスFT ver. DではDual Webが入ったことで、球は揃いやすくなったかもしれませんが、バックハンド系の技術の質は明らかに上がったと感じます。先端重心で振り遅れや、つまることも多くなりやすいラケットですが、その部分をスイートスポットの広さで補えるようなラケットとなっていると思います!

おすすめのラバー組み合わせ

フォアラバー

 基本的には木材系ラケットですので、どんなラバーもあいます!大島選手が使用されているButterfly(バタフライ)製Tenergy(テナジー)シリーズやミズノのQシリーズとあいます。また過去にHurricane(キョウヒョウ)系を使ったことがありますが、あいますね!ミズノのカタログでは打球感はハードになりますが、個人的に上板リンバでとても柔らかいラケットだと感じます。従って特にフォアは、硬いラバーと組み合わせる方が威力やスピードが出て好きですね。

Tenergy 05 Hard(テナジー05ハード)

 テナジー05ハードを挙げさせていただきました。大島選手が張本選手に勝利した全日本選手権時にフォア側で使っていたのがテナジー05ハードになりますね。フォアドライブは威力が出ますし、中-後陣からの繋ぎのドライブでも失速しないスピードと回転量が得られます!またテナジー05ハードとあわせることで非常にサーブの質が上がると感じました!ラバーが硬くて弾むので、球足の速い横下回転サーブや、さらに球足の速いナックルサーブなど相手にチキータや回り込みを許さないサーブが出しやすいです。また05ハードなので回転量も豊富ですね!穴のない組み合わせで、しかもとても使いやすく、フォルティウスFT ver. Dを使うのであれば是非試して欲しい組み合わせになります。05ハードは重いですが、Tenergy 05(テナジー05)では球質や威力不足を感じました。ほぼ木材系ラケットですので、スイングできる範囲でハードなラバーがあうと思います。05ハードはハードなラバーの中ではまだ軽いラバーですので、おすすめです!

Hurricane NEO III Blue Sponge(キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)

 過去、メインで省チーム用のキョウヒョウNEO3ブルースポンジをフォア面に使用しておりました。やはり柔らかさを感じるので、硬度は41°でも良いと思います。回転量の多いループドライブが武器になりますね。ほぼ木材系ラケットですのでキョウヒョウとの相性も抜群です!自分で弧線を描いてあげればドライブもねじ込めますし、スピードドライブも面を開いて打つことで、勝手に回転がかかって弧線を描く感じもありました。唯一、後陣からは威力不足を感じやすい組み合わせでした。

Q5(キューファイブ)

 mizunoはQシリーズの開発のベースに、このフォルティウスFT ver. Dを使っていると思いますので、抜群にあいますね。高度としては少し硬さを感じないかもしれませんがその分扱いやすくて良いと思います。大島選手はバックに使用していますが、フォアでも十分使えると思います。少し回転量を得るには技術が必要ですが、グリップ力の強いラバーですので、ツッツキや台上が思ったより好感触なんですよね。一緒に開発されたせいか、フォルティウスFTなどの先端重心ラケットにあうスイングの方が回転がガッツリかかる印象があります。台上がやりやすくて威力が出せるのはメリットのある組み合わせだと思います。

バックラバー

 ラケットがパワフルな7枚合板なので、ラリーは良いですが、結構弾む印象があります。どちらかというと、自分は弾まないラバーを合わせていましたね。ラケット重量とも相談ですが両面粘着ラバーでも面白いかもしれません。また本レビューでは書きませんが軽く触った印象として表ラバーも感触が良かったです。mizunoの表ラバー、Boosterなどが弾みも得られるので良かったですね。先端重心のラケットですので、手首を痛めやすいのも事実です。そのことを考慮して少し軽いラバーと組み合わせても良いかもしれません。

Fastarc G-1(ファスタークG-1)

 抜群の相性だと思います!重過ぎないので、手首に負担もかかりにくいですし、スピン系テンションとしてのチキータやバックハンドドライブもしっかりおさまって良好です。しっかり回転もかかるし、ラリーでも威力を損なわず、ミート系も良好です。ドイツ製ラバーですので、ブロックや凡ミスも減りやすく扱いやすいですね。あとは使う人の腕次第となる組み合わせでもありますが、オールラウンドなプレイに適した 至上の組み合わせだと思います。

Omega VII Pro(オメガ7プロ)

 XIOM(エクシオン)のドイツ製ラバー、オメガ7プロになります。少し重くなるのですが、威力ややりやすさは申し分ないですね。ラバーもそこまで硬くないので、安定感は申し分ないと思います。チキータ、バックハンドドライブなど安定した回転量と威力が得られます。重量が重い分、ブロックの安定感や、しっかり打てた時の威力は素晴らしいですね。

Spin Art(スピンアート)(廃盤)

 過去自分がメインで使っていた時にバックハンド側で使っていたのがスピンアートになります。レシーブ重視の組み合わせで、チキータ、バックハンドドライブ、ツッツキ、どれもぶっ飛ばず回転をかけて安定して返球できるやりやすさがあります。ラリーで少し威力不足を感じる部分もありますが、まずまずの威力が得られる組み合わせだと思いますね。

各技術レビュー

フォアハンド系

軽打
 安心感のある打球感だと思います。ラケット自体は重たいので腰の回転を利用して打った方が楽だと思います。板厚と7枚合板ですので、飛距離は結構出ますね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 フォルティウスFTと比較して弧線が少し攻撃的になると思いました。グリップしている感じを強く感じるのでドライブをミスする気がしません。

面を開いたドライブ
 ブレードが大きいので、小回りは効きにくいのがネックですが面を開いて遠心力を効かせると威力あるドライブが弧線を描いて深く入ります。凄いスピードドライブが打てるんですよ!やはり7枚合板+特殊素材なので、この抜群の威力のドライブが打てるのはプレイしていて楽しいですよね。フォルティウスFTは木材ラケットなので、後陣からだと少し弾いて飛ばしてやる必要がありましたが、下がって後陣からでも回転を乗せたスピードドライブが出ますね。

対下回転ループドライブ
 自分としては一番やりやすい技術がこの対下回転ループドライブでした。めちゃめちゃグリップしてくれて良いですね。あと、フォルティウスFTからDual Webが入ってより回転量が増えた気がします。硬さがあるからでしょうね。スイートスポットも広がったので、安定感もありました。

対下回転スピードドライブ
 木材系ラケットの良いところだと思うのですが、結構スイングが雑でもスピードドライブが安定して入ります。面を開いてガバッと持っていくことで良いドライブが打てますね。ここぞという時に3球目や4球目で一発を狙えるラケットです。

カーブ/シュートドライブ
 カーブ、シュート、なんでも来いって感じでした。このラケットブレードは本当に打ちやすいです。

ブロック
 スピードボールを押されず、しっかり止められるのがいいですね。ループなど回転量のあるボールに対するブロックは球質によってはふかしやすいので、注意が必要だと思います。

カウンター
 球持ちが良いので上書きしやすいです。ラケットも重いので、前陣カウンターよりは後陣カウンターの方がやりやすいと思います。全陣でカウンターするならDignics(ディグニクス)系のラバーの方がやりやすいと思います。

ストップ
 もう少し硬いと嬉しいなって思う打球感です。それでもストップはフォアもバックもいい感じでした。

ツッツキ
 特殊素材系ラケットと比べると抜群のやりやすさですね。ラバーによってはブチッと切ることもできます。

フォアフリック
 硬い方が自分は好きですが、回転をかけるように打つと安定しました。

サーブ
 柔らかいので少し浮きやすいです。そこは気をつけてください。カーボン系特殊素材ラケットと比べるとおさまりやすくて、出しやすいと思います。

バックハンド系

軽打
 ブレード面積が広くDual Webが入って、とても良いですね。スイートスポットが広いのでラケットの打球位置に気を使わなくて良くて気にせず思い切り打つことができると感じました。

ロングボールやラリーでのドライブ
 振り遅れやすいですが、その分、威力は抜群です。手首を使うことで回転量も安定すると思います。

対下回転に対するループドライブ
 バックハンド技術全般、手首が肝になりますが、しっかり手首を効かせることができると回転量もあって安定しますね。

対下回転に対するスピードドライブ
 パワーを要しますが、抜群の威力です。手首を痛めやすいのでどちらかというと腰と足を使った方が良いと思います。

カーブ/シュートドライブ
 少し小回りが効きにくいので、カーブドライブの方が打ちやすいですね。ラケットヘッドを落とすだけで良いのでやりやすいです。

ブロック
 ブロック技術が極めて安定します。当てればとにかく入れることができる高い守備力がこのver. Dにはあります。多分特殊素材Dual Webと上板リンバ材というのが良いのだと思います。Dual Webでスイートスポットが広がり、リンバ材で球を持ち打球が上がる。ラリーでの安心感も素晴らしいです。

カウンタードライブ
 先端重心なので、カウンタードライブは結構難しいですね。どちらかというとアクティブブロック気味に全てドライブ回転を少しかけるようなブロックが良かったです。手元で抜群の伸びはありませんでしたが、安定感と質を維持できました。

ストップ
 カーボン系特殊素材入りラケット比べると抜群にやりやすいですね。

ツッツキ
 相手に打たせないくらいブチっと切ることができます。

チキータ
 ラバーにもよりますが、木材系の打球感でとてもやりやすいです。手首を使うことで回転量も得られると思います。

その他

 フォルティウスFT ver. Dは、これだ!と思って3本所有しています。今は実はこれだと思っておらず、3本が眠っている状態です涙。ストレートが2本、フレアが1本ですね。ストレートは、一本は88 gで若干、板厚が6.3 mmと公称6.4 mmよりも若干薄いものでしたが、それが逆に回転量を増やして飛距離を抑えてくれて良かったように思います。ラケット重量はそこまで重くないのですが、先端重心なんで威力や回転量は、上手に打てると素晴らしいものがありますね。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > Mizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)

スピード
 Zhang Jike ZLC(張継科ZLC) > フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > 張継科ZLC > 水谷隼ZLC

粘着ラバーとの相性
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > 張継科ZLC

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