レビュー Q3

説明

 大手スポーツ用品ブランドのMIZUNO(ミズノ)は卓球界では後発ですが、他社卓球メーカーとの差別化を図るため、卓球界では挑戦的に住友理工とラバーを共同開発しました。その共同開発したラバーがQシリーズになります。Q3の発売は2017年で発売当初から、住友理工との共同開発した挑戦的なラバーとして話題となったラバーでした。この背景には近年卓球界ではドイツ製ラバーが台頭し、日本製ラバーはButterfly(バタフライ)のTenergy(テナジー)シリーズとDignics(ディグニクス)シリーズをのぞいて、減って来ている事実があります。しかしながらミズノは共同開発できるメーカーを探してゼロからトップ選手用のラバーを開発したわけです。非常に挑戦的で卓球界に刺激を与える効果があったと思います!

 Qシリーズのラバー以前のミズノのラバーといえば、テンション系表ソフトラバーのヒット商品、Booster(ブースター)シリーズや、ドイツ製テンション系裏ソフトラバー、GFシリーズが挙げられると思います。ブースターシリーズは女子選手を中心に存在感を示していましたが、GFシリーズは辛口に申し上げると浸透はあまりしていませんでした。価格帯もトップ仕様というよりは中級者層をターゲットにしたような価格設定でした。一方、ラケットについては、元日本代表の藤沼亜衣選手が監修した7枚合板ラケット、Fortius FT(フォルティウス)が、扱いやすさと7枚合板の威力で確かな存在感を示していました。しかしながらラケットは一度購入したら1年以内に新たに購入する類のものではないので、収益には繋がりにくいのでしょうね。そこで、トップ選手でも使用に足るハイエンドなテンション系裏ソフトラバーの開発が始まったのだと思います。

 住友理工との共同開発において、参考としたと思われるラバーはモンスターラバー、テナジーシリーズでしょう。現在ではQシリーズはQ3、Q4、Q5と3種類販売されていますが、本ページで試打レビューしているQ3は最もスピード性能が高いとしているラバーになります。テナジーシリーズでいうところの、Tenergy 64(テナジー64)に当たるラバーになるわけですね。このラバーの注目は、なんと言っても他のメーカーのラバーでは絶対に使用していないスポンジとシートです。katsuo000は卓球のラバー製造は詳しいわけではないですが、基本的に各卓球メーカーは製造工場を持っているわけではなく、シート材質、シートの粒形状、スポンジ材質、スポンジ硬度などを指定して、外注していることが多いようなのです。よってシート材質、粒形状、スポンジ材質、スポンジ硬度の組み合わせはいく通りも存在するでしょうが、流行のラバーに求められる、シート材質、粒形状、スポンジ材質、スポンジ硬度はどうしても似てきますから、同じラバー製造工場で製造されたラバーはどうしても似てきてしまう、ということが生じるのでしょう。しかしQシリーズは住友理工で製造されていて、住友理工は他のラバーは製造していないようですので、他の卓球用具メーカーとは差別化されているというわけです。同じことをしているメーカーは、Butterfly(バタフライ、タマス)になりますね。自社工場を持ち、テナジーやディグニクスといったラバーはバタフライの工場でしか作ることができない、という強烈な差別化をはかっているわけですね。

 ミズノのホームページに種々の情報が掲載されていますので引用させていただきました。

 Q3は、粒の太さが1.65 mmと少し細めで粒と粒との間は0.63 mmに調整されています。テナジーシリーズの主軸、Tenergy 05(テナジー05)、Tenergy 80(テナジー80)、Tenergy 64(テナジー64)は、粒の太さが1.7 mmで粒と粒との間の距離が最も短いのがテナジー05、中間がテナジー80、最も離れているのがテナジー64になります。Q3は1.7 mmよりも細い1.65 mmの粒で、倒れやすくてスピードが出しやすいラバーになるようです。また、シートの厚さは0.78 mmで粒の高さは0.99 mmと他のQ4、Q5よりも高い粒ですので、それだけ粒が細い特徴が現れやすいラバーと想像できますね。

性能値

 公表性能値はGFシリーズには存在しますが、Qシリーズは図・マトリックスしか存在しません。ミズノのホームページより引用させていただきました。

 Qシリーズは、スピードも回転性能も、GFシリーズよりも高いことが分かりますね。

 Q3は飛距離が出ることがよく分かりますね。弾道は最も低いこともわかります。

 上記の図は、かなり理系な図で、個人的には興味深いですがわかりにくいですね。ラバーに使用されているゴムという材料は粘弾性を持つ材料ですので、外からの力に対して、どのように応答するのか、その応答を数値化している図になりますね。
 この図はゴムに力を加えたときに戻ろうとする力の効率のようですね。硬いとエネルギー損失が大きくなるみたいですね。このようなグラフをおそらくゴムの組成ごとに作っているのではないかと想像します。適切に硬く、適切にエネルギー効率の良いラバーを導き出しているのだと思います。

 わかりやすいですね。Q3はテナジーやディグニクスでいうところの64に当たる粒形状だと言えますね。ただし、完全に同じではないということもわかります。おそらく、Qシリーズはミズノの看板ラケット、フォルティウスFTまたはFortius FT ver. D(フォルティウスFT ver. D)と組み合わせて開発されたようで、木材系のラケットとの相性が良いラバーのようです。木材系ラケットは球持ちが良く回転をかけやすい一方で、スピードは少し遅くて弧線も高く出やすいのが特徴です。スピードが遅く、弧線が高いことを補うようなラバー仕様になっていると思います。

Q3の貼りと重量

 いつものようにZhang Jike ZLC(張継科ZLC)に貼りました。

 ラバーの反り返りがすごいですね。テンションがかかっているのでしょうね。他のメーカーと比べても明らかに反り返ってます。ちなみに独特のゴム臭さがあります汗。

Q3(キュースリー)
 テンション系裏ソフト(XL52/3)
 日本製、日本卓球協会検定品
 細めの粒形状、粒と粒の間が狭い
・Sponge Thickness: 中(1.7 mm)、厚(1.9 mm)、特厚(2.1mm)
・Sponge硬度:47
・6,300円 + 税
・69(切断前) → 47 g(張継科ZLCに貼って)

 軽いと感じました。64に近い粒形状のシートですので、軽いのは当たり前かもしれません。

Q3の3つの特徴

1. 粘着ラバーのような打球感!

 Q3は打球感は非常にマットでまさに粘着ラバーに近いようなスピン系テンションラバーでした!粘着ラバーのような打球感ですが、スピードはスピン系テンションラバーとして十分以上出てるし、回転量と重さも最低限あったと感じました。打球感はおいておいて、打てるボールは前評判通りのものだと感じましたね。イメージとしては、Q3はスポンジ粒は倒れやすいスピード系の粒形状のシートでありながらスポンジはかなり硬めでハードなラバー、と感じました。

2. ツッツキ、ストップが止まる!

 驚いたのが、Q3のツッツキとストップで、とにかくピタリととまりました他のQシリーズも同様でツッツキ、ストップが浮きにくかったです。素晴らしい特徴だと思います!切りやすいわけではないですが、ツッツキとストップの止まり方は非常に好印象でしたね。これだけ止めやすいとなると、普通に本職として使っても良いと感じました!

3. カウンタードライブがやりやすい!

 ツッツキとストップに加えて、非常に好感触だったのがQ3でのカウンタードライブですね。上書き系のカウンタードライブがとにかく好印象で、ひきつけてドライブで上書きするとたいてい入るような万能感がありましたね。これは非常に頼りになるラバーだと感じましたね。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 硬さを感じますね。硬さでボールが落ちそうな打球感でした。

ロングボールやラリーでのドライブ
 ドライブも硬さで落ちそうになる感じです。弱いタッチのドライブが難しくて、ドライブを打つならガツっとかけないと落ちてしまう感じです。ドライブを打って感じたこととして、弧線を大きく描きやすい木材系ラケットとの組み合わせた方がバランスが取れそうな気がしました。まさにフォルティウスFTかフォルティウスFT ver. Dですね。ただどちらも重いラケットで、ラバー面積も広いラケットですので、Qシリーズを貼るとかなり重くなると思います。
 ドライブのスピードはかなりあって、弧線もしっかり描いていました。同じくらいのスポンジ硬度であるRasanter R48(ラザンターR48)と比べても明らかに硬くてマッドでヘビーな打球感でした。

面を開いたドライブ
 硬いラバーなので期待したのですが、思ったよりすぐ板に当たる感じがありました。Q3だからかもしれません。Q4またはQ5に期待したいです。板に当たる感じがあるので、食い込ませすぎると回転がかからずミスしやすくなると思います。

対下回転に対するループドライブ
 Q3でもかなり質の高いループドライブができました。少し体が怠ると回転量が落ちる感じがありましたが、スピード系の粒形状のラバーであるのにかなり好感触なループドライブでした。Q4やQ5に期待したいです。

対下回転に対するスピードドライブ
 これは要注意で、スピードと回転を半々くらいでのスピードドライブが安定しました。食い込ませすぎると不安定です。板に当たり易いからだと思います。

カーブ/シュートドライブ
 あまりじっくり打てなかったのですが、かなり好感触でした。少し巻き込んでカーブドライブ気味にドライブする方が、回転のかかり方が強くて横回転が入る分ボールも安定してよかったです。

ブロック
 やりやすかったです。硬くて相手の回転の影響を受けにくいためだと思います。

カウンタードライブ
 上書き系のカウンタードライブがやりやすくてよかったです。またカウンタードライブは思ったよりスピードが出やすくて出すつもりがなくてノータッチを狙えるドライブになる感じがありました。

ストップ
 ボールを止めやすくてよかったです。スポンジ硬度以上に止め易いと思います。

ツッツキ
 こちらも低くて良かったです。ただしあまり切れていないので上手な人は打ち込めると思います。

フォアフリック

フォアサーブ
 しっかり切ることができて良かったです。最低限の回転がかかっていると感じました。

バックハンド系

軽打
 そこまで硬いとは感じませんでした。

ロングボールやラリーでのドライブ
 意外とやりやすかったですが気を抜くと振り遅れてミドルやフォアへ流れて行きました。ドライブしやすいラバーだと思います。

対下回転に対するループドライブ
 思ったより難しかったです。球離れが速く、手だけで打とうとすると落ちると思います。しっかり体で打てれば十分安定すると思います。 

対下回転に対するスピードドライブ
 腕の問題だと思いますが難しかったです。

カーブ/シュートドライブ

ブロック
 硬くてあまり回転の影響を受けないのでやりやすかったです。スマッシュなどをとるのは難しいと思います。

カウンタードライブ

ストップ
 やりやすかったです。少しとまりすぎてネットミスもありました。

ツッツキ
 こちらも低くて良かったです。でも切れてはないですね。

チキータ
 やりやすかったです。しっかり上に上がりますね。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 Dignics 05 > Q5 ≧ Tenergy 05 Hard > Q4 ≧Tenergy 05 > Q3 ≧ Tenergy 80

スピード
 Dignics 05 > Tenergy 80 ≧ Q3 ≧ Q5 ≧ Q4 > Tenergy 05

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