レビューTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)

説明

 今や全てのラバーの世界標準である、Tenegy 05(テナジー05)。ワールドスタンダードに君臨するテナジー05は、2008年に販売され10年以上経過しました。ボールはセルロイドからプラボールへと変わり、トップ選手はボールの威力や性能を求めて、扱える範囲で硬いラバーを要求するようになったそうです。テナジー05の公表硬度はButterfly(バタフライ)規格で36°。バタフライの高い製造技術と品質管理でもラバーの個体差による、重量違い、硬度違いは生じているそうです。トップ選手は製造されたラバーの中で、自分にあった重量と硬度のラバーを選んでいると伺います。どうやら近年トップ選手から硬いテナジー05を使用したいという要望が多かったそうですね。トップ選手たちが使いたいという要望から商品化へと話が進んだのだと思います。そこでテナジー05販売から10年後の2018年、文字通りテナジー05よりもスポンジ硬度の硬いTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)が販売されるに至りました。他のテナジーシリーズ(Tenegy 25(テナジー25)、Tenergy 64(テナジー64)、Tenergy 80(テナジー80))にはなかった36°よりも7°硬い43°のスポンジを採用しています。トップ選手の使用者が増えているラバーとなります。

公表性能値

 バタフライさんは他社と異なり、スポンジ硬度を変更してもスピード性能とスピン性能を変更して公表しません。やりやすい技術と、ラバーが持つポテンシャルは異なると考えてのことではないかと想像します。ラバーのポテンシャルは、スポンジ硬度ではなく公表されている性能値を見れば良いと思います。つまり、潜在的なスピード性能も回転性能も、テナジー05ハードと柔らかいスポンジを採用しているTenergy 05 FX(テナジー05FX)で、かわらないということでしょう。メーカーによっては、スポンジ硬度が柔らかくなると公表値のスピード性能を高くしたりコントロールしやすいなど記載されていることもありますが、バタフライさんは異なるスタンスを貫かれている印象です。

↓横軸はスポンジ硬度+スピン性能をとっています。

やりやすい技術

 バタフライさんのパンフレットには、「あなたの『テナジー』を見つけよう」と題して各『テナジー』の様々な技術における「やりやすさ」をチャート表示してくれています。ホームページ上でも『テナジー』特設ページにて確認できると思います。パンフレットを見て、各技術のやりやすさを、モノサシで測り、その数値を下記図にしてみました。項目は
 ・ループドライブのかけやすさ
 ・スピードドライブの打ちやすさ
 ・カウンタードライブのやるやすさ
 ・台上プレーのやりやすさ
 ・ブロックのしやすさ
 ・スマッシュのしやすさ

の6つになります。個人的に重要な項目はループドライブ、スピードドライブ、台上プレー、ブロックの4つになりますね。カウンタードライブはなかなか打てませんし、スマッシュも粘着ラバーでなければ慣れで打てるでしょう。

 このチャートを見ると、やはりドライブ系技術はテナジー05ハードが良いだろうと思います。ブロックはやはり難しいのかもしれませんね。

 スマッシュやブロックはTenergy 64(テナジー64)がやりやすいこともよくわかりますね。バランスが取れているラバーが結局テナジー05 FXかTenergy 80(テナジー80)になると思います。実際にテナジー05ハードを使ってみて、このチャートが当てはまるのか、また打球感、使いこなせるのか、難しい技術はないのか、などなどレビューしていきたいと思います。

Tenergy 05 Hardのラバー貼りと重量

 Butterfly(バタフライ)さんのZhang JIke ZLC(張継科ZLC)に貼り合わせました。使用した接着剤は同じくバタフライさんのFree Chack II(フリーチャック2)になります。

 Tenergy 05 Hard(テナジー05ハード)
 High Tension
 Spring Sponge
・Speed:13
・Spin:11.5
・Sponge硬度:43°
・オープン価格(8,900円 + 税)
・76 g(切断前) → 52g(張継科ZLCに貼って、だいたい50~52g)

Tenergy 05 Hardの3つの特徴

 05ハードを一言でまとめると、「粘着ラバー(Hurricane(キョウヒョウ))に近いスピン系テンションラバー」です。そして、粘着ラバーで不満を感じやすくなるスピードを補えるラバーが05ハードになります。それでは3つの特徴です。

1. 粘着ラバー顔負けの質の高いループドライブ!

 なんと言っても05ハードはループドライブですね!少し長くなりますが、テナジー05ハードとその他のラバーとを比較していきましょう。

vs Tenergy 05 & Dignics 05 & Dignics 09C

 まず同じバタフライさんのラバー、Tenergy 05(テナジー05)、Dignics 05(ディグニクス05)、Dignics 09C(ディグニクス09C)と比較します。テナジー05ハードとテナジー05を比較すると、テナジー05でも十分強烈な回転がかかっていると思います。しかしながら、テナジー05と比較して05ハードの方が、同等以上の回転量と、ボールの重さ、そしてプレッシャーのあるループドライブが打てると思います。ボールの重さやプレッシャーと、表現が抽象的になってしまいますね。テナジー05では回転量によってオーバーミスしてしまうくらいですが、05ハードだと、回転量によるオーバーミス以外にも、1球1球のボールの回転量の違いによるネットミス、テナジー05よりも強いインパクトで打ったとわかる打球音によるプレッシャーで、シンプルな打球ミス(ラケットかどに当てたり、指や腕に当ててしまったり)、またテナジー05よりも明らかにボールにキレがあると感じました。続いて、ディグニクスと比較すると、ディグニクスシリーズの方が回転量は多いと思いますが、05ハードの方がスポンジが硬いので、低い弧線弾道を出しやすいと思います。よってディグニクス05やディグニクス09Cと比較して、05ハードの方が、回転量+弾道の低さと浅さのトータルのループドライブの質は高いと感じました。またスポンジ硬度が硬いために、テナジー05、ディグニクス05、ディグニクス09Cと比べて、05ハードの方が1球1球のループドライブの回転量に軽微な変化が出たり、癖球っぽくなったりしやすい点も特筆すべきでしょう。このような特徴があるためにトップ選手でも使用者が多いのだと想像します。

vs Hurricane NEO III

 代表的な粘着ラバーである、Double Happiness Shanghai(DHS)のHurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)と比較すると、やはり粘着ラバーらしい沈む癖球はキョウヒョウNEO3に部があります。しかし、05ハードはかなり粘着ラバーに近い感覚でループドライブできると感じました。またキョウヒョウNEO3は面を開いてぶつけながらドライブすることでスピードドライブも回転がかかり安定します。キョウヒョウNEO3と同じ打ち方をしても、しっかり回転がかかる感じが05ハードにもありました(ただし弧線は直線的でしたが)。また特徴の3つ目で記載しますが中陣からのスピードドライブは明らかに05ハードの方に部がありました。結論として粘着ラバーにかなり近い感覚でループドライブや対下回転ドライブができるのに粘着ラバーで不利となる中陣からのドライブも威力が出せるラバーが05ハードだと言えると思います。

vs Fastarc G-1

 検証中になります。少々お待ちください。

vs V>15 Extra

 VICTAS(ヴィクタス)さんのV>15 Extraと比較すると、V>15 Extraはそもそもシートだけでドライブするよりもループドライブにおいても少しぶつけ気味にスポンジまで食い込ませるようにして回転をかけないと回転がかかりにくいラバーになります。従ってV>15 Extraを使うと、どうしてもループドライブのコントロールが少し難しくなります。浅く低くコントロールしたループドライブをするよりは、打球点を落としてもぶつけながら擦り上げることでスピードと癖球らしさを出しやすいのがV>15 Extraになると思います。従ってやりやすいドライブの種類が異なると言えるでしょう。ループドライブのコントロール、回転量は抜群に05ハードの方が高いと思います。

vs Omega VII Tour & Omega VII Hyper

 XIOM(エクシオン)のハイエンドラバー、Omega VII Tour(オメガ7ツアー)とOmega VII Hyper(オメガ7ハイパー)と比較します。オメガ7シリーズがドイツ製ラバーであり、重量が重い割には食い込みやすく扱いやすいラバーになります。05ハードと比較すると、全体的な扱いやすさとラリー時のスピードはオメガ7ツアーやオメガ7ハイパーの方があると思います。一方で、ラバーのポテンシャルを引き出したループドライブの回転量のMax値は05ハードの方が高いと思います。

vs DNA Pro H

 検証中になります。少々お待ちください。

vs Rasanter R53

 Andro(アンドロ)の赤のRasanter R53(ラザンターR53)と比較します。このR53はかなり高性能なラバーで回転量だけで比較すると、05ハードと同等以上の回転量を引き出せるのがR53になります。ただし、ループドライブで求められる低くて浅い弾道のコントロールにしやすさは05ハードの方がやりやすいと感じました。R53は粒形状が少し狭くて詰まった形状のようなので、球離れがやや早く感じやすいラバーとなっています。打点を落としても弧線を作りやすくR53らしい癖球も出しやすい非常に高性能なラバーでしたが、遅くて低くて浅い弾道のループドライブは少し難しかったです。

vs Rhyzer Pro

 Joola(ヨーラ)の少し古いラバー、Rhyzer Pro(ライザープロ)と比較します。05ハードと遜色ない、かなり近い感覚でループドライブができる感じがライザープロにありました。05ハードの価格が高いと感じるのであれば、ライザープロはかなりありだと思います。ただしライザープロはシートだけに食い込ませた時は浅くコントロールしやすいですが、スポンジまで食い込ませた途端に想像以上に弾む感覚がありました。この辺りは05ハードとは異なると感じましたね。また回転量の高さ、出しやすさは05ハードの方が上だと感じました。

2. ビタっと止めやすい台上ツッツキ&ストップ

 ツッツキがとてもやりやすいですね!打点を遅くしたり頂点よりも後でツッツキしても簡単にストップできるくらいの台上のビタ止まり感がありました。このラバーのおかげで相手のドライブを防いで先手が取れることも多々ありました。スピン系テンションラバーで、粘着ラバーのような低く短い台上を求めるのであれば、05ハードだと思います。

3. 粘着ラバーでは難しい中陣スピードドライブも顕在

 05ハードをメインで使おうと感じさせたのが、中陣からのドライブです!当時はフォアにキョウヒョウNEO3を使っていましたが、粘着ラバーで中陣ドライブはどうしてもスピードを出すことが難しく、振り回されることが多くて苦しいと感じていました。05ハードなら後ろからでも巻き返せると分かってありだと感じました。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 フォアで使う分には特に違和感はなかったです。

ロングボールやラリーでのドライブ
 キレのあるドライブが打ちやすいです。スポンジが硬いので、中陣からのドライブにはパワーを要しますが、そのパワーをしっかり伝えてくれる感じが05ハードにはありますね。パワーロスも少ないと思います。

面を開いたドライブ
 意外だったのですが、面を開いてもしっかりドライブがかかります。粘着ラバーやキョウヒョウ特有のものだと思っていたのですが、05ハードでもかなりいい感じに回転がかかっていて好感触でした。このスピン性能があるため、中国のトップ選手もバック面にバタフライさんのラバーを使うのだと思います。

対下回転に対するループドライブ
 すでに詳細を特徴の部分で記載しましたが、かなり好感触です。05ハードを使う1つのメリットだと思います。ループドライブで得点を狙うことも可能だと思う、高い質のループドライブが打てると思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 容易ではないと感じました。やはりスポンジが硬いので、食い込みにくく、ドライブ回転をかけにくいといえばかけにくかったです。チャート表において、スピードドライブはうちやすいとなっていましたが、それなりの技術力またはインパクトが必要と言えるでしょう。面を開いてインパクト時に弧線を作るように打球することで、スピードドライブがうちやすくなると思います。

カーブ/シュートドライブ
 他のハイエンドでハードなラバーと比較するとハードなスプリングスポンジと言えど、かなり食い込みが良いので、弾道の曲がるカーブ/シュートドライブが打ちやすかったです。自分から回転をかけに行くよりも相手のボールを利用することで、スポンジへ強く食い込ませながら回転をかけると、想像以上に強い回転がかかって好感触でした。

ブロック
 フラットに当てるよりもアクティブブロック気味に打球した方が安定してよかったです。スピードを出すのは食い込み方にもよるので、難しいですがやはり弧線の安定感はさすがテナジーというものがありますね。チャート表ではブロックは難しいという評価になっていたと思いますが、しっかりボールの上をとらえるように打球してあげれば安定しますしスポンジが硬いので回転の影響を受けにくくやりやすかったですね。

カウンタードライブ
 どちらかというと打球点を落としてしっかり自分の回転をかけたカウンタードライブがやりやすかったです。食い込みが良いので打球点の早いカウンタードライブは食い込みをコントロールしづらく難しかったです。どちらかと言えば、ディグニクスの方がカウンターはしやすかったですね。

ストップ
 特徴でも挙げているくらいやりやすいです。05ハードを使うメリットにもなると言えます。非常に低くて浅いストップが可能です。

ツッツキ
 低く浅くツッツキしやすいです。ハーフロングで台からギリギリ出るようなツッツキもしやすくてよかったですね。ただし切るのは結構難しくて、やはりスポンジへ食い込ませた方が回転をかけやすいのですが、そうするとコントロールしにくかったです。

フォアフリック
 自分は乗せるフリックをするのですが、球離れが速いので05ハードは結構難しかったです。

サービス
 非常に出しやすかったです。早くて下回転や順横下回転系のサーブが好印象でした。しっかり持ち上げないといけない球足の早いロングサーブを、相手のバックか、ミドルに出して持ち上げたところをカウンタードライブ、なんてパターンがしやすいと思います。

バックハンド系

軽打
 まずまず硬いので、球離れの早さでポトっと落ちやすい感じがあります。この感覚に慣れる必要があると言えますね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 打球点を落とすと非常に回転がかかっていい感じですが、自分は腕がついていかず、弾くようなドライブを主体で使っていました。それでも入ってしまうのが、テナジーのいいところだと思います。

対下回転に対するループドライブ
 バックハンドでのループドライブにはかなりパワーを要しますね。慣れるといいドライブが打てると思いますが、そもそも感覚がないと厳しいかもしれません。

対下回転に対するスピードドライブ
 正直まともに打てる感じはあまりなかったです。バックハンドの技量不足ですね。

カーブ/シュートドライブ
 打球点を落とした時には想像以上に曲がるドライブが打ちやすかったです。

ブロック
 アクティブブロックするとボールが伸びて良かったです。安定感もあって非常に好感触でした。ここら辺は人それぞれで、チャート表では想像できない部分だと思います。ただしフラットで打つのは少し難しいかもしれません。

カウンタードライブ

ストップ
 低く浅くおさまって良好です。ツッツキのつもりがストップになることもありました。

ツッツキ
 上述の通りです。非常に良好でした。

チキータ
 思ったより難しかったです。スポンジに食い込ませると飛距離が出やすいので結構オーバーミスが多かったですね。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 ディグニクス09C ≧ ディグニクス05 > テナジー05ハード ≧ テナジー05

スピード
 ディグニクス05 > ディグニクス09C ≧ テナジー05ハード ≧ テナジー05

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 ディグニクス09C ≧ テナジー05ハード > テナジー05 > ディグニクス05

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