Qシリーズ ~ミズノと住友理工の第二の日本製~
日本の総合スポーツメーカー、mizuno(ミズノ)。まだ卓球界にとっては新参者ですが、その存在感は年々増えており、特にシューズ分野は、トップ選手の半分くらいがミズノ製を使用しつつあります。シューズ契約選手をパンフレットで確認すると、東京オリンピック2020の代表の伊藤美誠選手、平野美宇選手、リザーブの早田ひな選手とそうそうたるメンバーです。そして、ユニフォーム!非常にスタイリッシュなユニフォームが多く、平野美宇選手が契約されています。ラケットといえば、木下グループで張本智和選手にも勝利経験のある大島祐哉選手プロデュースのFortius FT ver. D(フォルティウスFT ver. D)、や全日本社会人選手権優勝の平侑里香選手のFortius FT(フォルティウスFT)が有名ですね。フォルティウスFTシリーズは上板にリンバを使い打球感も良く、名作の一つだと思います。
着実に卓球界で存在感を示すミズノさん。そのミズノさんが住友理工さんと共同開発した日本製ラバーがQシリーズになります!Made In Japanといえば、バタフライ製のテナジーが有名ですが、テナジーだけがいいラバー?とQuestion(疑問)を投げかける意味も込めてQ(キュー)シリーズは開発されたそうです。テナジーを使用していたトップ選手が、Qシリーズのラバーを使用するようになってきました。もちろん、多くはないのですが、着実にラバーでもミズノさんの存在は増えつつありますね!
Qシリーズの公表シート形状からわかる特徴
公表シート形状&公表スポンジ硬度
・Q3(キュースリー)
粒の太さ: 1.65 mm、粒間隔: 0.63 mm、粒高さ: 0.99 mm
シート厚さ: 0.78 mm、スポンジ硬度:47、ラバー重量:47 g
・Q4(キューフォー)
粒の太さ: 1.70 mm、粒間隔: 0.58 mm、粒高さ: 0.95 mm
シート厚さ: 0.80 mm、スポンジ硬度:47、ラバー重量:49 g
・Q5(キューファイブ)
粒の太さ: 1.70 mm、粒間隔: 0.65 mm、粒高さ: 0.95 mm
シート厚さ: 0.77 mm、スポンジ硬度:47、ラバー重量:51 g
Accel ARC Sponge(アクセルアークスポンジ)
アクセルアークスポンジとは
スポンジの気泡1つ1つをやや縦長に、やや大きく発砲させたことにより、”食い込みの良さ”と”反発力”の両立を実現。原料配合・接着剤も緻密に見直し、ラバーの性能をシリーズ史上、最大限に引き出すスポンジ。
粒とシートの形状が与える性能: https://katsuo000.com/topsheet_shape/
粒は太いほど、粒間隔が狭いほど、粒の高さが低いほど、グリップ感が強くなり粘着ラバーのような方向へ向かいます。またシートは厚いほど、回転性能をあげます。ただし、回転性能が上がる分、食い込みにくくなり、扱いにくくなり、性能を引き出すことが難しくなりますね。シリーズを俯瞰すると、Q3が最も粒が細く、逆に粒間隔が狭くて粒高さも低くてシート厚さが厚い仕様がQ4になりますね。そしてQ5はバランスをとるためにQ4よりやや粒間隔を広げるとともに、より進化したスポンジ、アクセルアークスポンジを採用することで、シートが薄くても回転性能が得られるようになっているのだと思われます。硬度は全て同じですが、数字が大きくなるほど重いラバーでした。パンフレットなどから、Qシリーズはテナジーと比較され、Q3がTenergy 64(テナジー64)、Q4がTenergy 05(テナジー05)、Q5がTenergy 80(テナジー80)と言われたりもしますね。実際のところについては後述しますが、テナジーシリーズのように理解するのはオススメはしません。
硬度計比較
・Q3(キュースリー)
硬度計評価 shore a (sheet):30.5、 shore a (sponge):30.5
shore c (shhet):42.3、 shore c (sponge):42.3
shore a (sheet) – shore a (sponge) = 0.0
・Q4(キューフォー)
硬度計評価 shore a (sheet):32.3、 shore a (sponge):30.9
shore c (shhet):43.3、 shore c (sponge):43.0
shore a (sheet) – shore a (sponge) = 1.4
・Q5(キューファイブ)
硬度計評価 shore a (sheet):31.8、 shore a (sponge):31.1
shore c (shhet):45.8、 shore c (sponge):44.3
shore a (sheet) – shore a (sponge) = 0.7
・Tenergy 05(テナジー05)
硬度計評価 shore a (sheet):32.2、 shore a (sponge):26.8
shore c (shhet):44.6、 shore c (sponge):43.3
shore a (sheet) – shore a (sponge) = 5.4
1つ目の図は横軸に重量、縦軸にshore cの硬度をプロットしています。Qシリーズはやはり、テナジー05と比べて同等の硬さであることがわかります。おそらくミズノさんと住友理工さんは、テナジーを研究しながら開発したと思われますので、まずは同じくらいの硬度にしようと考えたのではないでしょうか。また硬度単位はNittaku(ニッタク)やVICTAS(ヴィクタス)などが採用しているドイツ基準だと思われますね。Qシリーズ販売前のミズノさんはドイツ製のラバーGFシリーズを販売しており、Qシリーズと他のミズノのラバーの硬さを比較する場合は同じ基準でないとわかりにくいですからね。よってパンフレットに書かれていませんが、Qシリーズの47°は、ニッタクやヴィクタスでもフラグシップラバーに採用されるドイツ基準47.5°とほぼ同じと考えて良いでしょう。余談ですが、近年ドイツ製のラバーが増加傾向であり、スポンジの硬さは同じドイツ規格で比較しやすくなりつつありますね。47°や47.5°は、最もトップ選手や一般選手が使用する硬度で、各メーカーのフラグシップラバーに多い、標準的な硬度だと思います。
公表硬度は同じ47°ですが、Qシリーズのラバー全体の硬さは、シートの形状の影響を受けます。やはり最も最後に販売されたQ5が、硬度計shore cでは最も硬いラバーでした。ディグニクスシリーズやテナジーシリーズでもそれぞれのシリーズはスポンジ硬度は同じですが、64が最も柔らかく、80が中間、最も硬いのが05である、ということが知られています。しかしながらQシリーズでは、同じスポンジ硬度でもQ3が最も柔らかく、Q4が中間で、最後に発売されたQ5が、Qシリーズの中で最も硬い結果となりました。
2つ目はshore aのシート側の硬度とスポンジ側の硬度の差を縦軸にプロットしています。このshore aのシート側とスポンジ側からの硬度の差は、扱いやすさ、ラバー全体へのくい込みやすさを客観比較できる数字である、とkatsuo000は考察しています。あるいは、shore cの値が同じくらいのラバーがあった場合、shore aのシート側とスポンジ側の差を比較し、その差が大きいラバーほど、くい込みの良さやシートの柔らかさを感じる、と考察しています。そのようにshore aの差はラバー全体へのくい込みやすさと考えた時、Qシリーズは、明らかにテナジーシリーズよりボールがくい込みにくい ≒ 扱いにくいシリーズであることを示唆していると考察してます。Qシリーズはディグニクスシリーズで最も硬いディグニクス09Cと同じくらいくい込みにくく、Qシリーズの扱いにくさを示唆しているといえるでしょう。一方で、くい込みにくい分、そのラバーのポテンシャルの高さ、回転量の最大値、ドライブの揃いにくさ、は高くなると思います。このように、単純な比較以上にshore aの硬度差は色々なことを示唆するものと考えています。
Qとテナジーの違い
katsuo000が感じた実際のところはQシリーズはテナジーシリーズの分類や感覚は全く当てはまりません!テナジーと比べると全て相手の打球に負けないハードでマッドな打球感のラバーでした。ハードでマッドな打球感の中で、スピードと直線的な弾道に特徴的なラバーがQ3、グリップ力が高いのに弧線は低くスピード感のあるQ4、とどれも個性的でとんがったラバーばかりです。そしてQ3とQ4と比べて数段性能の高い存在がQ5になります。Q5はQ4以上の回転性能と独特の癖がありながら、Q3に匹敵するスピードも出て、総合バランスの高いラバーでした。Qシリーズは、どちらかといえば、スピン系テンションよりの粘着テンションラバーのようなラバーですね。また住友理工は卓球界には新参のメーカーであるためか、Qシリーズはどれもかなり個体差も多い印象です。重量を測って自分に合うものを購入すべきだと思います。
Qシリーズ メリット ・食い込みにくい分、上回転ラリーに強く、カウンタードライブもやりやすい。 ・ツッツキやストップが浮きにくく止まりやすい。 ・Qシリーズ独特の回転量と癖球が出る。 ・テナジーより安い。 デメリット ・テナジーシリーズよりも扱いが難しい部分がある。 ・匂いが臭い。個体差も多い。 ・ブランドとしての信頼が低い。 ・木材系ラケットと相性が良い。 ・逆にインナーはともかくアウターカーボンとは少し相性が悪い。
上述がkatsuo000の考えるQシリーズのメリットとデメリットになります。なお、日本のトップ選手、大島祐哉選手や軽部隆介選手は両面Q5に変更しました。特に大島選手は両面Q5へ変更直後、2021年1月の全日本選手権で9位のランカーにくい込んでおり、Q5のポテンシャルの高さを示したといえるでしょう。
個人的には、コスパの良いかなりポテンシャルの高いラバーだと思います。また木材合板ラケットをメインにしているミズノさんが開発したこともあって、明らかにQシリーズは木材合板系のラケットと相性が良いラバーだと感じました。他メーカーのラケットでも木材合板かインナー仕様のラケットと組み合わせることをオススメします。
また海外のサイトでも、徐々に話題になっているようですね。ラバーについては、バタフライとDHSの2強となりつつありますが、新たなメーカーとして andro(アンドロ)、 VICTAS(ヴィクタス)、XIOM(エクシオン)、そして、ミズノが続いていってほしいと思いますね。
・Q5(キューファイブ)
https://katsuo000.com/review_q_5/
・Q4(キューフォー)
https://katsuo000.com/review_q_4/
・Q3(キュースリー)
https://katsuo000.com/review_q_3/