レビュー Rasanter R53(ラザンターR53)

説明

 ドイツの卓球メーカーで常にスタイリッシュで異色の存在感を放つandro(アンドロ)さんのラバーをレビューしていきたいと思います。アンドロは近年明らかに日本でも存在感が際立ってきていると思います。その要因として2017年卓球ワールドカップで水谷隼選手に勝利したり、2019年世界選手権で中国のXu Xin選手(許昕選手、中国)に勝利しているSimon Gauzy選手(シモン ゴーズィ選手、フランス)や、2019年全日本選手権にランカー入りした濱川明史選手の使用用具がアンドロであるという事実があると思います。

RasantからRasanterへ

 アンドロさんは2016年まで、看板として販売していた特徴的な緑色のスポンジのラバーRasant(ラザント)シリーズ(Rasant Grip(ラザントグリップ)、Rasant Power Grip(ラザントパワーグリップ)、Rasant Power Sponge(ラザントパワースポンジ)、Rasant Beat(ラザントビート)、Rasant Turbo(ラザントターボ)、Rasant(ラザント)の6種類)を全て廃盤とし、新たにRasanter(ラザンター)というラインナップを2017年から販売開始しました。ラザントシリーズと同じく緑色のスポンジを採用した新たなフラグシップラバーであるラザンターシリーズ。ラザンターシリーズは回転性能が高く、弧線を作りやすいRシリーズと回転性能に加え、スピード性能も高いVシリーズが存在し、スポンジ硬度が反映した数字をRまたはVの後につけられた名前で販売されています。また他のドイツメーカーに先んじて、Ultra Max(ウルトラマックス)という、スポンジ厚さ2.3 mmとする技術を搭載したラバーラインナップになります。この技術というのは、それ以前ではトップ選手用に適用された技術のようで、シートを現行よりも、さらに薄くしてその分、スポンジを厚くする、といったラバーになります。ラバーは接着層を含めて厚さが4.0 mm以内という国際ルールが存在しますので、スポンジを厚くするためにはシートを薄くする必要があるわけです。シートが薄く、スポンジが厚いラバーの方が、回転とスピードと飛距離が出しやすく、トップ選手受けする性能が出しやすいと言われているそうです。しかしシートを薄くするというのは製造バラ付きが生じやすくそれ以前ではあまり出回っていなかったようです。おそらく最新技術で生産性を上げることができ、結果低価格でシートが薄くスポンジの厚いラバーを生産できるようになり、一般市場へ販売するようになったものと思われます。この技術は日本や世界の卓球用具を牽引し世界標準となるTenergy(テナジー)シリーズを販売するButterfly(バタフライ)さんのラバーにはないようで、バタフライさんはいまだに特厚でもスポンジ厚さは2.1 mmのままとなっています。近年他のドイツメーカーでもシートが薄くスポンジの厚いラバーが増えてきていますね。
 ラザンターは現在までに8種類のラザンターが販売れており、Rシリーズが6種類、Vシリーズが2種類になります。

Rasanterシリーズ

 ラザンターシリーズは、回転系のRとスピード系のVでスポンジ硬度が細かく選べるシリーズのようなネイミングとなっていますが、実際に試打すると想像と異なりました。どうやらスポンジ硬度を変えるともに、シート形状も変更していて打球感や性能、やりやすい技術は異なりました。さらにVシリーズは確かにスピードは速いですがかなりスピン系テンションで回転もかなりかかるので、決してスピード特化のラバーという訳でもありませんでした。katsuo000はR53、R48、R50、R47、V47を試打しており、それらの比較を今後まとめていきたいと考えております。ここでコメントさせていただくことは、R53、R48、R50のシートの粒形状はやや細めで少し球離れの速いと感じる粒形状でした。Dignics 05(ディグニクス05)やTenergy 05(テナジー05)と比較すると球持ちを感じにくいシートの粒形状になると思います。一方で、シートは柔らかく、スポンジも食い込みがかなり良いので、ラバー全体で食い込ませると球持ちを感じるラバーだと思います。
 2017年に販売開始した当初は、R50、R47、R42、R37、V47、V42の6種類でした。さらに2019年10月にEnergy Cell(エナジーセル)技術搭載のR53、2020年5月に同じくエナジーセル技術搭載のR48を新発売しました。現在アンドロさんのフラグシップ的ラバーがR53とR48になりますね。

公表性能値比較

 アンドロさん公表性能値比較になります。アンドロさんはスピードとスピンに加え、コントロールという項目を加えているのが特徴でしょうか。やはりエナジーセル採用のR53とR48は高い性能となっていて注目のラバーになりますね!

 R53のレビューを拝見すると、スピードが出る!というものが多いのですが公表性能値上ではV47の方が、スピードが出ることになっています。既にR53、R48、R50、R47、V47を試打したので分かりますのでコメントしておきますね。R53よりV47の方が単純なスピードは速いと思います。V47の方がとても直線弾道になるため体感以上に速いと思いますね。特にV47の中陣ドライブはかなりのスピードが出る印象です。一方で、R53は弧線を非常に強く描くので、その分体感よりもボールが遅くなる印象です。しかしながらR53の方がプレッシャーや圧力のあるボールで体感的なスピードが速いと感じます!特に弧線を描きながら回転によって加速する感じがR53のドライブにはありますね!ボールが相手の台に到達するまでの時間は数値上はV47の方が速いと思いますが、それは直線弾道によるところが大きいと思います。卓球は単純なスピードだけを競う競技ではないです。R53の方が球威や回転量、そして弧線を描きながらの回転による加速は抜群に高く、緑(赤?)のモンスターラバーと言えると思いますね!

R53のラバー貼りと重量

 いつものごとく、Butterfly(バタフライ)さんのZhang JIke ZLC(張継科ZLC)に貼り合わせました。使用した接着剤は同じくバタフライさんのFree Chack II(フリーチャック2)になります。

重たいですね!

 貼る前の写真を掲載していませんが、重量は52 gでした。これはヘビー級ですね!でもOmega VII Tour(オメガ7ツアー)やOmega VII Hyper(オメガ7ハイパー)ほどではない

Rasanter R53(ラザンターR53)
 UMテンション(テンゾーバイオスUM)
 Energy Cell(エナジーセル)
 40+ Plastic Ball対応
・Sponge Thickness:1.7 mm、2.0 mm、ULTRAMAX(UM)
・Speed:118
・Spin:125
・Control:87
・Sponge硬度:53°
・6,500円 + 税
・72 g(切断前) → 52 g(張継科ZLCに貼って)

Rasanter R53の3つの特徴

1. 粘着ラバーとは異なるウネル癖球ドライブ!

 R53の1つの特徴が、ウネル癖球ドライブだと思います。癖球と言っているのはkatsuo000くらいかもしれませんが、綺麗な縦回転のドライブというよりはジャイロ回転や横回転が勝手に入りやすい印象があります。粘着ラバーのような癖球ではなく、スパイラル回転の入ったような、回転による加速のあるドライブになりやすい印象を受けました。またスピン系テンションなので打点を落とすと粘着ラバーほど容易ではないのですが、打点を落としてもスイングを前に振って入る感じがありました。横回転を入れた弧線はかなり大きな弧を描いて台へ向かってくれる印象です。ギュインと加速するように弧線を描くので非常に打っていて爽快感や疾走感があって好印象でした。同じようなドライブはTenergy 05 Hard(テナジー05ハード、Butterfly製、スポンジ硬度43°)やSpin Art(スピンアート、Butterfly製、現在廃盤、スポンジ硬度48°(Butterfly硬度))で思い切り食い込ませて回転量の多いパワードライブを打てた時に出るイメージですね。R53の方が回転量は若干落ちますが、容易に連続でパワードライブが打ちやすいと感じました

2. 高い回転量と回転のかけやすさ!

 2つ目の特徴だと感じたのが、高い回転性能です。感覚的にはTenergy 05(テナジー05)に匹敵するか、それ以上の高い回転性能を有すると思います。またR53は思い切り擦り上げた時はもちろん高い回転量が得られるのですが、うたされたようなドライブになっても、結構ドライブ回転がかかっていたのが印象的でした。ある一定以上のインパクトで回転をかけることができれば、豊富な回転量が得られるようです。最大限の回転量のループドライブは正直やりにくいです。それはおそらく粒形状がやや細いようなので球持ちを感じにくく、粘着ラバーなどでやりやすいチョリっとかけるループドライブはやりにくいラバーになります。最大限の回転をかけたループドライブはむしろ、粘着ラバーやDignics 09C(ディグニクス09C)やDignics 05(ディグニクス05)の方がやりやすいでしょう。ラバー自体は回転性能特化なラバーではないにもかかわらず、高い回転性能と想像以上に回転をかけやすい性能を有しているということだと思います。

3. スピードドライブの打ちやすさ

 3つ目はスピードドライブですね。人によってはパワードライブといってもいいかもしれません。非常にスピードドライブが打ちやすいラバーでした。前へ振ればスピードドライブが安定して入ってしまう感じがありましたね。また結構厚くボールに当ててもシートやスポンジが食い込みやすいので、想像以上に弧線弾道を描いてくれて勝手にスピードドライブになる感じがありました。弾道はあくまで弧線弾道であり、直線的なミート打ちは個人的には少しやりにくいと感じました。かなりシートが柔らかくて食い込みやすいので、一定以上のインパクトは必要ですが、弧線も描くのでとにかくスピードドライブが打ちやすかったです。ただし、粘着ラバーやテナジー05などのようにスピードもあって回転量も顕在なスピードドライブというよりはスピードドライブが安定するのに満足する回転量と、打ち抜けるスピードのスピードドライブ、という感じでした。

感想

 katsuo000の感想としては、かなり満足するラバーでした。感覚的には100点満点中90点位の非常に良いラバーだったと思います。これは値段を除いた評価で値段を含めるともっと高くなると言えます。個人的に満点を出せない理由はシートが柔らかすぎるために、カウンタードライブがやや難しいことと、相手の強烈な回転のドライブに対して少し回転の影響を受けやすくブロックしづらいと感じたことです。フォアで使う分には、球持ちに不満は全くなく、少しループドライブが難しいと感じたくらいでした。もし仮にディグニクス05が販売されずテナジー05やテナジー05ハードしか販売されていなかったとしたら、乗り換えていたと思いますね。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 結構シートが柔らかいと感じます。シートが柔らかく食い込みを強く感じますね。この辺りは好みが分かれそうな気がします。

ロングボールやラリーでのドライブ
 ドライブを打つと、「暴れ馬!」とか「暴れん坊将軍!」って言いたくなると思います。それくらいボールがウネる!ウネる!素晴らしいドライブですね!

面を開いたドライブ
 食い込みが良いので面を開いたドライブも打ちやすいです。粘着ラバーらしい癖球が出るとかはないですが、粘着ラバーらしい面を開いてぶつけながら回転をかけるドライブでも好感触でしたね。スポンジが本当に食い込みやすく、キョウヒョウのブルースポンジは言い過ぎですが同じような部分があるように感じました。

対下回転に対するループドライブ
 フォアなら問題なく打てます。ただし打点を落としすぎると難しくなる感じがあるのと、浅くて遅くて回転量の多いループドライブは少し打ちにくかったです。粒形状が少し細めによるものだと思うのですが、球離れがやや早いためにボールの深さのコントロールがやや難しかったですね。多少打球点を落としても前へふって質の高い回転とスピードの早いドライブにしてしまった方が良いと思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 真骨頂であるスピードドライブが打ちやすかったですね。回転性能の高いラバーなのにスピードドライブが打ちやすい、というのは非常に相反する性能で非常に素晴らしいと思います。打球感もやりやすさもドライブの弾道も全く異なりますが、まるでディグニクス05のような特徴だと思います。

カーブ/シュートドライブ
 カーブドライブがいいですね。巻き込んでドライブしたくなります!横回転を入れた方がボールのウネりに味が出ると思いますので、どんどんカーブさせていきましょ!

ブロック
 ただ当てるだけだと少し回転の影響が受けやすいです。したがって自分からアクティブブロックのように回転を積極的に入れた方が良いと思いますね。

カウンタードライブ
 少し打ちにくかったです。シモンゴーズィ選手みたいに少し下がってしっかり球を持って上書きするようなカウンタードライブの方がやりやすく、打点の早い頂点前でカウンタードライブするのは少し難しい印象を受けました。

ストップ
 止める分ならかなりやりやすかったです。ツッツキのような台上技術のインパクトだとスポンジがほとんど食い込まず、非常にストップしやすいですね。またシートで捉えるようにすればまずまず切りやすかったです。スポンジまで食い込ませると飛距離が出やすくストップになりにくいと思います。

ツッツキ
 プッシュ気味のツッツキはしやすいですが、やはりスポンジまで食い込ませると想像以上に飛距離が出てオーバーミスしやすいです。しっかりシートで切るようにした方が安定して回転もかけやすいと思います。

フォアフリック
 試打できませんでした。最近フリックできてません。涙

バックハンド系

軽打
 軽打から球離れの速さを感じました。

ロングボールやラリーでのドライブ
 バックハンドだとかなり振り遅れが多くて技術力不足を感じましたね。やはり重くて硬くてインパクトが足りません汗。

対下回転に対するループドライブ
 かなり難しかったです。技術力不足ですね。

対下回転に対するスピードドライブ
 バックだとかなり難しかったです。これも技術力不足ですね。

カーブ/シュートドライブ
 カーテン打ちではかなり感触よく回転がかかってました。練習でやってみたのですが、結構飛距離が出てしまいオーバーミスが多かったです。

ブロック
 ディグニクス05に慣れつつあるので、比較すると球持ちが短くて回転の影響を受けやすくて難しかったです。回転性能の高いスピン系テンションをよく使うので自分はやはり球持ちを感じるラバーの方がブロックはやりやすいと感じます。しっかりボールを持ってから返球できると感じるからですね。ただ当てるだけ、ボールに対して壁を作るイメージでブロックするならディグニクス05よりもやりやすいと思います。

カウンタードライブ
 バックで使う場合は、カウンタードライブというよりはカウンターブロックがやりやすかったですね。ブロックで触れたような内容に近いです。食い込みがよく、粒も細めなのでミートやブロックは回転性能の高いラバーの中ではやりやすいと思います。自分はあまり多用せず、試合ではほとんど使わない技術になりますね。

ストップ
 テナジー05ハードでストップするようなやりやすさでした。切って安定させるラバーではないとも感じましたが、シートはスポンジが硬いのでまずまず強くR48よりもシートで切りやすいと感じましたね。

ツッツキ
 食い込ませるとぶっ飛ぶのでそこだけ要注意ですね。しっかり切れて回転性能の高さを感じました。

チキータ
 飛距離が出過ぎて難しかったです。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 R53 > Tenergy 05 > Omega VII Tour

スピード
 Dignics 05 > R53 > Tenergy 05

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 Dignics 09C > R53 > Dignics 05

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