説明
今や全てのラバーの世界標準:World Standardである、Tenegy 05(テナジー05)。テナジー05を超えるラバーとしてButterfly(バタフライ)からDignics(ディグニクス)シリーズが販売された現在でも、テナジー05の存在感は確かなものがあります。それはトップ選手やバタフライと契約する選手が未だにこのラバーを使用していることが1つの理由と言えるでしょう。それではディグニクスシリーズのラバーが登場した今、テナジーシリーズ、そしてテナジーシリーズの中における代表的なラバー、テナジー05はどのようなラバーなのか、考察しながらレビューをしていきたいと思います。
テナジー05の発売はなんと10年以上前の2008年になります。当時スピードグルーの全面禁止という大きなルール変更は、強烈な衝撃を与えました。その激震の中で世界標準への高みを駆け上がり、モンスターラバーとなったのがテナジー05です。スピードグルーが使えなくなって、後加工による高弾性ラバーのスピード性能もスピン性能も引き出せなくなったルールの中で、テナジー05と「スピン系テンション」ラバーが台頭しました。今なお、スピードグルーの禁止と一部の選手の補助剤使用問題(ルール上は禁止であるラバーの後加工)は解決していないのが実情ですが、スピードグルーが使えなくても、高いスピード性能とスピン性能を有するテナジー05は、卓球界の救世主のような存在と言えたでしょう。このような時代の後押しも相まってモンスターラバーは誕生しました。
性能値
テナジー05の公表性能値について、確認してみましょう。バタフライさん公表の性能を表と図にしてみました。
この性能図から分かることは、回転性能とスピード性能をどちらも高い性能を有しているラバーの1つがテナジー05であることがわかります。テナジー05に回転性能もスピード性能も勝るラバーはDignics 05(ディグニクス05)とDignics 80(ディグニクス80)の2枚しか存在しないこともわかります。どちらのラバーもスポンジ硬度がテナジー05よりも硬いラバーですので、テナジー05よりも扱いが難しいと言えるでしょう。このハイバランスな性能がテナジー05の特徴と言えると思います。
スポンジ硬度を反映させた図からも分かるように、回転とスポンジ硬度の和が50以下で最も高いスピン性能を有するラバーがテナジー05ですね。スポンジ硬度が低い中で、回転性能に長けるラバーであると言えますね。
続いて、テナジー05と他のテナジーについて、比較していきます。バタフライさん公表の6つの技術のやりやすさについて数値化したものになります。
スピードドライブ × ループドライブ
スマッシュ × カウンタードライブ
ブロック × 台上
回転系の技術に少し寄っていますが、すべての技術が非常にやりやすいことが分かると思います。トップ選手が求めるラバーの条件に、どの技術もアナなく行える、という観点があると聞いたことがあります。トップ選手はあらゆる選択肢を持つので1つでも欠点や課題を持つ用具、というのは選びたくないわけですね。また現代卓球において重要な回転量も補える、という点は見逃せませんね。まとめると、どのような技術でも平均点以上を確実に取れる、回転性能の高いラバーがテナジー05といえるでしょう。
テナジー05を使用するトップ選手
2020年7月時点でテナジー05を使用する選手を下記に挙げさせていただきました。
・張本智和選手 / バック ・松平健太選手 / フォア・バック ・吉田雅己選手 / フォア ・戸上隼輔選手 / バック
張本選手や戸上選手は、チキータで有名な選手になります。2人の攻撃的なレシーブチキータはテナジー05の性能によって得られている部分もあると言えるでしょう。
また松平健太選手は長くテナジー05を使用・愛用してきた選手で、得意な技術は多彩なブロック技術ですね。吉田選手の得意な技術はカウンターパワードライブが挙げられると思います。
このように各選手を象徴する得意技は異なると感じます。これは異なる特徴的な技術でもテナジー05なら出来てしまう万能性、扱いやすさを象徴していると言っても過言ではないと思います。
なぜDignics 05ではなくTenergy 05
性能表・図からわかるようにテナジー05は非常にバランスの取れたスピード性能とスピン性能を持つことがわかります。テナジー05よりも高いスピード性能、スピン性能のラバーも確かに存在しますが、それらは基本的にはテナジー05よりもスポンジ硬度が硬かったり、扱いやすさが変わるラバーでもあると言えます。つまり10年以上前に発売されてもなお、テナジー05がトップ選手に愛用されるのは、高いスピード性能、高いスピン性能に加え、高いコントロール性能、扱いやすさ、など総合的なバランスで選ばれていると言えるでしょう。
またディグニクスシリーズは非常に癖の強いラバーでもあり、テナジー05にあった打ち方が必ずしもディグニクスシリーズのラバーにあうと言い切れません。逆に、テナジー05はどのようなスイングでも、そのスイングの特徴を活かすことのできてしまう順応性を感じる部分もあります。katsuo000のカーテン試打の印象として、粘着ラバーにあう面を開いて弾きながら回転をかける打法においてもテナジー05は一定の回転量とスピードを感じることができました。これはスプリングスポンジによるところが大きいように感じます。打球感が似ていると言われる他社メーカーのラバーと比較しても、このテナジー05のどのような打法でも回転がかかってスピードも出せる特徴は驚異的だと感じますね。一部の中国トップ選手が使用していたのも納得です。
また選手のプレイを引き出すラバーは、ディグニクスよりもテナジーだったということもあり得るようです。1つ参考になると思われる事実を紹介させていただきます。バタフライの契約選手で、2020年1月の全日本選手権3位に入った吉田雅己選手です。彼の用具遍歴は次のようになります。
フォア: テナジー05 バック: テナジー80 ↓ フォア: Dignics 05(ディグニクス05) バック: Dignics 80(ディグニクス80) ↓ 2020年1月全日本選手権大会のラバー フォア: テナジー05 バック: テナジー80
上記からわかるようにディグニクスを使っていて、そこからまたテナジーに戻っているわけですね。彼は2020年1月の全日本選手権において町飛鳥選手に勝利しています。町選手は現代的なラバーを選択されていて、フォアにTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)、バックにディグニクス05を選んで出場されていたようです。選手の技術や戦術など卓球の勝敗を分ける要因は様々にありますが、吉田選手が勝利できた理由としてテナジー05とテナジー80の存在は0ではないと想像します。このように、性能だけで選べばディグニクスシリーズの方が良いように感じますが、実際の試合では、性能だけが勝敗を決めるわけではないことがわかります。このような理由から、ディグニクスを選ぶ選手、テナジーを選ぶ選手、とわかれるのだと想像します。
Tenergy 05の貼り合わせと重量
それではいつものようにZhang Jike ZLC(張継科ZLC)に貼ってみました。
貼り終えた写真は後日掲載させてください。(申し訳ありません。)
Tenergy 05(テナジー05) High Tension(ハイテンション)裏ラバー ・スポンジ厚:中(1.7 mm)、厚(1.9 mm)、特厚(2.1 mm) ・スピン:11.5 ・スピード:13 ・Sponge硬度:36 ・オープン価格(8,900円 + 税) ・72 g(切断前) → 約47 g(張継科ZLCに貼って)
テナジー05はバタフライのラバーの中では重い方だとは思いますが、それでも40 g後半におさまる軽量なラバーになりますね。
Tenergy 05の3つの特徴
1. 勝手にドライブ回転がかかる!オートマ性能!
モンスターラバー、テナジーのテナジーらしい点として、勝手にドライブ回転がかかるオートマ性能があると言われています。実際、自分のラケットすら持っていなくてフォア打ちもできない方にテナジーを貼ったラケットをお貸しして打っていただきました。ドライブのかけ方も感覚もわかっていない方が、ただボールの後ろを押しているだけなのに、ボールが異様に伸びてきたことを覚えています。「これがオートマ性能か!?」と感じました。プラボールも硬くなり回転がかかりにくいので、この恩恵はあまり感じなくなりましたが、「オートマ性能」という言葉は、回転をかけやすいラバーであることが分かる言葉だと思います。
2. 回転性能が高い!
粘着ラバーでドライブしたかのように、ループドライブで相手のブロックのオーバーミスを誘うことができます!テナジー05のループドライブはブロックしづらいので試合前のラケット交換時にしっかり確認が必要だと思います。結構嫌なボールが飛んできますね。グリップ力の高さで、低くて浅い質の高いループドライブが打ちやすく、打たれたループドライブに対するカウンターも取りづらくて苦労します。自分がテナジー05を使っていたら、積極的にループドライブを多用して相手のミスを誘ったり、ループドライブの後もスピードドライブなどを連打して、その後のラリーを有利に展開したいと考えますね。
もちろんTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)と比較すると、少し飛んでいってしまう感じがあるので少しループドライブの質が下がると感じますが、テナジー05でも十分な回転量が得られます。
3. 軽くて扱いやすくて高性能!
やはり特筆すべきは、この回転性能で50 gを切る軽量さだと思います。回転量と重いボールの出せるラバーは他にも多数あると思いますが扱いやすさ、50 gを切る軽さ、などトータルバランスの優れたラバー、テナジー05はやはり、無二のラバーであり世界標準のラバーだと言えるでしょう。軽いラバーはどうしても回転量不足を感じたり、ボールが軽くなりがちな印象ですが、そう言ったボールの軽さをテナジー05では感じることは稀だと思います。この軽いのに回転がかかるテナジー05の性能は、日本のバタフライ工場でなければなかなか製造できないようですね。
各技術レビュー
フォアハンド
軽打
軽打からボールがイキイキしている感じがありますね。特に貼りたての時はイキイキしたボールが出やすい印象です。軽打でも若干のボールの弧線が出ていると感じやすいと思います。
ロングボールやラリーでのドライブ
ドライブは非常に打ちやすいですね。強く打つほどボールが上に上がりやすいので、ラケットを寝かして強烈なスピードドライブが打ちたくなります。ラケット面を寝かしてラバー面が下を向いているくらいでちょうどいいドライブが打てますね。テナジー05と比較するとテナジー80の方が、グリップ力が弱く球離れが早く、ボールが上に上がらないので、同じスイングだと80ではネットミスしやすい印象です。05を使うのであれば、ラケット面を開いて、ラバーは下を向いてスピードドライブを打った方がいいと思いますね。
面を開いたドライブ
既に少し触れていますが、面を開いたドライブも非常に打ちやすかったです。これはテナジー05の隠れた特徴だと思います。一部のテナジー05に打球感が似ていると言われるドイツ製のラバーでは、面を開いたドライブだと落ちると感じましたね。グリップせずにどうしても弾いてしまう感じがしました。その分、バックハンドでは使いやすいと思いますが、フォアにはやはりテナジー05がいいですね!
対下回転に対するループドライブ
非常に強烈なループドライブが打ちやすいです。05の特徴でもある高いスピン性能が発揮できる技術だと思います!非常にグリップ力に富むラバーですので、スイングスピードが遅くても打球点を落としてしっかりスポンジに食い込ませながら上へスイングすることで、低くて回転量の多い、質の高いループドライブが打てると思います!テナジー05はグリップ力が高く、球持ちを感じるラバーですので、あまり巻き込んでしまうと逆に横回転を利用してカウンタードライブを狙いやすくなるので、フラット気味に縦回転をしっかりかけにいけるのもテナジー05の嬉しいところだと思います。
対下回転に対するスピードドライブ
スピードドライブは、面を開いた方が打ちやすかったです。ぶつけながら回転をかけるようなイメージで打つと安定しますね。この打ち方で強烈で強い回転をかけられるのがテナジー05の特徴とも言えるかもしれませんね。
カーブ/シュートドライブ
カーブドライブでは巻き込むように打つと思いますがそうするとボールは少し走りにくいですね。シュートドライブの方が、スピードものせやすい印象でした。
ブロック
個人的にはブロックは少しやりにくかったですね。ラバーが柔らかいので、スマッシュなどのボールは取りやすいですが、ループドライブなどの回転の乗ったボールは回転の影響を受けやすくてオーバーミスしやすかったです。回転性能の高いラバーでは、よくあることだと思います。従ってアクティブブロックのように自分で積極的に回転をかけるブロックにすることで安定すると思います。サイドスピンブロックやドライブ回転をかけるアクティブブロックを積極的に行った方が安定すると思います。
カウンタードライブ
ラバー全体としては柔らかいので、前陣でのカウンタードライブは個人的には難しいと感じました。少しステップバックして頂点前後にしっかり回転を上書きするようにカウンタードライブすると安定したカウンタードライブを打てると思います。
ストップ
結構柔らかいので、意外と弾みます。また回転の影響も受けやすいので気を使う印象でした。
ツッツキ
意外と食い込むので切るとオーバーミスが増える印象でした。
フォアフリック
柔らかいので、乗せ打ち系のフリックがやりやすかったです。
バックハンド系
軽打
球持ちを感じます。ただ弾みもあるので、自分のスイングだとオーバーミスが多くなりやすかったですね。
ロングボールやラリーでのドライブ
安定感のあるドライブは打ちやすいですね。スピードドライブ系を打つには安定したインパクトが必要だと感じました。
対下回転に対するループドライブ
非常に打ちやすいですね。球持ちがあるので、多少スイングが遅くなっても入れることは容易だと思います。威力不足になりがちなので、そこは注意した方が良いと感じました。
対下回転に対するスピードドライブ
フラット気味にぶつけるように打って、驚くようなスピードドライブが入ってしまうこともありました。どちらにしても安定したドライブを打つにはある程度のしっかりしたインパクトが必要だと感じました。自分にはバックハンドで使いこなるほどの技量はなかったと思ってます。
カーブ/シュートドライブ
バックハンドカーブドライブは結構嫌がる人がいて得点力になりました。それでも1試合で数回入る程度でしたが。
ブロック
フォアのブロックと同様、回転の影響を受けやすいと感じました。ドライブ系のボールには必ずボールの上をとらえるようにするとボールの威力を抑えてブロックしやすかったです。本当はアクティブブロックができると得点率が上がると思うのですが、自分にはその技量がなかったです。
カウンタードライブ
自分には技量が足りず、カウンタードライブをしようとするとオーバーミスが多かったです。もう少し硬いラバーの方がやりやすいと感じました。
ストップ
バックの方が感覚はあるので、やりやすかったです。自分にはテナジー系のラバーで切るストップやツッツキは安定感よくできなかったです。この辺りも技量が足りませんね。
ツッツキ
一定以上の低さでツッツクことは容易でした。張本選手のようにしっかり切るのは自分には難しかったです。技量だと思いますね。Zhang Jike ZLC(張継科ZLC)は板厚が5.5 mmと薄いので台上は思いの外、弾まないんですよね。打球感は硬いので、球離れは速いのですが、シートで捉えるようなイメージで最小限の食い込みでツッツクと切れるかもしれません。
チキータ
球持ちがあるので、思ったよりオーバーミスしやすいんですよね。自分が思うよりも下を狙った方が良いと思います。また調子こいて、スピードを出そうとすると今度はネットミスするので、気をつけてください。しっかり回転をかけるか、スピード系のチキータをするときは、かなりのスイングスピードで回転をがっつりかけないと落ちるので気をつけてください。
他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)
回転量
Dignics 05 > Tenergy 05 Hard ≧ Tenergy 05 > Omega VII Tour
スピード
Dignics 05 > Omega VII Tour > Tenergy 05
食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
Tenergy 05 ≧ Tenergy 05 Hard > Dignics 05
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