レビュー

レビュー Omega VII Hyper(オメガ7ハイパー)

説明

 XIOM(エクシオン)のハイエンドラバーシリーズ、Omega VII(オメガ7)シリーズは初めにOmega VII Pro(オメガ7プロ)、Omega VII Euro(オメガ7ヨーロ)、Omega VII Asia(オメガ7アジア)、Omega VII Tour(オメガ7ツアー)の4種類が販売されました。やや重量は重いのですが、直線的でスピーディーなボールが出やすいのに回転によって安定すると感じたのがオメガ7シリーズの印象です。また初中級者をターゲットとしたVega(ヴェガ)シリーズのネイミングと同じようにネイミングしているので特徴も想像しやすくなっています。ヴェガシリーズでも共通の、やや柔らかいスポンジを採用しているヨーロ、トップ層が好みのスポンジ硬度を採用しているプロ、やや硬めのスポンジを採用しているアジア、そして世界最高峰のワールドツアーでも見劣りしない性能のハードスポンジを採用しているツアー、と明確に伝えたいラバーの立ち位置をオメガ7でも踏襲しています。
 そんなエクシオンのラバーで、初めてHyper(ハイパー)という名前を冠したラバーがこのOmega VII Hyper(オメガ7ハイパー)になります。このオメガ7ハイパーは中国の粘着ラバーのような、硬さと球威を有しながら、圧倒的に扱いやすいラバーと謳われています。世界を席巻する中国ラバーを参考に開発されたラバー。要は粘着ラバーのようなスピン系テンションラバーということでしょう。実際、開けてみるとシートは普通のスピン系テンションのシートですが、スポンジが抜群に硬く、気泡もかなり小さい、まさに粘着ラバーに採用していそうなスポンジのラバーでした。

Omega VII HyperとTourの比較とラバー貼りおよび重量

Omega VII Hyper(オメガ7ハイパー)

Omega VII Tour(オメガ7ツアー)

 画像で比較するとわかりやすいと思います。オメガ7ハイパーの方が気泡が細かくてHurricane(キョウヒョウ)ほどではないものの、かなり密でつまったスポンジだということがわかると思います。
 また写真は準備できてなくて申し訳ないのですが、オメガ7ツアーと比べてオメガ7ハイパーは粒が太くかつ短かったです。このシートの粒形状も粘着ラバーで見られるような形状だと思います。

 オメガ7ハイパー、MAXのラバー重量はZhang Jike ZLC(張継科ZLC)に貼って、54 gありました!ちなみにオメガ7ツアー、MAXのラバー重量は52 gでした。かなり重いですね!

Omega VII Hyper(オメガ7ハイパー)
 DYNAMIC FRICTION
 CYCLOID
 CARBO SPONGE
・Speed:13.0
・Spin:14.0
・Sponge硬度:55°
・7,000円 + 税
・79 g(切断前) → 54 g(張継科ZLCに貼って)

Omega VII Hyperの3つの特徴

 このレビューは主にバック側での使用でのレビューになります。

1. 台上が抜群にやりやすい!特にチキータのおさまりが良い!

 もちろんストップは短くおさめやすいのですが、それ以上にチキータがやりやすかったです!思い切り回転をかけようと打っても全くオーバーミスしませんでした。ガツンと回転をかけることができるので、それがまたチキータの安定感をプラスする感じがあって非常に好感触でした。チキータがオーバーミスしてしまうのであれば使ってみるのはアリだと思います。オメガ7ハイパーではなく、粘着ラバーでも同じように打てる感じがありますが、粘着ラバーだとインパクトを結構強くしないと今度は落ちたりチャンスボールを送るだけになったりすることも多かったです。スピン系テンションで一定のスピードを維持しつつ安定とおさまりを得られるラバーして、オメガ7ハイパーは抜群にやりやすかったです。

2. 硬いのに食い込みが良くて扱いやすい!

 これはオメガ7シリーズ全体に言えることかもしれません。相手がミスするような物凄い回転量のボールを打つにはそれなりのインパクトとスイングスピードと体の使い方が必要ですが、5割〜6割くらいの力で打っても回転がかかりやすく、どんな技術も非常に安定して相手のコートに入れることができます!どんな技術も非常にやりやすいラバーになっています。バックでインパクトが弱くても中陣バックドライブは打ちやすかったですし、安定感がありました。またスポンジも硬いのでミートもしやすかったです。悪い言い方をすると中途半端なラバーと言えるのかもしれませんが、個人的には、ドライブもフリックもやりたい、ブロックもやりたいしミートもやりたいし、カウンターもやりたい、あれもこれもやりたい!という人には非常にバランスの良いラバーだと思います。

3. オメガ7ツアーと遜色のないスピードを維持しながら、さらなる回転と安定感!

 オメガ7ツアーと比較しても粘着ラバーではないので、スピードは遜色なく速かったです。それなのに、安定感と回転量はオメガ7ハイパーの方がありました。確かにスピードドライブは食い込ませにくいのでオメガ7ツアーよりも難しい感じはありましたが、ラリーでのドライブのスピードは満足できるものでした。それでいて安定感があったので安心感を感じやすいラバーでした。オメガ7ツアーはどちらかといえば、Tenergy 80(テナジー80)のように少し球離れが早い感じがあるのですが、オメガ7ハイパーはTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)寄りのラバーでした。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 結構弾まないです。粘着っぽい打球感ですね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 ボールは伸びませんが回転のかかったボールは打ちやすいですね。回転量も高いかというと、粘着ラバーほどあるわけではないので、中途半端といえば中途半端かもしれません。粘着らしさとスピードが欲しいならありといえると思います。

面を開いたドライブ

対下回転に対するループドライブ
 非常にやりやすいですね。スポンジが硬く、ネット際に低くて浅いループドライブを打ちやすかったです。回転量も低くはないと思いますが、少しパワーが必要な感じはありました。

対下回転に対するスピードドライブ

カーブ/シュートドライブ

ブロック

カウンタードライブ
 やりやすかったです。

ストップ

ツッツキ

フォアフリック

バックハンド系

軽打

ロングボールやラリーでのドライブ

対下回転に対するループドライブ 

対下回転に対するスピードドライブ

カーブ/シュートドライブ

ブロック

カウンタードライブ
 かなりやしやすくて、非常に好印象でした。

ストップ
 ボールもピタっと止まってやりやすかったです。

ツッツキ
 ツッツキもやりやすかったですね。ボールはグリップしますが、しっかり切るには技術が必要と感じました。

チキータ
 やりやすかったですね。思い切り回転をかけにいってしっかりおさまる感じがありました。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 Tenegy 05(テナジー05) > オメガ7ハイパー > オメガ7ツアー

スピード
 オメガ7ツアー ≧ オメガ7ハイパー > テナジー05 > テナジー05ハード

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レビューHurricane NEO III Blue Sponge(省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)

 キョウヒョウNEO3 (紅双喜(DHS))省チーム用ブルースポンジ黒をレビューします。俗に言う、省狂NEOブルスポというやつですね。自分のメインのフォアラバーとして愛用していました。
 なお、本レビューはあくまで有機溶剤を使わず、一般的な水系溶剤で貼った場合の試打レビューになります。(katsuo000は、高校生までは有機溶剤全盛期に卓球をしていたので、有機溶剤を使った経験はあります。しかしながら現在は全く使っておりませんし、試打目的で使うつもりもありません。)

説明

 中国の総合スポーツメーカーDouble Happiness Shanghai(DHS、紅双喜)のラバーで、中国代表の選手はほぼ皆DHS製のラバーを使用しているようです。中国卓球を語る上で今や避けては通れない粘着ラバーの代表的な存在がHurricane(キョウヒョウ)になります。DHSが販売する粘着ラバーは2種類あって、もう1種類はSky Line(天極)になります。天極は主に中国選手ではペンホルダードライブ主戦型の選手が使用しているようです。現在の現役の選手ではXu Xin(許昕)選手が天極を使用していると言われます。一方、主に中国選手でシェイクハンドドライブ主戦型の選手がキョウヒョウを使用するようです。キョウヒョウと冠されるラバーはいくつか存在し、かなり紛らわしいので、まずそこから説明させていただきます。

Nittaku製Hurricane(キョウヒョウ)

 中国トップ選手はDHS製を使用していますが、日本ではNittaku(ニッタク)も同名のラバーを販売しています。同じ名前ですが、中国トップ選手が使うものとは、十中八九別物だと思います。

 まずNittaku製キョウヒョウは、2020年現在以下のラインナップになります。
・Nittaku Hurricane II(ニッタク キョウヒョウ2)
・Nittaku Hurricane III(ニッタク キョウヒョウ3)
・Hurricane Pro II(キョウヒョウプロ2)
・Hurricane Pro III(キョウヒョウプロ3)
・Hurricane NEO III(キョウヒョネオ3)
・Hurricane Pro III Turbo Orange(キョウヒョウプロ3ターボオレンジ)
・Hurricane Pro II Turbo Blue(キョウヒョウプロ3ターボブルー)

全部で7種類になります。
 過去には、Hurricane NEO II(キョウヒョウネオ2)などもありましたが、2020年現在廃盤となったようです。また、DHS製ラバーの一部でITTF登録番号の記載のないものはルール上使用できなくなったようです。Nittakuのホームページには案内が掲載されていました。

Nittakuの案内になります。

https://www.nittaku.com/wp-content/uploads/2019/10/0449.pdf

Nittakuのホームページより引用させていただきました。

 Nittaku製のキョウヒョウは、スポンジ厚さとシートの色(赤・黒)を選ぶことになります。Nittaku製のキョウヒョウは、中国製のシートに日本製のスポンジをあわせているようなので、食い込みやすく比較的扱いやすい傾向があります。自分がNittaku製キョウヒョウの中からラバーを選ぶとしたら硬くて粘着力も強いプロを冠するシリーズを選ぶと思います。プロ2やプロ3は全然弾まなくて、硬くて重い傾向にあるので、まさにド粘着というラバーになります。上手に使いこなせばド粘着の癖球も出やすいと思います

↓Hurricane Pro III Turbo(キョウヒョウ プロ3ターボ)シリーズ(Hurricane Pro III Turbo Blue (キョウヒョウプロ3ターボブルー)とHurricane Pro III Turbo Orange(キョウヒョウプロ3ターボオレンジ))は同じスピードとスピン性能になります。

 今後、キョウヒョウ プロ3ターボシリーズもレビューしたいと思ってます。やはり日本のラバーの中では、近年注目の粘着ラバーですからね。それではDHSのキョウヒョウNEO3に戻ります。

DHS製Hurricane(キョウヒョウ)

DHS製のHirricane(キョウヒョウ)は、
・Hurricane II(キョウヒョウ2)
・Hurricane III(キョウヒョウ3)
・Hurricane III-50(キョウヒョウ3-50)
・Hurricane 8(キョウヒョウ8)
・Hurricane NEO II(キョウヒョウNEO2)
・Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

6種類が存在します。
 上記6種類に加えて、細かく販売時の (一般用省チーム用国チーム用)スポンジオレンジホワイトブルー)、スポンジ厚さスポンジ硬度を選択することになると思います。以下キョウヒョウNEO3について、主に記述していきます。

形(一般用省チーム用国チーム用)

 個人的に最も変わると感じる選択肢が販売時の一般用か、省・国チーム用か、の部分になります。一般用は八角形省チーム用は六角形国チーム用は四角形、で面積は 八角形 < 六角形 < 四角形 となります。以下写真になりますのでご参考ください。

一般用 = 八角形

一般用Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

省チーム用 = 六角形

省チーム用Hurricane NEO III Blue Spone(キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)

国チーム用 = 四角形

国チーム用Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

写真のように、販売されているラバーの形が異なっており、見る人が見ればどのランクのラバーかわかるようになっています。

スポンジ(オレンジホワイトブルー

オレンジスポンジ

 まず標準的なスポンジオレンジスポンジになりますね。一般用から国用まで、どのクラスのラバーもオレンジスポンジのラバーが存在します。初めてキョウヒョウを使おうという人は、まずはこのオレンジスポンジのキョウヒョウを使うことになると思います。硬くて、食い込みにくいですが、キョウヒョウらしい癖球も出しやすく、一般用から国用まで、しっかりとしたド粘着ラバーになります。特にNittaku製のキョウヒョウと比較しても癖球の出やすさが段違いで、別ラバーと感じると思います。

ホワイトスポンジ

 ホワイトスポンジのキョウヒョウについて、確かな情報を得ておりません。しかしながら数は少ないものの流通しているようです。バック側で使うためのラバーのようで、柔らかい硬度のものが流通しているようです。かなり特殊で希少性の高い種類がホワイトスポンジのキョウヒョウになります。

ブルースポンジ

 スポンジは、省チーム用または国チーム用ブルースポンジが存在します。シートの色は黒色のみになります。赤色シートにブルースポンジをあわせると、赤色シートが透けてしまうため、赤色シートのブルースポンジはないと言われていますね。よく中国のトップ選手がフォア面に使用するラバーはほぼ全員青色ブルースポンジだと思います。まさに、トップ選手たちは、この特殊なブルースポンジのキョウヒョウを使用されているわけですね。ブルースポンジの方が同じ硬度でも食い込みやすく、スイングで弧線を作りやすいと感じると思います。従ってフォア側で使用することが多いラバーになるのだと思います。

スポンジ硬度とスポンジ厚さ

スポンジ硬度

 近年のラバーはスポンジ硬度を選べる種類のラバーも増えました。例えば、Butterfly(バタフライ)のTenergy 05(テナジー05)にはTenergy 05 FX(テナジー05FX)とTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)存在します。スピード性能とスピン性能は同じですが、スポンジ硬度が違うために、やりやすい技術や回転量の幅、スピードが異なってきます。テナジー05は3種類から選べるわけですね。一方、DHSのキョウヒョウのスポンジ硬度の選択肢はかなり多いです。

 一般的なキョウヒョウNEO3の硬度の選択肢は39°、40°、41°の3種類になります。一方で、ネット上で種類を探していくと、硬度の種類は35°から42°まであるようですね。1°ずつ変えられるとして、7種類はあることになります。これだけ種類があると、かなり細かく硬度を選択できることになりますね。

スポンジ厚さ

 一般的なラバー、例えば、テナジー05では特厚、厚、中の3種類になります。キョウヒョウNEO3も同じく2.20 mm、2.15 mm、2.10 mm、と大きくは3種類になりますね。

価格と追記

 値段の話をさせていただきます。一般用の八角形のキョウヒョウは、ネット通販なので3,000円台で購入可能です。Nittaku製キョウヒョウよりも癖球が出やすいですが、食い込みにくいので、扱いにくくかつ飛距離が出しにくいです。一方で、省チーム用や国チーム用になると、値段が跳ね上がり、省チーム用で5,000円〜6,000円、国チーム用で8,000円くらいになります。硬度にもよりますが省・国チーム用のラバーは食い込みやすく扱いやすくなっていきます。スポンジをさらにブルースポンジにすることで、値段がまた高くなりますが(省チーム用で8,000円、国チーム用で10,000円以上)、食い込みもよくなってかなり扱いやすくなると思います。
 中国トップ選手は、おそらくこの国チーム用のキョウヒョウへ前(or 後)加工をしていると言われています。

*トップ選手の仕様

 あるサイトで、Ma Long(馬龍)選手やFan Zhendong(樊振東)選手のキョウヒョウNEO3と同じ仕様のラバーとして販売しているものも見つけました。
・国チーム用Hurricane NEO III Blue Sponge
 (キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)、黒、42°、2.10 mm
・国チーム用Hurricane NEO III
 (キョウヒョウNEO3)、赤、37°、2.10 mm
・国チーム用Hurricane NEO III Blue Sponge
 (キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)、黒、41.5°、2.10 mm

スポンジ厚さが2.10 mmということで、おそらくさらなる加工をしているものと思われます。値段は15,000円くらいです汗。

本物・偽物問題

 一般的な市場で出回らないために、省チーム用キョウヒョウと同等以上のラバーは偽物が出回っているようです。自分は日本語の記載もあるサイトから購入していて、気になるような物はありませんでした。なかなか本物偽物を見分ける方法が難しいようです。良さそうな方法は、偽造防止シールで見分ける方法が良いようです。あとはパッケージに入っているものを購入する、などでしょうか。キョウヒョウNEO3は已打底加工されていますので、真空パックされています。あるべきパッケージ、シールなどが貼ってあれば偽物は少なそうですね。一方、国チーム用キョウヒョウ3の中には、パッケージなしで販売されているものもありました。そこまで違和感はないのですが、かなりシートが浮きやすかったですね。シートの粘着力はあるのにシートが浮くために使えなくなる、という悲しい事態がよく生じました。もしかしたら偽物だったかもしれません。そう言ったことを考慮すると多少高くてもパッケージのしっかりした商品を購入することをオススメします。

 なお、自分も下記サイトからDHSのシリアルナンバーを入れたことがあります。

http://www.dhs-sports.com/search.shtml

DHSのシリアルナンバーチェックページへ飛びます。

上記サイトへ自分が購入したキョウヒョウのシリアルナンバーを打ち込んでチェックをかけてみると、次の2つのパターンのページが現れます。このチェックで100%安心できるわけではないのですが、気休め程度にはなると思います。

偽物だと判定された場合↓

您输入的防伪码不存在,请确定产品来源,谨防假冒!

はGoogle翻訳すると

「入力したセキュリティコードは存在しません。製品の提供元を確認し、偽造に注意してください!」と訳されました。

本物だと判定された場合↓

您输入的防伪码存在,该产品由红双喜生产,请放心购买。

はGoogle翻訳すると

「入力したセキュリティコードは存在します。この製品はDouble Happinessによって製造されています。安心して購入してください。」と訳されました。

 あまり初心者の方が興味本位で購入するのはおすすめできそうにありません。しっかり自己責任で購入しましょう。

DHS製キョウヒョウをまとめると、、、

・Hurricane II(キョウヒョウ2)
・Hurricane III(キョウヒョウ3)
・Hurricane III-50(キョウヒョウ3-50)
・Hurricane 8(キョウヒョウ8)
・Hurricane NEO II(キョウヒョウNEO2)
・Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

と6種類あり、それぞれに
 国、省、一般(3種)
 スポンジ(オレンジ、ホワイト、ブルー 1 or 2 or 3種)
 スポンジ硬度(35°〜42° 約7種)
 スポンジ厚さ(2.10 mm、2.15 mm、2.20 mm 3種)
と、6 × 1(or 2 or 3)× 2(or 3)× 7 × 3 = 378の選択肢があります。
 上記から、わかるようにDHS製のキョウヒョウは仕様がかなり細かいです。おそらく各選手ごとに細かく仕様を変更しているものと思われます。Butterfly(バタフライ)でも、契約選手は硬度や重量を指定したものを扱っていると言われています。従って、DHSの対応は選手ファーストな考え方によるものだと思います。

 最後に、簡単に6種類のキョウヒョウについてコメントさせていただき、DHS製キョウヒョウの総括とさせていただきます。
・Hurricane II(キョウヒョウ2)
 強粘着 回転はかかる分、弾まない
・Hurricane III(キョウヒョウ3)

 微粘着 扱いやすいキョウヒョウの中で標準的なキョウヒョウ
・Hurricane III-50(キョウヒョウ3-50)
 
 微粘着 使ったことないので不明
・Hurricane 8(キョウヒョウ8)

 微粘着 ややテンションがかかっていて 弾む
・Hurricane NEO II(キョウヒョウNEO2)

 強粘着 已打底あり
・Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

 微粘着 已打底あり 現在最も標準的なプラボール対応のキョウヒョウ
 キョウヒョウの中でも弾むキョウヒョウ それでも高弾性ラバーほどしか弾まない

DHS製キョウヒョウを使用する日本選手

 キョウヒョウブルースポンジのラバーは名だたる中国選手が使用しているのはもちろんのこと、日本選手では2017年世界卓球ダブルス準優勝の大島祐哉選手(一時期のようで、今はテナジー05ハードを使っているようです)、女子全日本選手権で優勝経験のある石川佳純選手早田ひな選手がフォア面で使用しているようです。
 また、女子選手でブルースポンジかどうかは分かりませんが、キョウヒョウを使用する選手は増加傾向にあります。カットマンの橋本帆乃香選手佐藤瞳選手、四天王寺のドライブ主戦型芝田沙季選手大藤沙月選手も使用しているようです。
 トップ選手はNittaku製のものではなく、DHS製のものを使うケースが多いようです。

個人的なNittakuとDHS製キョウヒョウの比較

 自分にとっては初めて使用したキョウヒョウはNittakuのキョウヒョウPro3で、弾まなくて驚いたのを覚えています。安いのもあってDHS製一般用八角形のNEO3を長く使っていた時期もありました。ただ、一般用のキョウヒョウNEO3はかなり硬くて弾まなくて、Timo Boll Spirit(ティモボルスピリット、アウターALC)に貼っていても下がったら、しっかり球を持ってやらないと全部ネットに引っかかるくらい弾みません。その分、しっかり回転をかける癖がつくのでラリーでも相手がドライブで蒸したり、癖球が出たりして得点源になりますが、ラリーが長引いて体力的にシンドイし、浮いたツッツキの強打が打てる気が当時はしなかったです。
 そんな時、興味もあってブルースポンジを使ってみたら、ノーマルスポンジよりもかなり柔らかいのでテンションのようにも使えて、癖球も出てサーブも切れて、思い切り振ることができれば強打もいけるとわかり、加えてTSP製ラバー保護シートを貼れば寿命はかなり長くなることがわかり、そこから2年くらい愛用しました。性能面で粘着ラバーのブチギレの切れ味を維持しながらナックルサーブやドライブ強打でノータッチが狙えるのがキョウヒョウNEO3ブルスポの良いところです。メインラケット用のラバーはちょいちょい新調していますが、どれが一番古かったかわからないくらいシートの粘着力はTSPの保護シートで補えるので、他のラバーへどんどん移植が進んでいきました。木材系ラケットからアウター特殊素材ラケットへ変更する際に、キョウヒョウNEO3からキョウヒョウ3へ変更したり硬度を柔らかくしたりしましたが、徐々に硬度を硬くしていき、最後は省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジの40°を使っていました。
今までにキョウヒョウNEO3ブルースポンジをあわせたラケットは以下の通りです。
・Zhang Jike ZLC(張継科ZLC)
・Timo Boll Spirit(ティモボルスピリット)
・Mizutani Jun ZLC(水谷隼 ZLC)
・Mizutani Jun SuperZLC(水谷隼SZLC)
・Fortius FT ver. D(フォルティウスFT ver. D)
・Fortius FT(フォルティウスFT)
・Virtuoso+(ヴィルトゥーソ+)
・Ultimate Carbon(ウルティメイトカーボン)
・Sardius(サーディウス)

省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジの2.15 mm、40°のラバー重量は約47 gでした。粘着ラバーでこの重量はかなり軽量だと思います。粘着ラバーの場合、重い方がいいと感じる人もいらっしゃると思いますのでケースバイケースではあります。省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジの重量はある意味一つの特徴でしょう。回転のかかるハイエンドラバーは50 g以上が当たり前のようになってきています。50 gを下回る重量であることは、このことだけでも1つの特徴だと思います。

それでは各技術について書かせていただきます。

Hurricane NEO III Blue Sponge(省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジ、省狂NEO3ブルスポ)の3つの特徴

 レビューであるのに、説明だけで相当長くなってしまいました汗。本レビューはあくまで有機溶剤を使わず、一般的な水系溶剤で貼った場合の試打レビューになります。

沈み込む癖球ドライブのための最強ラバー!

 キョウヒョウの特徴とは、なんと言ってもキョウヒョウ独特の沈み込む癖球ドライブになります!この癖球ドライブが打てるからこそ、キョウヒョウを使っているという人は多いでしょう。中国製ラバーの代名詞というべき、癖球ですね。使い込めば使い込んでいくほど、キョウヒョウの中でも硬いラバーを選んでいくことで、癖球を出しやすくなると思います。
 近年のラバーは硬くなる傾向で、各社のハイエンドラバーは各ラバーらしいボールのウネリのようなものが出るようになってきたと思います。その中でもキョウヒョウの癖球ドライブは、有名だと思います。キョウヒョウの癖球ドライブは、他社のラバーとはかなり異なり、加速しながら沈み込むようなドライブになるのが特徴だと思います。テナジー05の癖球はむしろ跳ね上がるようにホップするので、真逆の変化と言えるかもしれませんね。オーバーミスしそうな弾道で一度上に上がってネットを超えてから急激に台の深いところへ吸い寄せられるように沈み込む癖球ドライブは、かなりいやらしいドライブとして相手コートに突き刺さることでしょう。

回転量と球足の速さでサービスエースが取りやすい!

 キョウヒョウNEO3ブルースポンジの2つ目の特徴として、回転量と球足の速いサーブを出すことができます。これはかなり得点源になると思います。粘着ラバーなので、ハーフロングサーブも出しやすく、已打底もあるので、球足の速いサーブも出しやすいです。1球目攻撃と言われるサーブでの得点率を上げやすいのは、中級者以上でも非常に武器になると思います。自分は特に下回転系または横下回転系の球足の速いサーブを多用しました。軽く持ち上げるだけでは、ネットミスしてしまう、ナックルのようにも見えるサーブになりますね。

食い込みやすいのに、いい意味で弾まない!台上最強の粘着でありながら中陣でも打ち合える絶妙なバランス!

 そして、キョウヒョウNEO3ブルースポンジの3つ目の素晴らしいところは、最高のバランスになります。癖球が出せる一方で、スピードも出せるのです。粘着ラバーは総じてスピン系テンションと比較するとスピードドライブはやはり容易ではありません。面を開いてスポンジの食い込みやラケットのしなりを利用して、回転をかけながらバチんと弾き、フォロースルー含めてスイングで弧線を描かせることで、スピードドライブを可能とします。一度この打ち方を覚えると、ボールにかかっている回転や、ある程度の球の高さ、をある程度無視して、安定して強烈なスピードドライブを打てるようになります。回転を無視できることはスピン系テンションでも同じですが、ある程度の高さを無視してスピードドライブできるのが粘着ラバーの特徴だと思いますね。これにより3球目必殺のスピードドライブを可能にするわけですね。このスピードドライブはスピン系テンションラバーで放つスピードドライブよりも初速は遅いですが、伸びや弾道が見慣れないため実際よりも体感は速いと感じやすいと思います。このスピードドライブがブルースポンジ系のラバーはかなり打ちやすいと思います。
 そして下がった時も一定の飛距離を出しやすいので、引き合いも可能です!もちろんスピン系テンションラバーと比較するとかなりパワーを要しますが、中陣からでもノータッチの狙える球威のドライブが打ちやすいですね。これはバランスが取れていると思います。一般用八角キョウヒョウNEO3では、中陣の引き合いは正直厳しかったです。この抜群の守備範囲が得られるのも、キョウヒョウNEO3ブルースポンジの特徴になります!

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 軽打からキョウヒョウは弾みません。ラケットによってはペコペコとした可愛い音がしますね。ブルースポンジで食い込みやすいと言っても、スピン系テンションと比較したら高弾性ラバーのような弾みと球の伸びではないかと感じるのが、キョウヒョウの軽打になります。

スマッシュ
 キョウヒョウは総じてスマッシュはかなりやりにくいですね。弾こうとしても食い込んでしまって勝手に何かしらの回転をかけてしまうためだと思います。ここは気をつけた方が良いと思います。中国選手はロビングを上げられた時はバック面に使っているスピン系テンションラバーを使ってフォアスマッシュすることが多いのは、このためですね。でもタイミングとタッチを短くすることでスマッシュもできます。

ロングボールやラリーでのドライブ
 軽く打つと、普通のドライブと変わりません。思い切りぶつけにいけばいくほど癖球系のドライブになりやすいですね。スピードを出すより、癖球を出すようにした方が相手のミスを狙えると思います。

面を開いたドライブ
 面を開いてのドライブが最もやりやすいラバーの1つがキョウヒョウNEO3ブルースポンジだと思います。回転をかけやすいですね。もちろん自分で弧線を作る必要はありますが、弧線を作った時にしっかり弧線を作ってくれる、キョウヒョウらしさも顕在です。逆にこの自分で弧線を作れる感じが掴めないと少し扱いにくいラバーと言えるかもしれません。

対下回転に対するループドライブ
 得点源です。総じて硬くて板薄のラケットでループドライブすればするほど、球離れは速くなって難しくはなりますが、それ相応の質の高いループドライブになりやすいと感じました。張継科ZLCと組み合わせた時はループドライブで相当点数が取れましたね。自信を持ってドライブできると思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 面を開いたドライブができれば、違和感なく打てると思います。人によってスイングはいろいろあると思いますが、このラバーはそれぞれの癖に応じてくれるのも良いところだと思います。スイングは大きくなりがちですが、テイクバックからフォロースルーまで全てがドライブを変化させる因子となりうると感じました。それくらい色や味が出せるラバーであることが魅力の1つでもあると思います。

カーブ/シュートドライブ
 カーブドライブもシュートドライブもやりやすいですね。個人的にはシュートドライブの方が、面が開きやすいので回転をかけやすいと感じました。

ブロック
 ブロックは少しやりにくいです。特に相手の回転の影響も受けやすいので、ただ当てるだけのブロックは得策ではないですね。

カウンタードライブ
 カウンタードライブは台上で打点の早いドライブよりも引き付けて、多少打点を落として自分のボールにして打つカウンタードライブの方が打ちやすかったです。食い込みの良いラバーですので、相手の回転の影響は受けやすいので、打点を落とすことで回転が弱くして、そこから自分で弧線を作ってあげることで、回転量にかかわらずカウンタードライブしやすい感じがありました。

ストップ
 抜群にとまります。特に打点が遅くなったり、頂点後にボールを打ってもストップにできるやりやすさがありました。

ツッツキ
 低くおさまると思います。切ったりするのは特段やりやすいという印象はありませんでした。

フォアフリック
 結構思い切り弾かないとネットに引っかかりやすいです。ドライブ回転をかけて安定させるか、ナックルで押し込むか、迷いやすかったですね。自分はドライブよりはナックルの方が球質の差が出て相手は嫌じゃないかと想像してナックル系のフリックを多用しました。ただ、当て方を間違えると、勝手に回転をかけてしまうので、スパッと短い打球時間で打った方が安定すると思います。

バックハンド系

バックハンドで使った経験はあまりありません。今度更新していこうと思います。

軽打
ロングボールやラリーでのドライブ
対下回転に対するループドライブ
 カーテン打ちの感想としては、かなりやりやすいです。スポン系テンションよりもループドライブがやりやすいですね。
対下回転に対するスピードドライブ
 カーテン打ちだけですが、面が変わりやすいのでスピードドライブは難しい気がしました。
カーブ/シュートドライブ
 カーテン打ちではよく曲がって好感触でした。
ブロック
カウンタードライブ
ストップ
ツッツキ
チキータ

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

比較ラバーは
・省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジ(省狂NEO3ブルスポ)
・Dignics 05(ディグニクス05)
・Dignics 09C(ディグニクス09C)
・テナジー05(Tenergy 05)
・Nittaku製キョウヒョウNEO3(Nittakuキョウヒョウ)

回転量
 ディグ09C ≧ ディグ05 > 省狂NEO3ブルスポ > テナ05 ≧ Nittakuキョウヒョウ

スピード
 ディグ05 > ディグ09C > テナ05 > 省狂NEO3ブルスポ > Nittakuキョウヒョウ

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 省狂NEO3ブルスポ > ディグ09C > テナ05 > ディグ05 > Nittakuキョウヒョウ

癖球の出しやすさ
 省狂NEO3ブルスポ > ディグ09C > Nittakuキョウヒョウ ≧ ディグ05 > テナ05

癖球の嫌らしさ
 省狂NEO3ブルスポ > ディグ09C > ディグ05 > Nittakuキョウヒョウ > テナ05

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レビュー Dignics 80(ディグニクス80)

説明

水谷選手のV10を確実のものにしたラバー!

 2018年12月のワールドツアーグランドファイナル準々決勝で、水谷隼選手が中国の梁靖崑(Liang Jingkun)選手に勝利しました。その時に一部のコアな卓球ファンたちの間で使用しているラバーが話題となりました。それまで水谷選手は両面Tenergy 80(テナジー80)を使っていたのに、試合動画に映る水谷選手のラバーはテナジーではなく別のラバーを使っている。そしてButterfly(バタフライ)の新商品を発表するという予告がホームページにも記載され、全日本選手権に向けてラバーの噂は持ちきりとなりました。全日本選手権に対し、思い切って新しいラバーへ挑戦することは想像以上に勇気の必要な決断だと想像します。実際、バタフライ契約選手は2つに別れていて、新たなラバー、Dignics(ディグニクス)シリーズのラバーへ変更する選手とTenergy(テナジー)シリーズをそのまま使用する選手に別れました。ディグニクスシリーズへ挑戦するその決断は、水谷選手の前人未到の全日本選手権V10のためには必要な通過儀式だったようです。この年、水谷選手は圧巻の強さで、ストレートの4-0か1セットを許す4-1の勝利で決勝まで進出し、高校3年生から13年連続の全日本選手権決勝進出を達成しました。前年度優勝で優勝候補No. 1だった張本智和選手に、パワーで打ち勝った大島裕哉選手との決勝は唯一2セット落としたものの、フルセットまでもつれた試合は1試合もなく、王者水谷隼選手のV10と強さが新たな歴史を刻んだ全日本選手権でした。

補足1
 水谷選手がワールドツアーグランドファイナルの時に使用していたフォア側のラバーはDignics 80(ディグニクス80)ではなく、Dignics 05(ディグニクス05)だったようです。その後、全日本選手権へ向けて調整し、両面ディグニクス80で優勝したようです。

補足2
 上述からディグニクスシリーズを使わなかった、使えなかった選手が不利になっただけじゃないかと思うかもしれません。しかしながら、ディグニクスシリーズを使ってみたけど結局テナジーシリーズへ戻すバタフライ契約選手が、何名もいらっしゃったことを補足させていただきます。使いこなせればメリットがある一方で、使いこなせなかった時のデメリットも存在することは強調させていただきます。

前評判はDignics 05を上回るDignics 80!

 その後2019年4月にディグニクス05が発売され、半年後の2019年11月待ちに待たされた王者水谷選手が現在両面に使用するディグニクス80が発売されました。発売前後には卓球ショップなどで試打レビューや動画が多数あがりました。そのレビューにおいての評価は極めて高く、先に発売されたディグニクス05よりも一般層で販売数を伸ばすのはディグニクス80だろうと言われたほどです。

公表性能値の比較

 公表性能値比較を下記に示します。

 性能からわかるように、ディグニクス80はTenergy 05(テナジー05)よりもスピン、スピードが上回る極めて高い性能のラバーとなります。そしてディグニクス05と比べるとスピンで劣るがスピードで勝ることがわかります。

Spring Sponge X(スプリングスポンジX)とDignics(ディグニクス)シリーズのシート

 Spring Sponge X(スプリングスポンジX)は、テナジーシリーズに採用されているSpring SPonge(スプリングスポンジ)の進化版だと思います。スプリングスポンジが独立気泡のスポンジで他のラバーメーカーでは製造できないもののようです。そのスプリングスポンジの独立気泡を、独立を維持したままより細かくしたものがスプリングスポンジXらしいです。結果、スプリングスポンジよりもスプリングスポンジXの方が、14%変形しやすくなり、反発力は3%向上しているそうです。
 テナジーシリーズのスプリングスポンジといえば、オレンジ色のスポンジが特徴的ですが、ディグニクスシリーズのスプリングスポンジXは真紅と言える赤色が特徴で、一眼でディグニクスシリーズとわかります。

 表面の強度と球持ちが改善したことも紹介されています。球持ちについてはシートで捉えるカウンターやチキータがより安定することが紹介されていますね。また強度ですが水谷選手も言及されていてラバーの交換までの時間が長くなったとおっしゃってます。確かにテナジーシリーズと比べてもシートが白くなるまでの時間が長くなっていて、保管条件が良ければ1年近くシートの劣化は感じません。ラバー全体で考えると、スプリングスポンジXのテンションというか張りが緩む感じがあるので、刻一刻と状態は変化していくと感じます。
 ディグニクスシリーズのシートは透明感が強くなっていますが、ドイツ製の曇り系シートに近い強いシートを採用しているようなので、抜群にチキータやカウンターがやりやすいと感じます。

その他

 バタフライホームページまたはツィート上で、水谷選手がディグニクスについてコメントしていたと思うのですが、見つけることができませんでした。内容は「中国選手のドライブに対して負けずにカウンターができる」という内容だったと思います。中国選手のドライブはHurricane(キョウヒョウ)系の粘着ラバーをもちいた回転量とスピードと癖球による威力が特徴だと思います。この粘着ラバー特有のドライブに対して負けずにカウンタードライブできるのがディグニクスというラバーだと思います。

Dignics 80の重量と貼り

 いつものようにZhang Jike ZLC(張継科ZLC)に貼りました。

 改めて試打予定ですので、張継科ZLCに貼った写真は後日更新させてください。

Dignics 80(ディグニクス80)
 High Tension(ハイテンション)裏ラバー
・スポンジ厚:厚(1.9 mm)、特厚(2.1 mm)
・スピン:11.75
・スピード:13.75
・Sponge硬度:40
・オープン価格(9,800円 + 税)
・xx g(切断前) → 約48 g(張継科ZLCに貼って)

ディグニクス80の3つの特徴

1. カウンタードライブとチキータが打ちやすい!

 ディグニクス05のレビューでも書かせていただきました。シートが強くなったためカウンタードライブがとても打ちやすいです。角度を決めてふりぬけば簡単にカウンタードライブが決まります。またチキータもやりやすいですね。シートが勝手にボールを持ち上げてくれます。このやりやすさとシートの強さはドイツ製ラバーっぽいですね。この扱いやすさは素晴らしいです。これらのポイントだけでもディグニクス80を使うメリットはあると思います。

2. ディグニクス05より扱いやすい!テナジー05に近い打球感で性能を進化させたラバー

 ディグニクス80で特筆すべきはディグニクス05よりも扱いやすい点です。硬度は同じですが05のシートは粒間隔が狭いのが特徴です。この粒形状のために、ディグニクス05は食い込みにくく球離れが速くなる印象があります。Dignics 05は癖が強く、慣れるまでに時間を要しますね。今後テナジーシリーズ同様にディグニクスシリーズでも硬度の柔らかいFXシリーズが販売される可能性はあると思いますが、現状ディグニクス05は扱いが難しく販売数は伸びないかもしれません。一方でディグニクス80は、抜群に扱いやすいです。これはディグニクス80の方がシートの粒間隔がディグニクス05よりも少し広くなっているために、食い込みやすくなったためだと思います。球持ちも抜群に良く自ら食い込ませる必要のあるチキータがかなりやりやすいと感じます。
 初めに感じた印象はまさに「テナジー05を進化させたラバー」でした。テナジー05は扱いやすさと回転のかけやすさがあると思いますが、その扱いやすさを維持したままスピード性能や回転性能を改善したラバーがディグニクス80だと感じます。テナジー05を使っている人には、ディグニクス80をおすすめしてしまいますね。
 数値比較できたわけではないですが次のようなイメージです。
 スピード: テナジー05が10なら ディグニクス80は12
 スピン:  テナジー05が10なら ディグニクス80は11〜10.5

3. 軽量で高性能なラバー

 自分が試し打ちした際のディグニクス80のラバー重量はディグニクス05と同様に48 gでした。50 gを下回るラバーであるにもかかわらず、回転性能やスピード性能、カウンターの打ちやすさが備わっていて、バタフライのラバーらしい特徴を有します。類似の性能を有するラバーは他メーカーのハイエンドラバーでも存在すると思いますが、おそらく50 gを容易にオーバーしてしまうのが普通だと思います。軽量で高性能は、まさにバタフライの代名詞的な特徴だと思います。
 もう少し詳しく補足させていただきます。そもそも世界で圧倒的に使用されているテナジー05は、その高い回転性能が一つの特徴です。高い回転性能のためにボールの回転量は粘着ラバーに匹敵するときもあります。そしてテナジー05はスピン系テンションラバーですので、後加工などなければ粘着ラバーよりも高いスピード性能を有します。そのテナジー05よりも高い回転性能、高いスピード性能を有するのが、このディグニクス80というラバーになります。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 ぶっちゃけ、ディグニクス05との違いを感じにくかったです。

ロングボールやラリーでのドライブ
 この辺りから違いを感じました。1番の違いはボールの深さで、ディグニクス05の方が深く、ディグニクス80の方が浅かったと感じました。浅いのはデメリットかもしれませんが、サイドを切るボールを打ちたい時には浅い方が入りやすいこともあるので、考え方だと思います。
 テナジー80と比べると球持ちが良いと感じました。個人的にはテナジー80よりも好みな方向へ向かった変化だと感じました。人によってはもっと球離れが速い方が好みの人もいると思います。

面を開いたドライブ
 更新予定

対下回転に対するループドライブ
 思ったより回転がかかって驚きました。そこまでガッツリかけたつもりはなかったのですが、テナジー05やTenergy 05 Hard(テナジー05ハード)なみのしっかりとした回転量が得られます。思い切りかけた時のMaxの回転量は、流石にテナジー05ハードやディグニクス05に劣ると感じましたが、何気ないドライブの回転量が想像以上にあったので、つなぎやチキータなどの質が高いことを直感的に感じました。

対下回転に対するスピードドライブ
 更新予定

カーブ/シュートドライブ
 更新予定

ブロック
 更新予定

カウンタードライブ
 ディグニクス05と同様にやりやすかったです。ディグニクス05の方が、回転量が多いカウンターがしやすいと感じましたが、弧線が出しやすいというわけではなかったです。むしろディグニクス80の方が回転の影響を受けにくい気がしました。

ストップ
 ディグニクス05と同じく、シートで切りやすいと感じました。慣れれば、明らかにディグニクスシリーズのラバーは台上はやりやすいと思います。慣れないとぶっ飛ぶので気をつけてください。

ツッツキ
 更新予定。

フォアフリック
 更新予定。

サーブ
 ディグニクス05ほどではないですが、食い込ませた方が回転がかけやすい感じがありました。

バックハンド系

軽打
 球離れは早めで、かなり直線的なボールになりやすいです。

ロングボールやラリーでのドライブ
 ディグニクス05よりもくい込みがいいのでやりやすいですね。

対下回転に対するループドライブ
 グリップしやすくてやりやすいです。

対下回転に対するスピードドライブ
 ミートに近いスピードドライブもやりやすいですね。

カーブ/シュートドライブ
 今後更新予定

ブロック
 今後更新予定

カウンタードライブ
 やりやすいですね!

ストップ
 今後更新予定

ツッツキ
 少し飛びやすいです。難しいですね。

チキータ
 今後更新予定

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 ディグニクス05 > ディグニクス80 ≧ テナジー05ハード ≧ テナジー05 > テナジー80

スピード
 ディグニクス80 > ディグニクス05 > テナジー80 > テナジー05ハード ≧ テナジー05

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 ディグニクス09C > ディグニクス05 > ディグニクス80 > テナジー05ハード

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レビューMizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)

説明

 日本卓球界の至宝、水谷隼選手が選んだラケットになります。リオ五輪で団体銀、個人銅の偉業を成し遂げ歴史に名前を刻んだ水谷隼選手のブレードですね。木材構成についてググっても確かな情報が出てこないのですが、どうやら上板にLimba(リンバ)が使われているようです。確かに、上板にリンバを使うラケットと同様、柔らかい打感です。サイドを見たら上板に近いところに特殊素材Zylon Carbon(ザイロンカーボン、ZLC)が配置されていますね。明確にアウター系だとわかります。
 ちなみに、水谷隼選手は2018年全日本時、水谷隼ZLCから、特注のArylate Carbon(アリレートカーボン、ALC)ラケットに変更したようです(バタフライのホームページで確認しました)。インナーかアウターか、木材構成など、不明です。根拠はまったくありませんが試合の様子などから水谷隼ZLCの特殊素材のみALCに変更したアウター系ラケットではないかと推測しています。さらにその後、ALCで落ち着かず、特注ZLCを経て、水谷隼ZLCに戻っています。また2020年4月現在グリップをストレートからフレアへ変更されました。ストレートグリップのメリットは台上のストップのやりやすさ、フレアグリップのメリットはバックハンドの威力、ということだそうです。水谷選手はバックハンドの威力を求めてフレアグリップへ変更されたんですね。
 オーソドックスなアウター特殊素材系ラケットと呼ばれるTimo Boll(ティモ・ボル)モデルや、Zhang Jike(張継科)モデルとは一線を画す合板構成なのが水谷隼ZLCになります。アウターZLCであるTimo Boll ZLC(ティモ・ボルZLC)やZhang Jike ZLC(張継科ZLC)は板厚5.5 mmで上板にKoto(コト)材を使用していることが共通していますが、同じアウターZLCである水谷隼ZLCは、公称板厚5.7 mmで先ほども述べたように上板にリンバ材をもちいています。

 上表からわかるように、水谷隼ZLCは、アウターALCラケットの中のFreitas ALC(フレイタスALC)と類似のラケットとなります。過去にはMaze(メイス)というラケットも上板リンバでALCをアウターに配し、フレイタスALCと類似の構成だったそうです。

水谷隼ZLCの3つの特徴

上板リンバの球持ちと回転のかけやすさ!

 球持ちを感じやすい上板にリンバ材を採用しているラケットになります。もちろん、アウターに配したZLCによって球離れは速いのですが、その中にボールを持つ感覚があるのでラリーにおいて安心感があります。球持ちを感じますので、回転をかけやすく、ボールの打球位置を意識するだけで、打球位置に対応した回転がかけやすいです。例えば、フォアでもバックでもボールの外側を捉えるだけで、ボールが外へと曲がりやすいですね。またスイングスピードも一定以上あればある程度の速いボール、回転のかかったボールが出せるので、力のない選手にもオススメです。

板厚5.7 mmの飛距離!

 板厚5.7 mmで張継科ZLCよりも板厚が厚いため、張継科ZLCよりも水谷隼ZLCの方が飛距離が出しやすいです。従って飛距離が出しやすいですね。例えば回り込みドライブ時に、相手のコートの深いところにしっかりコントロールしやすい打球感覚が得られると思います。また後陣からの引き返しやカウンタードライブも当てることができれば、安定して相手のコートの深いところに返球しやすいですね。

一球の威力よりも、ラリー志向ラケット!

 バタフライホームページでもうたわれているように、オールラウンダー向けのラケットになります。ボールのキレや威力、回転量のMax値を求めると、ティモボルZLCなど他のZLC系ラケットの方が引き出せた時の破壊力は上だと思います。一方で、一定以上の質のボールを安定してほぼ永久的に返球しようと思った時は水谷隼ZLCの方が圧倒的にやりやすいでしょう。スピードと鋭角なボールが安定して出しやすいのも1つの特徴です。

おすすめのラバー組み合わせ

 球持ちを感じるラケットですので、ある程度硬いラバーでも全然あうと思います。個人的には弾みやすいラケットですので、弾むラバーよりも硬くて回転性能の高いラバーが良いと思います。
 粘着ラバーを全然ありだと思います。実際自分は過去に粘着ラバーを貼ってメインで使ってました。でも、プラボールがABS系の硬いものになってからアウターZLCの球離れの速さによって回転をかけ切る前に球が離れると感じるようになって、難しいと感じました。一方で、中国のプロリーグの選手の中には水谷隼ZLCを使用する選手もいるようです。アウターZLCと粘着ラバーは、使いこなせれば武器になるでしょう。

フォアラバー

Tenergy 05 Hard(テナジー05ハード)

 バタフライで現状最も硬くて、回転量の出るラバーです。05ハードも球離れが速いと感じるラバーなので、扱いはやや難しいですが、使いこなせれば台上も安定させることができますし、一発は威力が出るし良い組み合わせだと思います。

Omega VII Tour(オメガ7ツアー)

 ドイツ製ラバーで、扱いやすく回転性能も高くかつ球持ちを感じるラバーですね。重量は05ハードよりも重くなりますが、水谷隼ZLCは90 g未満のラバーですので片面であればあわせることのできるラバーでしょう。またドイツ製ですのでテナジー系よりも扱いやすさのあるラバーであることも嬉しいと思います。

Rasanter R53(ラザンターR53)

 Andro(アンドロ)のハイエンドラバーですね。スポンジの硬度は53°とかなり硬いですがシートは食い込みやすいので、意外に扱えると思います。飛距離がでやすいラバーとラケットの組み合わせになるので、中・後陣は強力と言えるでしょう。台上もR53は個人的にはやりやすかったので、可能な範囲で尖った組み合わせだと思います。

バックラバー

Tenergy 05 FX(テナジー05FX)

 球持ちはありつつ、球離れは速いラケットではあるので、ラバーは柔らかめの方が扱いやすいと思います。05FXはシートで打つよりもスポンジに食い込ませると高い回転性能が得られるラバーですので、バックハンドの方が活きるでしょう。カウンターが勝手に入るくらいブロックがやりやすく、安定感のある組み合わせです。また一発の威力のあるボールも出しやすいですね。バックハンドが苦手でも強烈なボールが打てると思います。

Spin Art(スピンアート)(廃盤)

 ツッツキをブチっと切ることもできるし、チキータやバックハンドドライブも回転で安定させることができるし、ストップもやりやすい組み合わせでした。また、中陣からは意外とミートがいい感じでした。フォアはドライブで弧線を出して、バックはミート系で直線的に攻めることで、フォアとバックの球質の差を出しやすいと思います。

Rozena(ロゼナ)

 弾むラケットと柔らかいラバーの組み合わせは、ツッツキや台上が難しいと思いますが、ラリーや強打はかなり威力が出しやすい組み合わせです。ロゼナは食い込ませることで回転性能が出せるラバーですので、バックラバーにむいていると思います。

各技術レビュー

フォアハンド系

軽打
 まずフォアでの打球感なんですが、上板にリンバ材をもちいているので、打球感は柔らかく木材系のラケットのように球を持ち上げやすいです。しかしながら、その感覚は決して過信してはいけなくて、本当の木材系ラケットと比較すると、やはり球離れが速いです。結果ゆっくりしたインパクトやフォロースルーではミスや棒球になりやすいと感じます。結果的に使いこなすにはクイックネスが必要です。一方で慣れてくるとある程度安定感が得られます。加えてアウターラケットらしいスピード性能とラリーの安心感があります。自分は前後の動きが苦手ですので、後ろに下がっても威力のある強打が打てる水谷隼ZLCはとても頼りになると感じます。

ロングボールやラリーでのドライブ
 かなり自分は打ちやすいと感じました。少ないエネルギーでスピードが出せます。加えて相手のドライブのスピードや回転を利用しやすいと感じました。木材系ラケットだと、振り遅れると押されますし、うまく打ててもエネルギーロスを感じる時がありますし何より飛距離が出しづらいのでネットを超えるように少し上へ上へと打つ必要があると思います。このラケットは多少スイングが遅れても前へふればそれなりの質のボールが返球できるので、素晴らしいですね。またスピードや回転も出しやすいです。

面を開いたドライブ
 打感が柔らかくある程度しなるので、感覚があればとてもやりやすいと思います。安定感があると思います。回転量のあるドライブもスピード速めのドライブもやりやすいと思います。

対下回転に対するループドライブ
 球持ちが良いのでやりやすいです。ラケット角度は垂直よりも面を天井へ向けないようにした方がいいと感じました。それでもボールが浮きやすいので、低くコントロールすることを意識した方がいいと思います。手打ち気味に打つと少し棒球になりやすいのでしっかり体を入れて打った方がいいと思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 スピードが出やすいです。思ったより回転がかかっていないことが多いので、回転:スピード=7:3くらいで打った方がいいと思います。結構、ラケットがしなるので、ボールの真後ろを叩いてしまうと回転の影響を受けやすいと感じました。ラケットの下半分で捉えるイメージでインパクトするとしなりを利用できて、安定すると思います。

スマッシュ
 スピードはめちゃんこ速いですね。これが打てれば、ロビングが得意な人でも良く決まりました。ただ打ちやすさは他のラケットと比較するとラケット角度は少々シビアですね。基本的には直線で打つつもりで、回転がかかっていてもインパクトでもっていくイメージだと思います。ラケット自体がやはりしなるので、手首は使わずに体で持っていくことをおすすめします。

カーブ/シュートドライブ
 ラケットがしなりやすいので、サイド回転を入れると安定感が増しました。またプラボールはよく曲がるので、結構サイドを切るようなコースを狙いやすかったです。

ブロック
 欲を言うとブロックしやすいと良かったのですが、少ししなりやすいのでブロックは繊細でした。特に角度を固定して当てるだけのブロックは相手のボールの影響を受けやすいと感じました。柔らかい打球感があるのでアクティブブロック気味に少しドライブ回転をかけるようにすると安定感が出ると思います。

カウンタードライブ
 回転でなくスピードを求めるなら水谷隼ZLCは最高に速い返球がしやすいです。相手の時間を奪うようなカウンタードライブが打ちやすいです。その分、飛距離が出やすいので若干下がった方が自分はやりやすかったです。前陣カウンターは少し角度がシビアだと思いました。

ストップ
 置くようなストップはしやすいです。でも厚くあててしまうと、浮いたりオーバーしやすいので難しいですね。基本的には浮きやすいのでその後のブロックもヤマをはって待った方がいいかもです。

ツッツキ
 切りやすいです。ただオーバーミスもしやすいです。ツッツキが切りやすいので、レシーブはガツっと切って、相手の強打を封じるのもありだと思います。

フォアフリック
 上板のおかげだと思います。ラケットは弾みますが、打感が柔らかいので台上の技術は角度さえ合えば、意外とやりやすいです。オーバーミスもしやすいので、ナックルプッシュのようなイメージでレベルスイング気味に打った方が相手も嫌だと思います。

サーブ
 サーブの一番の武器はナックルですね。かなりエグい速さのサーブが出せます。ナックルと下回転を混ぜていくとかなり効く印象ですね。YGサーブは、弾むので浮かないように出すのが難しいです。

レシーブ
 やはりアウター特殊素材のネックNo.1はレシーブですね。スイングスピードやインパクトをコントロールできるのであれば素晴らしいボールになるのでしょうが、そこまでコントロールする技量がないので、このラケットでのレシーブは本当に嫌いです。知り合いのサーブだと癖というかわかるサーブが多いので全然良いのですが、初見のサーブは癖を探していたら試合が終わってしまう11本マッチでは、悠長なことはいっていられず厳しいです。練習量で補うしかないと思いますね。

バックハンド系

 続いてバックはスイングスピードが重要と感じました。しっかりふる必要はありますが、ふれればしっかり安定しますね。ただ弾むので、丁寧にドライブを打つよりも思い切りよく振り切ることでいいスピードドライブが決まります。この攻撃力はかなり魅力ですね。上手にインパクトしてネットを越えれば、威力あるプッシュやミート、ドライブが打てる気持ちの良い反発力です。

軽打
 打球感は柔らかいので安定しますね。あと楽に相手の台に返球できます。

ロングボールやラリーでのドライブ
 ガツっと回転量のあるドライブは感覚と技術が必要ですが、軽打同様にとても安定します。

対下回転に対するループドライブ 
 弾むので角度などを調整すれば、入れるだけならかなりやりやすいです。Tenergy05FXの時はやりやすくて、スピンアートだと少し球離れが速くて難しかったです。

対下回転に対するスピードドライブ
 柔らかいラバーの方がやりやすかったです。しなるので、うまく打てると打感に関係なく凄いボールが入る感じがありました。

ミート(スマッシュ)
 スピードはピカイチですね。特に硬いラバーの時は良かったです。Tenergy05よりスピンアートで弾く方がF粘着との差がついて良かった印象です。特にイボ高などで、浮いたがボールに不規則な回転が残っている時のミートは水谷隼ZLCとスピンアートが一番良かったと思います。Bは硬い方が弾くことが多いので打ちやすいですね。

ブロック
 慣れてくるとブロックも安定しますが、慣れが必要です。球離れも速いのでドライブ回転もかけづらく、安定しづらい印象です。中陣くらいからフィッシュでつなぎつつ裏から盛り返すのはかなりやりやすいですね。だから中陣くらいに下がってFはドライブ、Bはミート、っていうラリー展開がしやすかったです。このラケットの最大の売りの一つは、中陣でも余裕でミートで点数を狙える球速です。守りに回ったら少し下がるのが良いと思います。

ツッツキ
 回転をかけてかつ台上におさめるのが難しいです。ほとんど擦るだけ、回転10、スピード0くらいのイメージで回転をかける必要があると思います。むしろアウターラケットは、ナックル系、流し系のやや速い払いで深く押し込んでいく方がいいんじゃないかと感じます。

チキータ
 横回転による変化は少ないと思いますが、入れやすかったです。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 Inner Force Layer ZLC(インナーフォースレイヤーZLC) > 水谷隼ZLC > 水谷隼SZLC

スピード
 Zhang Jike ZLC(張継科ZLC) ≧ 水谷隼ZLC > Timo Boll Spirit(ティモボルスピリット)

飛距離
 水谷隼SZLC > 水谷隼ZLC > 張継科ZLC

粘着ラバーとの相性
 インナーフォースレイヤーZLC > 張継科ZLC > 水谷隼ZLC

その他
 このラケットは全体的にごまかしが効く感じがあって、質は下がるけどそれっぽい感覚で打てればまずまず相手のコートに返球できました。一方でこれは行っただろ!って打感なのに、オーバーミスやネットミスすることもありましたね。回転をかけやすいですが、下手だとかけられない時があるためだと思います。

レビュー Fortius FT(フォルティウスFT)

説明

 スポーツメーカーの大手、mizuno(ミズノ)が販売する標準的なパワフル系7枚合板ラケット、Fortius FT (フォルティウスFT)のレビューになります。FTはFine Touchの略になりますね。察しの言い方はわかるかもしれませんが、ミズノは過去にFortius(フォルティウス)というラケットも販売してましたがフォルティウスは廃盤となりました。過去の情報を拝見する限りどうやらフォルティウスFTよりも硬質でスピードの出るラケットだったようです。そのフォルティウスよりも、より打球感を良くしたラケットがフォルティウスFTということでしょう。
 木材構成は心材がAyous(アユーズ)、Hinoki(ヒノキ)2枚、アユーズ2枚、Limba(リンバ)2枚の計7枚という構成になります。オール木材ですので、メーカー公表値(重量92 g、板厚6.4 mm)よりも重い/軽い、厚い/薄いなどの個体差が結構ありますので、インターネット販売なら重量や板厚指定、できるのであれば卓球ショップで板厚や重量を確認してから購入した方が良いでしょう。各社の7枚合板ラケットの比較表を今後作ってみたいと思ってます。本稿で強調させていただくことは、一般男子選手でもずしりと重いと感じる本格的なパワフル系7枚合板ラケットで、定価7,600円というまずまずのリーズナブルなラケットだということです。
 現在はサブラケットですが、本職ラケットとしても使用してました。ラケットスペック重量:93 g (届いた時は89-90 gくらいでした。汗や水分、そして接着剤を吸ってだいぶ重くなってしまいました。)板厚:6.5 mm (公称値6.4 mm)で少々個体差を受けておりますね汗。ラバーなしで球をつくと意外に高い音がなります。弾みもまずまずです。結構良いラケットなんですよね。扱いやすくて、威力やパワーも出て、回転もかかって、と非常にバランスの取れた7枚合板ラケットになります。

フォルティウスFTの3つの特徴

1. 広ブレード面積で先端重心/7枚合板重量級ラケット!
 →攻撃時は遠心力が活かせるパワフルさ!
 →守備時はブロックがど安定!

 公表のブレードの長さは縦158 mm、横150 mmになります。ちなみに日本メーカーButterfly(バタフライ)やVICTAS(ヴィクタス)のブレード面積は主には縦157 mm、横150 mmがメインになりますね。ブレード面積について今後まとめていきたいと考えてますので、お待ちください。ちなみに、Hurricane Long 5(キョウヒョウ龍5)やHarimoto Tomokazu Inner Force(張本智和インナーフォース)シリーズのラケットはブレード面積が広いです。ブレード面積が広くなることで、ラケットの重心は明らかに先端へと移りますね。ミズノのフォルティウスシリーズでは、縦は158 mmで横は150 mmと一般的なブレードサイズよりも縦だけ長くなっています。このブレードサイズは特徴的(もちろんフォルティウスFTだけのブレードサイズではなく、TSPのSWAT(スワット)シリーズもこのサイズです。)だと思います。より先端重心になるような設計としているのだと思います。なお、バタフライのラケットは一般的なブレードサイズが多いですが、グリップを空洞にしたり逆に重くしたりすることで重心をコントロールしているようです。
 先端重心になることによるメリットは、より遠心力を効かせることができるので威力のあるボールが打てるようになります。その反面デメリットとして、ラケットが重たく感じます。切り返しも遅くなる(ように感じる)と言われています。個人的にはラケットが重たく感じるとともに、7枚合板らしいしっかりとした板厚がある分、相手の強打に対し押されにくいと感じるので、ブロックも安定するようになると感じました。

ラケットのブレードサイズと重量

2. 上板リンバの万人受けする打球感!

 このラケットは上板にLimba(リンバ)材をもちいており、とてもグリップ感を感じます。このリンバを上板に採用したラケットは、非常に好まれる打球感となるので人気ですね。自分もかなり好みの打球感ですね。リンバを上板に採用することで、スイングスピードに左右されにくく融通が効いて咄嗟のボールにも強くなると感じます。特にバックハンドがやりやすい印象があります!

3. フォルティウスFT. ver. D以上の重量と合板らしい癖球!

 公表のラケット重量はver. Dよりも重いです。このため、扱いにはエネルギーやパワーは必要ですが、その分威力のある合板らしい癖球が出しやすいと言われています。実際ラケット重量は92 gと重いので、それだけでも威力が出しやすいと思います。

おすすめのラバー組み合わせ

フォアラバー

V>15 Extra

 重量は重いですが、V>15 Extraの硬さをフォルティウスFTのリンバの上板によって扱いやすくなります。フォアカウンターは、スマッシュ、ドライブ、どちらもやりやすい組み合わせと言えるでしょう。扱いにくいとかサーブが切れないと感じるなら、V>15 Stiffなど硬度を下げるのが良いと思います。

Tenergy 05(テナジー05)

 V>15 Extraでは重量が重いと感じるのであれば、バタフライのラバーがおすすめになります。テナジー05はグリップ感も強いので、回転がかけやすい組み合わせとなって扱いやすくなると思います。ループドライブやドライブの引き合いではとても頼りになる組み合わせだと思います。

Hurricane NEO III(キョウヒョウNEO3)

 7枚合板ということで木材系ラケットですので、粘着ラバーともよくあいます。特に癖球が出やすい組み合わせなので粘着ラバーを使おうと思うなら粘着ラバーの強みが活かせると思います。キョウヒョウのような硬いラバーでもどのように扱えば良いかわかりやすい組み合わせだと思います。

バックラバー

 Fastarc G-1(ファスタークG-1)

 かなりオススメなラバーがファスタークG-1です。ドイツ製ラバーらしい扱いやすさや癖球の出やすさを維持しながら、ラケットもラバーもグリップ力のある用具ですので、かなり回転をかけやすくてド安定します!ラケットを使いこなせれば回転量や威力も得られるので、レベルを問わずオススメできるラバーだと思います。

 Rozena(ロゼナ)

 回転量はそこそこで、自分の球にして返球するというよりは、扱いやすさとブロックの安定感、スピードが欲しいならロゼナだと思います。個人的にはラケットもラバーも柔らかいもの同士の組み合わせなので、回転の影響を受けやすくレシーブは難しいと感じましたがその分、ブロックやラリーはド安定しますね。また練習量を維持できるなら、成長できる組み合わせだと思います。

 Rigan Spin(ライガンスピン)

 試合でのミスを減らせる扱いやすさを求めるのであればライガンスピンですね。球質や威力は落ちますが回転は変えやすいのでとても扱いやすいです。バックはつないで、フォアで仕留めるという方にオススメします。

各技術レビュー

フォアハンド

軽打
 カーボン系ラケットと比較するとわかるレベルの弧線を描きます。とても安心感のある放物線を描きますね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 軽打で感じる放物線がより大きくなると言えば良いでしょうか。カーボン系ラケットと比較してもボールが上へと進みやすいと感じます。安心感を感じますね。威力を出すなら、かなりボールへぶつけるように、ボールをつぶすように、打球した方が良いかもしれません。

面を開いたドライブ
 柔らかいので、かなりぶつけても回転がかかる感じがあります。ラケットが柔らかすぎるので、逆に感覚を掴みにくいかもしれません。威力や回転量のMax値も少し低いと感じてしまいました。扱いやすいラケットですので致し方ないかもしれません。その分、打ち損じも少ないと感じました。

対下回転に対するループドライブ
 もの凄い安心感でした。このラケットならミスしづらいですね。なぜミスしにくかいと感じるのかというと、スイングスピードが多少遅くても回転がしっかりかかるので、角に当てにくいためです。硬めのラケットだとある程度のスイングスピードが必要になるので、できるだけ引きつけたくなるのですが、そうすると咄嗟の変化についていけないことが少なくありません。結果的に角に当てやすくなります。しかしフォルティウスFTまたはフォルティウスFT系のラケットで角に当てるミスの印象が非常に少ないです。おそらく、スイングスピードの許容の幅が広いからだと思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 組み合わせたラバーやラケット重量にもよりますが、かなり打ちやすいですね。素晴らしいです。この安定感は武器になりますね!

カーブ/シュートドライブ
 少し浮きやすいと感じるので、相手のミドルへと伸ばすように使うと活きると感じました。あと戻りたい時なんかにもすごく良い技術になると思います。

ブロック
 安定しますね。押されないです。

カウンタードライブ
 カーボン系ラケットよりも明らかに融通が効きます!そこはメリットですね。一方で威力やきれは少し落ちるかもしれません。また回転の影響も受けやすいので、個人的にはカウンターのしやすいラバーを貼ることをオススメします。

ストップ
 これはやりやすいですね。打点を落としてのストップが好印象でした。相手に逆をつかれても慌てず対処できる心の安心感がありました。

ツッツキ
 少し柔らかいので、思い切り切りに行くのは難しいと感じました。ツッツキが切りにくいので、ドライブ強打はくらいやすいと感じます。コースをしっかり狙って打点も早めにして相手に余裕もって打たれない工夫が必須ですね。

フォアフリック
 やりやすいです。ボールをしっかり掴むので乗せ打ち的な打ち方も少し回転をかける打ち方もどちらもやりやすいと思います。

サーブ
 しっかり切ることができますが、柔らかい分浮きやすいです。打球点は低く台スレスレで出すようにした方が良いと感じました。

バックハンド系

軽打
 やりやすいです。特にアクティブブロックにはならないレベルの、ボールを打球してから少しドライブ回転をかけるようなバックハンドが安定します。基本的にはブロックもラリーもこの打ち方でド安定するので、安心感が半端ないですね。良いラケットです!

ロングボールやラリーでのドライブ
 ドライブは少し手首を効かせて遠心力をうまく使った方が威力のあるボールが打ちやすいです。でも自分は手首を使うと打球点がブレやすくて、またフォルティウスFTも重く感じるので、練習ではできますが、試合ではあまり多用できなかったです。ラケットが重いので、バックハンドグリップ(親指と人差し指の間とラケットの間を離して、親指を立てて握るグリップ)にするとやりやすいと感じました。

対下回転に対するループドライブ 
 ラケットが重いので容易ではないですね。手首だけで打つと不安定になりやすいので、しっかり体を使って打つと安定すると思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 正直、自分の実力では難しかったです。しっかり体と腰を使ってラケットを引っ張るように打つと良いと思います。

カーブ/シュートドライブ
 打感は柔らかいので、シュート系よりはカーブ系の方が安心感はありました。威力はシュート系の方がボールをつぶすように打ちやすいので出しやすかったです。

ブロック
 安定しますね。少し球離れが遅い印象もあるので、打球点を早めで捉えてプレッシャーをかけれるならかけた方が良いと思います。弧線を描きすぎる感じですね。上手な方ならカウンターを狙った方がいいと思います。

カウンタードライブ
 ミート系もドライブ系も安定します。自分は手首を使うとラケットが重いので打点がブレてしまい安定感が減りました。どちらかというとラケットを固定してミートか押すようなやり方の方がやりやすかったです。上手い方なら上手にラケットを引っ張ってしっかり回転をかけるドライブの方が威力と安定感が両立できると思います。

ストップ
 やりやすいですね。どんなラバーでもストップしやすいです。ただ回転量は減る印象を受けたのでチキータやフォアフリックが上手い人には要注意かもしれません。

ツッツキ
 シートだけで切ろうとした方がいいですね。あまり柔らかいラバーだと切れないかもしれないです。

チキータ
 やりやすいですが、棒球も出やすいのでしっかり回転をかけることを意識した方がいいと思います。やはりバックハンドグリップでチキータした方がやりやすいと感じました。

サーブ
 遠心力を利用した方がいいサーブが出ると感じました。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 張継科ZLC > フォルティウスFT ver. D ≧ フォルティウスFT > 水谷隼SZLC

スピード
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > VIrtuso+ (OSP)

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 フォルティウスFT ≧ フォルティウスFT ver. D > 水谷隼ZLC > 張継科ZLC

粘着ラバーとの相性
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > 水谷隼ZLC

その他
 合板ラケットですので、個体差は激しいですが、その分リーズナブルなことが嬉しいです。多分5000円台で購入が可能だと思います。

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レビュー Fortius FT ver. D(フォルティウスFT ver. D)

説明

 スポーツメーカーの大手、mizuno(ミズノ)が扱うトップ選手用のハイエンドラケット、Fortius FT ver. D (フォルティウスFT ver. D)になります。日本男子代表だった大島選手用に、世界で戦うために新たにmizunoで開発された7枚合板+アウター特殊素材ラケットになりますね。現行の7枚合板として扱いやすく弾みもあるFortius FT(フォルティウスFT)の合板構成をそのまま継承しながらアウターに特殊素材を採用しています。中心からアユーズ材、ヒノキ、アユーズ材、特殊素材、リンバ材の構成で、特殊素材はDual Webという高強度ポリエステル繊維を採用しています。DはDual Webのことをさしカーボンのような際立った弾みを付与するのではなく台上の繊細なプレイには木材らしさを維持しながら後陣からの強打時などには特殊素材らしい弾みをサポートする素材だそうです。Dual Webという特殊素材を採用したラケットは今までにありませんでした。

 ケミカルの知識からコメントすると、ポリエステル(Poly ester)は化学構造としては、アリレート(Arylate)と類似構造で、ザイロン(Zylon)も類似といえば類似です(正確には、ザイロンはより分子間結合が強い構造を有します)。従いまして、Butterfly(バタフライ)のTimo Boll ZLF(ティモ・ボルZLF)などに近い打球感だと思います。廃盤になってしまったバタフライのBISIDE(バイサイド)というアウターにアリレートを配したラケットと打球感はかなり近いと感じました。バイサイドは自分が中学生の時にかなり使い込んだラケットなので、このフォルティウスFT ver. Dも、なんの違和感なくすぐに使いこなすことができたと感じました。アウターにアリレートやザイロンなどのファイバー材料を採用した7枚合板+特殊素材ラケットといえるでしょう。

フォルティウスFT ver. Dの特徴

1. フォルティウスFTから継承した
・広ブレード面積で先端重心/7枚合板重量級ラケット!
 →攻撃時は遠心力が活かせるパワフルさ!
 →守備時はブロックがど安定!

 フォルティウスFTとほぼ変わらないブレード設計ですので、フォルティウスFTの特徴がそのまま継承されていますね。広ブレード面積で、先端重心/重量級ラケットの特徴がそのまま現れています。
先端重心なので、スイングの仕方にもよりますが、3球目など攻めに転じたときの一発の威力はとてもパワフルです!角にあて安くはなりますが、フォアなら人差し指を少し立てるようにすると、バックなら手首を強く使うと、威力抜群のボールが打てるようになりますね!
重たいラケットですので、守備時には相手のボールに押されづらくブロックが非常に安定します。7枚合板を使うメリットでもあります。
攻撃も守備も7枚合板らしい特徴があふれるラケットになりますね。

2. フォルティウスFTから進化した、上板リンバ×板厚6.4 mm × Dual Webによる球持ちと回転性能!

 大島選手が、打球感を損なわず後陣からの威力を求めた結果、フォルティウスFTとほぼ変わらない打球感と扱いやすさを維持したまま、アウターに配したDual Webによって、フォルティウスFTから進化した特徴が現れていると思います。非常に安心感のある上板リンバ系の球持ちを維持したまま、しなやかさとタフさを感じるDual Webがアウターに入ることで、軽打から強打までしっかりとした球持ち感、グリップ感、と安定した高い回転量が得られます。フォアもバックもしっかり回転をかけてドライブの回転によって安定させることができます!感覚的にはフォルティウスFTよりも回転量が増えたと感じました。また攻撃的なブロックも容易に安定するのがとても良いですね。7枚合板らしいブロックが可能で、Dual Webが邪魔することはなく、むしろブロック時にブロックをサポートしてくれている部分も感じるので、とてもやりやすいです。
 板厚6.4 mmは7枚合板の中では、バランスの取れた板厚で、厚過ぎず薄過ぎず、ちょうど良い板厚だと思います。回転性能を損なわず、飛距離も出過ぎないと感じますね。最大の威力やスピードはSK7やもっと厚い7枚合板の方が出ると思いますが、その部分をDual Webが入ることでフォルティウスFT ver. Dでは、より安定した回転量とスピードが得られます。

3. Dual Webによるスイートスポットの広さ!

 フォルティウスFT ver. DはフォルティウスFTと比較して、さらに良さを感じるのがスイートスポットの広さです。自分は特にバックハンド系技術のやりやすさとスピードが増し、打ちミスや打ち損じが減りました。木材系ラケットはどうしても角やスミに当たったときのボールの飛び方が、ラケットセンターで打った時とで、異なると感じます。このフォルティウスFT ver. DではDual Webが入ったことで、球は揃いやすくなったかもしれませんが、バックハンド系の技術の質は明らかに上がったと感じます。先端重心で振り遅れや、つまることも多くなりやすいラケットですが、その部分をスイートスポットの広さで補えるようなラケットとなっていると思います!

おすすめのラバー組み合わせ

フォアラバー

 基本的には木材系ラケットですので、どんなラバーもあいます!大島選手が使用されているButterfly(バタフライ)製Tenergy(テナジー)シリーズやミズノのQシリーズとあいます。また過去にHurricane(キョウヒョウ)系を使ったことがありますが、あいますね!ミズノのカタログでは打球感はハードになりますが、個人的に上板リンバでとても柔らかいラケットだと感じます。従って特にフォアは、硬いラバーと組み合わせる方が威力やスピードが出て好きですね。

Tenergy 05 Hard(テナジー05ハード)

 テナジー05ハードを挙げさせていただきました。大島選手が張本選手に勝利した全日本選手権時にフォア側で使っていたのがテナジー05ハードになりますね。フォアドライブは威力が出ますし、中-後陣からの繋ぎのドライブでも失速しないスピードと回転量が得られます!またテナジー05ハードとあわせることで非常にサーブの質が上がると感じました!ラバーが硬くて弾むので、球足の速い横下回転サーブや、さらに球足の速いナックルサーブなど相手にチキータや回り込みを許さないサーブが出しやすいです。また05ハードなので回転量も豊富ですね!穴のない組み合わせで、しかもとても使いやすく、フォルティウスFT ver. Dを使うのであれば是非試して欲しい組み合わせになります。05ハードは重いですが、Tenergy 05(テナジー05)では球質や威力不足を感じました。ほぼ木材系ラケットですので、スイングできる範囲でハードなラバーがあうと思います。05ハードはハードなラバーの中ではまだ軽いラバーですので、おすすめです!

Hurricane NEO III Blue Sponge(キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)

 過去、メインで省チーム用のキョウヒョウNEO3ブルースポンジをフォア面に使用しておりました。やはり柔らかさを感じるので、硬度は41°でも良いと思います。回転量の多いループドライブが武器になりますね。ほぼ木材系ラケットですのでキョウヒョウとの相性も抜群です!自分で弧線を描いてあげればドライブもねじ込めますし、スピードドライブも面を開いて打つことで、勝手に回転がかかって弧線を描く感じもありました。唯一、後陣からは威力不足を感じやすい組み合わせでした。

Q5(キューファイブ)

 mizunoはQシリーズの開発のベースに、このフォルティウスFT ver. Dを使っていると思いますので、抜群にあいますね。高度としては少し硬さを感じないかもしれませんがその分扱いやすくて良いと思います。大島選手はバックに使用していますが、フォアでも十分使えると思います。少し回転量を得るには技術が必要ですが、グリップ力の強いラバーですので、ツッツキや台上が思ったより好感触なんですよね。一緒に開発されたせいか、フォルティウスFTなどの先端重心ラケットにあうスイングの方が回転がガッツリかかる印象があります。台上がやりやすくて威力が出せるのはメリットのある組み合わせだと思います。

バックラバー

 ラケットがパワフルな7枚合板なので、ラリーは良いですが、結構弾む印象があります。どちらかというと、自分は弾まないラバーを合わせていましたね。ラケット重量とも相談ですが両面粘着ラバーでも面白いかもしれません。また本レビューでは書きませんが軽く触った印象として表ラバーも感触が良かったです。mizunoの表ラバー、Boosterなどが弾みも得られるので良かったですね。先端重心のラケットですので、手首を痛めやすいのも事実です。そのことを考慮して少し軽いラバーと組み合わせても良いかもしれません。

Fastarc G-1(ファスタークG-1)

 抜群の相性だと思います!重過ぎないので、手首に負担もかかりにくいですし、スピン系テンションとしてのチキータやバックハンドドライブもしっかりおさまって良好です。しっかり回転もかかるし、ラリーでも威力を損なわず、ミート系も良好です。ドイツ製ラバーですので、ブロックや凡ミスも減りやすく扱いやすいですね。あとは使う人の腕次第となる組み合わせでもありますが、オールラウンドなプレイに適した 至上の組み合わせだと思います。

Omega VII Pro(オメガ7プロ)

 XIOM(エクシオン)のドイツ製ラバー、オメガ7プロになります。少し重くなるのですが、威力ややりやすさは申し分ないですね。ラバーもそこまで硬くないので、安定感は申し分ないと思います。チキータ、バックハンドドライブなど安定した回転量と威力が得られます。重量が重い分、ブロックの安定感や、しっかり打てた時の威力は素晴らしいですね。

Spin Art(スピンアート)(廃盤)

 過去自分がメインで使っていた時にバックハンド側で使っていたのがスピンアートになります。レシーブ重視の組み合わせで、チキータ、バックハンドドライブ、ツッツキ、どれもぶっ飛ばず回転をかけて安定して返球できるやりやすさがあります。ラリーで少し威力不足を感じる部分もありますが、まずまずの威力が得られる組み合わせだと思いますね。

各技術レビュー

フォアハンド系

軽打
 安心感のある打球感だと思います。ラケット自体は重たいので腰の回転を利用して打った方が楽だと思います。板厚と7枚合板ですので、飛距離は結構出ますね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 フォルティウスFTと比較して弧線が少し攻撃的になると思いました。グリップしている感じを強く感じるのでドライブをミスする気がしません。

面を開いたドライブ
 ブレードが大きいので、小回りは効きにくいのがネックですが面を開いて遠心力を効かせると威力あるドライブが弧線を描いて深く入ります。凄いスピードドライブが打てるんですよ!やはり7枚合板+特殊素材なので、この抜群の威力のドライブが打てるのはプレイしていて楽しいですよね。フォルティウスFTは木材ラケットなので、後陣からだと少し弾いて飛ばしてやる必要がありましたが、下がって後陣からでも回転を乗せたスピードドライブが出ますね。

対下回転ループドライブ
 自分としては一番やりやすい技術がこの対下回転ループドライブでした。めちゃめちゃグリップしてくれて良いですね。あと、フォルティウスFTからDual Webが入ってより回転量が増えた気がします。硬さがあるからでしょうね。スイートスポットも広がったので、安定感もありました。

対下回転スピードドライブ
 木材系ラケットの良いところだと思うのですが、結構スイングが雑でもスピードドライブが安定して入ります。面を開いてガバッと持っていくことで良いドライブが打てますね。ここぞという時に3球目や4球目で一発を狙えるラケットです。

カーブ/シュートドライブ
 カーブ、シュート、なんでも来いって感じでした。このラケットブレードは本当に打ちやすいです。

ブロック
 スピードボールを押されず、しっかり止められるのがいいですね。ループなど回転量のあるボールに対するブロックは球質によってはふかしやすいので、注意が必要だと思います。

カウンター
 球持ちが良いので上書きしやすいです。ラケットも重いので、前陣カウンターよりは後陣カウンターの方がやりやすいと思います。全陣でカウンターするならDignics(ディグニクス)系のラバーの方がやりやすいと思います。

ストップ
 もう少し硬いと嬉しいなって思う打球感です。それでもストップはフォアもバックもいい感じでした。

ツッツキ
 特殊素材系ラケットと比べると抜群のやりやすさですね。ラバーによってはブチッと切ることもできます。

フォアフリック
 硬い方が自分は好きですが、回転をかけるように打つと安定しました。

サーブ
 柔らかいので少し浮きやすいです。そこは気をつけてください。カーボン系特殊素材ラケットと比べるとおさまりやすくて、出しやすいと思います。

バックハンド系

軽打
 ブレード面積が広くDual Webが入って、とても良いですね。スイートスポットが広いのでラケットの打球位置に気を使わなくて良くて気にせず思い切り打つことができると感じました。

ロングボールやラリーでのドライブ
 振り遅れやすいですが、その分、威力は抜群です。手首を使うことで回転量も安定すると思います。

対下回転に対するループドライブ
 バックハンド技術全般、手首が肝になりますが、しっかり手首を効かせることができると回転量もあって安定しますね。

対下回転に対するスピードドライブ
 パワーを要しますが、抜群の威力です。手首を痛めやすいのでどちらかというと腰と足を使った方が良いと思います。

カーブ/シュートドライブ
 少し小回りが効きにくいので、カーブドライブの方が打ちやすいですね。ラケットヘッドを落とすだけで良いのでやりやすいです。

ブロック
 ブロック技術が極めて安定します。当てればとにかく入れることができる高い守備力がこのver. Dにはあります。多分特殊素材Dual Webと上板リンバ材というのが良いのだと思います。Dual Webでスイートスポットが広がり、リンバ材で球を持ち打球が上がる。ラリーでの安心感も素晴らしいです。

カウンタードライブ
 先端重心なので、カウンタードライブは結構難しいですね。どちらかというとアクティブブロック気味に全てドライブ回転を少しかけるようなブロックが良かったです。手元で抜群の伸びはありませんでしたが、安定感と質を維持できました。

ストップ
 カーボン系特殊素材入りラケット比べると抜群にやりやすいですね。

ツッツキ
 相手に打たせないくらいブチっと切ることができます。

チキータ
 ラバーにもよりますが、木材系の打球感でとてもやりやすいです。手首を使うことで回転量も得られると思います。

その他

 フォルティウスFT ver. Dは、これだ!と思って3本所有しています。今は実はこれだと思っておらず、3本が眠っている状態です涙。ストレートが2本、フレアが1本ですね。ストレートは、一本は88 gで若干、板厚が6.3 mmと公称6.4 mmよりも若干薄いものでしたが、それが逆に回転量を増やして飛距離を抑えてくれて良かったように思います。ラケット重量はそこまで重くないのですが、先端重心なんで威力や回転量は、上手に打てると素晴らしいものがありますね。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > Mizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)

スピード
 Zhang Jike ZLC(張継科ZLC) > フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > 張継科ZLC > 水谷隼ZLC

粘着ラバーとの相性
 フォルティウスFT ver. D > フォルティウスFT > 張継科ZLC

https://amzn.to/31c90I3

レビュー Zhang Jike ZLC(張継科ZLC)

説明

 Zhang Jike ZLC(張継科ZLC)は2013年4月にButterfly(バタフライ)より販売された中国の張継科選手モデルのラケット4種のうちの1つになります。実際に張継科選手が今でも使用されているラケットは実はVISCARIA(ビスカリア)というArylate Carbon(アリレートカーボン、ALC)を採用したラケットになります。ビスカリアについての説明を書き始めると少々長くなりますので、今後別の記事で書かせてください。ここで触れることは、主に張継科選手モデルについてになります。
 張継科選手モデルの4本のラケットは、それぞれ採用されている特殊素材が異なっており、Super Zylon Carbon(スーパーザイロンカーボン、SZLC)、Zylon Carbon(ザイロンカーボン、ZLC)、Arylate Carbon(アリレートカーボン、ALC)、Tamca 5000T5000)の4つになります。
 なおバタフライのラケットは、基本的にはグリップにラケット名が書かれていて、わかりやすいのですが、この張継科選手モデルは特殊素材が記載されておらずわかりにくいです。違いはグリップの中心でクロスしている柄の色になりますね。

グリップのクロスしている柄の色

 SZLC: Gold(金色)
 ZLC: Gray(灰色)
 ALC: Blue(青色)
 T5000: Purple(紫色)

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 ビスカリアとほぼ同じでグリップデザインのみ変更したとされるのが、Zhang Jike ALC(張継科ALC)になると言われているます。張継科ALC類似のコンセプトで特殊素材を変更したものが残りの3種だと思われます。

画像はバタフライさんのホームページより引用させていただきました。

https://www.butterfly.co.jp/

 各ラケットを試打できているわけではありませんが、張継科モデルラケットの共通する特徴は以下の3つだと思います。

張継科モデルラケットの特徴

1. 上板にKoto(コト)材を使用のアウター特殊素材系ラケット

 おそらく張継科モデルラケット4種全て上板にはコト材と呼ばれる硬めの木材を使用していると思います。そして上板のすぐ内側の位置、アウター位置に特殊素材カーボンを配したラケットになります。どの特殊素材も張継科選手モデルに採用される特殊素材はカーボンを有する、軽くて硬くて弾む特殊素材になります。よって上板の硬いコト材+特殊素材カーボンという組み合わせのため、かなりハードな打球感のアウター特殊素材系ラケットと称することができるシリーズになります。
 この上板コト材+アウター特殊素材カーボンは好みの別れる打球感で、過去katsuo000は得意ではなく、むしろ苦手と感じる打球感でした。katsuo000が上板コト材+アウター特殊素材カーボンラケットで、硬いと感じたラケットはTimo Boll Spirit(ティモ・ボル スピリット)になります。板薄アウターカーボンラケットの王道のラケット、ティモ・ボル スピリットは上板コト材+アウターALCのラケットになりますが、やはり上板が硬くて、個人差はありますが球持ちを感じにくく、球離れが早い、と感じやすい木材だと感じておりました。ただ、現在はある程度慣れてきて、むしろ張継科ZLCよりもティモ・ボルスピリットは柔らかいラケットであると感じています。
 そして張継科ZLCからこのラケットシリーズは次のようになるのではないかと想像しています。それは、相手の回転に影響されにくいこと、回転量が高いこと、攻撃的なボールの威力(スピードや回転量)が高いこと、になります。硬めのプラスチックボールへと変わってきて、ボールの回転量が40 mmの時からさらに落ち、シートだけで回転をかけるような回転量重視のループドライブでも、上板の柔らかいラケットでは回転量が落ちて、簡単にブロックされたりカウンターを食らったりするようになりました。今ではブレードの薄い上板コト材のラケットでないと、回転量が少なすぎてループドライブを打つと狙われそうだと感じてしまいます。ブレードの薄い上板コト材+アウター特殊素材カーボンのラケットは、確かに台上でのタッチの難しさは感じますが、それ以上に相手の回転の影響を受けにくく、回転の上書きで相手の回転をキャンセルする力が強く、安定した回転量が得やすいと思います。

2. 粘着ラバーとの相性が良い

 粘着ラバー、特にHurricane(キョウヒョウ)系ラバーは、扱いやすさを求めるのであれば球持ちが感じやすい柔らかいラケット、例えば木材系ラケットの方が扱いやすくなります。しかしながら回転量とスピード、威力などを追究すると上板が硬く、かつ粘着ラバーのスピード不足を補うために、弾みやスピード性能の高い特殊素材ありのラケットと組み合わせていくことになります。ラケットによっては、粘着ラバーと相性の悪い特殊素材系ラケットも存在しますが、張継科選手の名前を冠したラケットは総じて粘着ラバーと組み合わせのできるラケットシリーズとなっているそうです。実際、張継科ZLCとキョウヒョウで試合に出たことありますが、普段の1.5倍くらいループドライブだけで得点できたと感じました。確かに難しさもありますが、使いこなせれば相性は抜群でしたね。その要因はおそらく、張継科モデルのラケットシリーズは全て板厚が薄く、しなりやすいラケットだからだと思います。
 上記のことを裏返すと、張継科選手モデルのラケットは万人受けするラケットではなく、中、上級者で一定の打球感覚を有した選手を想定したラケットになると思います。ある程度のインパクトとラケットのしなりを利用して安定して回転をかけることができるようになると、粘着ラバーの高い回転性能と、ラケットの高いスピード性能、が両立しやすいラケットシリーズと言えるでしょう。

3. 重心はグリップより

 張継科選手がバック主戦型の選手である、ということもあって、ラケット自体がグリップ側に重心があります。馬龍選手や大島祐哉選手といったフォア主戦型の選手のラケットは逆に先端重心のラケットになります。ブレードサイズを若干大きくすることで先端重心として遠心力による威力を出しやすいラケットと比較すると、張継科選手モデルのラケットはグリップ側に重心があります。張継科選手モデルのラケットはとてもバックハンドが打ちやすくかつ切り返しもしやすいのが一つの特徴だと思います。確かに、フォアよりバックハンドの方が振り抜きやすいです。現代卓球において、バックハンドの重要性が高まっています。バックハンドにウエイトを置いたり、バックハンドを苦手と感じるなら、張継科モデルのラケットを使うのは1つの選択肢だと思います。
 2020年4月現在で、katsuo000が検証できていないことについても触れておきます。バタフライのラケットは合板構成は同じでグリップだけ異なるラケットが多いなどと揶揄されることがあるのですが、実際katsuo000は、例えば、Timo Boll ALC(ティモボルALC)と張継科ALCの違いはグリップだけだと想像しております。ティモボルALCなどのボル選手の名前が冠されたラケットシリーズでは恐らく、グリップ内部を空洞化するなどして先端重心にしていることと、角ばったグリップ形状であることと聞いたことがあります。ボル選手もフォアとバックで比較するとフォア主戦型の選手ですし、先端重心のラケットはフォア主戦型の選手が好む傾向にあるので、納得のグリップ設計です。恐らくこのグリップ形状の違いだけだと思うのですが、実際のところは比較しないとわかりません。今後余裕があれば、Timo Boll ZLC(ティモボルZLC)や張継科ALCなどを手に入れて比較してみたいですね。

 張継科モデルラケットは人気のシリーズのラケットで、2020年現在もトップ選手が使用しています!例えば以下が知られています。

 Zhang Jike ALC(張継科ALC):戸上隼輔選手、松平健太選手、
                 黄鎮延(Wong Chun Ting)選手
 Zhang Jike SZLC(張継科SZLC):林ユン儒(Lin Yun-Ju)選手、
                  荘智淵(Chuang Chih Yuan)選手

 

張継科ZLCの2つの特徴

 続いて、張継科ZLCの特徴について言及させてください。2020年4月現在、張継科ZLCをメインラケットとして使用しており、ラバー比較などの目的で、ストレート(ST)、フレア(FL)、アナトミック(AN)の3種類のグリップ全て所有しております。どのグリップも丸いグリップなので、とても握りやすいと感じますね。

4. 上板硬めで板薄による超回転量

 先ほども触れましたが、上板にコト材を用いているので上板硬めで、かつ張継科選手モデルだけでなく、バタフライの特殊素材ありラケットの中で最も薄いブレードをゆうするラケットが張継科ZLCになります。5.5 mm!大雑把な話ですが、板が薄ければ薄いほど、回転をかけやすく回転量のMax値も高くなると思ってます。デメリットとして、その分、飛距離が出にくかったりパワフルなボールが出にくくなります。この張継科ZLCにしてから回転量が増えたと感じていて、特に良いのがループドライブになります。エゲツない回転がかかっていると相手の方に言ってもらえることが増えましたね。
 今は使っていませんが、キョウヒョウとの相性も抜群で、ループドライブを打てば相手は一度はミスしてくれました。このようにとても高い回転性能を発揮してくれるので、張継科ZLCが気に入っています。アウターカーボン系ラケットの中でも5枚合板よりの立ち位置のラケットが張継科ZLCだと思います。

5. アウターZLカーボン特有のハイスピード

 板薄の項で触れましたが、板薄のために飛距離不足やパワフルなボールとなりにくいと感じる部分はないわけではありません。しかしながら張継科ZLCでは、その飛距離や威力不足を特殊素材であるZLCによって補うことで、高いスピード性能、回転性能を両立していると感じます。ZLCは、ボールが相手のコートの深いところに入りやすいという特徴を有しているので、雑な表現ですが5枚合板のような回転性能と特殊素材らしいスピードと威力を両立したようなラケットになると思います。またALC系アウターラケットと比較すると、確かに球持ちは若干劣る印象ですが、その分、上板が硬くかつ板薄ですので、回転量の最大値は張継科ZLCの方が上で、またボールのスピードも速く、弾道もとても攻撃的で直線的と感じやすい弧線を描いてくれます。

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おすすめのラバー組み合わせ(あくまでも個人の感想)

フォアラバー

 ディグニクス系もキョウヒョウ系もあうと感じました。従ってほぼ全てのラバーがあうと言っても過言ではないでしょう。無限の組み合わせがあると思います。個人的にはこのラケットに柔らかいラバーを組み合わせると気持ち悪い感じがするので、基本的には硬めのラバーを合わせる方が好みです。

Dignics 05(ディグニクス05)

 現在メインで仕様しています。ディグニクス05の最大級の回転性能と張継科ZLCの高い回転性能が相まって、非常に質の高い回転のボールを出すことができます。ループドライブですら粘着ラバー顔負けの高い回転量が得られますので、武器にすることも可能ですね。また、ディグニクス05も張継科ZLCもどちらも高いスピード性能を持ちますので、後陣からでも威力の高いドライブが打てます。まるで有機溶剤を塗ったような威力が得られるのは、この張継科ZLCとディグニクス05の組み合わせ、特有の物だと思います。ディグニクス05は食い込みが感じにくいのですが、上手に食い込ませると回転量の強いスピードドライブも打てますので本当に気に入っています。また、寿命も格段に長く、しっかり管理すれば週一の卓球で三ヶ月から半年は使えると思います。テナジーと比較しても寿命が長いのは嬉しいですね。

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Hurricane NEO III Blue Sponge(キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)

 過去、省チーム用のキョウヒョウNEO3ブルースポンジをフォア面に使用しておりました。特に使いにくいと感じることはなく、回転量の多いループドライブは顕在で武器になりました。キョウヒョウとの相性も抜群ですね。強いていうなら自分の腕が不十分で、スピードドライブの回転量が少し落ちると感じました。組み合わせ的には最高ですので、腕が悪いからですね。台上は卒なくこなせ、ドライブは無敵感がある組み合わせです。唯一、後陣からは威力不足になりやすいので、そこがネックだったかもしれません。

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Tenergy 05 Hard(テナジー05ハード)

 こちらも相性良かったです。硬いのと硬いので、とても打球感がはっきりしますので、好みはわかれると思いますがフォアなら好感触でした。同じように、硬めのハイエンドラバー、andro(アンドロ)さんのRasanter R53(ラザンターR53)などのラザンターシリーズやJoola(ヨーラ)のRhyzer Pro 50(ライザープロ50)とも相性が良いと感じました。

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Dignics 09C(ディグニクス09C)

 ディグニクス09Cを挙げさせていただきました。このラバーはアウターカーボンラバーの方が相性が良いと感じるラバーでしたので、挙げています。実際、インナーカーボンラケットだと、少しスピード性能が落ちすぎる気もしました。ZLCである必要はないと思うので、ALC系アウターカーボンラケットと合わせることをオススメします!

バックラバー

 バックはやはり硬め硬めの組み合わせですので、しっかり選んだ方がミスは減ると思います。ドイツ系ラバーはとてもやりやすいと感じたので、紹介させていただきます。

Omega VII Tour(オメガ7ツアー)

 XIOM(エクシオン)のラバーになります。自分の腕が不十分でしたので、回転量は若干劣ると相手の方に教えていただきましたが、扱いやすかったですね。ツアーは少し硬めで重かったので、オメガ7のEuro(ヨーロ)とかPro(プロ)にするとさらに良いと思います。特にチキータとかバックハンドドライブ系がおさまりがよくて好印象でしたね。オメガ7ツアーは重くなったテナジーという印象で、シートでひっかけても回転がしっかり回転がかかるので、ループドライブは普通に実践的に使うこともできました。オメガ7ハイパーも使いやすかったですが、少しオーバースペックで、ボールが浅くなってしまいました。その分、チキータはとてもやりやすかったです。

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V>15 Extra(V>15エキストラ)

 VICTAS(ヴィクタス)のハイエンドラバーV>15 Extraです。なんと言っても一番チキータを入れやすかったですね。若干イレータというか、バックハンドフリック気味になりやすかったですが、回転の影響を受けにくくフリックしやすいラバーでした。ツッツキは浮きやすいと思いましたが中陣からでも十分打てましたし、シートが強いのでカウンターはしやすいと感じました。回転量以外の部分でやりやすいんですよね。またフォアにキョウヒョウやディグニクスを使っていると回転量の差が如実に出るので、回転量の差によるミスを誘うことができると感じました。一方で、V> 15 Extraは食い込ませた時に弾道が暴れるような癖球ボールが打てる部分もあってとても良かったですね。回転量の最大値の高いフォアラバーとの相乗効果を求めるならV > 15 Extraは組み合わさることで味が出ると感じました。

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Rasanter V47(ラザンターV47)

 ラザンターシリーズもとても好印象でした。特に良かったのが、V47です!扱いやすかったです!V47はスピード系ラバーのイメージが強いですが、全然スピン系テンションのラバーで、回転量のあるループドライブもできるし、柔らかいシートなので、比較的ブロックもいれやすかったです。ラリーでも回転量重視のドライブをするだけで攻撃的でスピード感のあるドライブが安定して入る感じがあって自分の腕にもマッチする硬度でよかったですね。V47でも十分回転量のあるボールが打てて安定感とスピードを感じられました。ラザンターの特徴はドイツ製ラバーの中でもシートが薄い分、しっかり回転がかかることだと思います。回転とドイツ製ラバーらしさを得られるラバーがラザンターだと思います。

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Dignics 05(ディグニクス05)

 初めて使ったときは使いにくいと感じましたが、最近使ってみたら、むしろ抜群に良かったですね。特徴としては、ツッツキがシートで切れるしストップもしやすいこと、カウンタードライブが打ちやすいこと、ラリーでのバックハンドドライブがとても直線的なのに安定すること、対下回転ドライブも威力と安定が得られるところでした。ただやはりバタフライラバーをバックに使うと、自分はちゃんとした体勢で打てず凡ミスも多いので難しいです。練習量が必要なラバーです。

各技術レビュー

フォアハンド系

軽打
 Mizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)と比較すると明らかに硬くて飛距離が出ないです。木材系ラケットと比べるとやはり打球感がハードですが、ここら辺は慣れが必要ですね。

ロングボールやラリーでのドライブ
 威力が出しやすいですね!硬いのですが、しっかり腕や手首をしならせて回転をかけることができるとスピードと回転のあるボールを打つことができますね!粘着ラバーでも非常に威力のあるドライブを打つことができますが、やはり回転以上にスピードのあるドライブがしやすいのはスピン系テンションラバーですね。逆にスピードもあってスピード以上に回転のあるドライブは粘着ラバーの方が出しやすいですね!

面を開いたドライブ
 ラケットがしなりやすいので、非常に威力のあるドライブが打ちやすかったです!粘着ラバーでもテナジーやディグニクスでも、非常に回転がかかってスピードドライブでもしっかり弧線を描いて沈み込ませることができました。

対下回転に対するループドライブ
 これもやりやすいですね!ブレードが薄いので非常に回転がかけやすいですね。粘着ラバーの方が弧線の低いループドライブを制御しやすかったです。ディグニクス05は少し高いボールになりやすいですが慣れれば低いドライブも可能ですね。

対下回転に対するスピードドライブ
 体が流れないようにしっかり踏ん張る必要はありますが、決まれば非常に良いスピードドライブがしやすいですね。

カーブ/シュートドライブ
 弾道が直線的のためあまり曲がる印象は少ないです。

ブロック
 意外とやりやすいです。ティモ・ボルスピリットよりもやりやすいと感じました。グリップが詰まっているからではないかと思います。逆にティモ・ボルスピリットはグリップが半空洞になっているそうなのでその分、相手のドライブに押されやすいと感じました。

カウンタードライブ
 スピード系のカウンタードライブがとにかくやりやすいですね。打球感が硬いので潰すようにぶつけると弾いてしまいやすいのでしっかりボールの上か斜め横をとらえた方が安定すると思います。

ストップ
 硬い打球感ですが慣れると結構しっかり止まります。ディグニクス05やキョウヒョウNEO3を使えばしっかりブチっと切れるので3球目強打は封じやすいと思います。

ツッツキ
 同じく切れますね。良いです。

フォアフリック
 あまり使わないのですが、球離れが速いので乗せるよりも弾くように打つ方が安定すると思います。思い切りが大切ですね。

バックハンド系

軽打
 はじめは難しいと感じました汗。ボールの横を捉えるように意識することで徐々に安定するように感じました。それでもやはり木材系ラケットやカーボンなしラケットの方がやりやすいと感じます。

ロングボールやラリーでのドライブ
 非常に直線的で攻撃的なボールになりやすいです。ただしボールは軽く感じます。

対下回転に対するループドライブ 
 体をしっかり入れて、ドライブをかけることで非常に回転量のあるドライブが打てるようになってきました。

対下回転に対するスピードドライブ
 こちらもしっかり回転をかけて飛ばすことを意識すると安定して打てるようになってきました。

カーブ/シュートドライブ
 やはり直線的なボールになりやすいので変化を感じにくいです。

ブロック
 やりやすいと思います。ただし、弾きやすいので柔らかいラバーだとなお良いと思います。

カウンタードライブ

ストップ
 弾まないので慣れてくると非常に安定します。

ツッツキ
 ラバーにもよりますが非常にやりやすいです。

チキータ
 少し飛距離が出やすいですが、グリップ重心でやりやすいです。

他ラケットとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 張継科ZLC > Inner Force Layer ZLC  > Mizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)

回転のかけやすさ
 インナーフォースレイヤーZLC > 張継科ZLC  ≧ Mizutani Jun ZLC(水谷隼ZLC)

スピード
 張継科ZLC ≧ 水谷隼ZLC > インナーフォースレイヤーZLC

飛距離
 水谷隼ZLC > 張継科ZLC > Inner Force Layer ZLC

レビュー Dignics 09C(ディグニクス09C)

説明

 Dignics 09C(ディグニクス09C)はButterfly(バタフライ)が2020年4月に新発売したラバーです。バタフライさんの主力商品といえば、Tenergy(テナジー)シリーズ10種、およびテナジーを超えるDignics(ディグニクス)シリーズ3種、の2シリーズ計13種のラバーになります。これらは世界選手権などの世界規模の大会へ出場する選手の半数以上が使用していることで有名です。どのラバーもスピン系テンションラバーに分類され、粘着性を持たないシートでスピンとスピードが両立されたラバーになります。一方、今回レビューするディグニクス09Cは、粘着シートを採用した粘着テンションラバーになります。

 バタフライが扱ってきた粘着ラバーは古くはTackiness(タキネス)シリーズと福原愛選手がフォア面に愛用したSpin Art(スピンアート)が挙げられるでしょう。タキネスシリーズはテンションラバーではないので、今回は割愛します。スピンアートはスポンジにテナジーシリーズと同じSpring Sponge(スプリングスポンジ)を採用しており、バタフライさんの分類において「粘着性ハイテンションラバー」でしたが、先日(2019年12月)廃盤が発表されました。個人的にスピンアートがかなり気に入っていた時期があり、メインでバック側に使っていた時もありました。そのスピンアートと同じ「粘着性ハイテンションラバー」であり、次世代ラバーとして、販売されたラバー、それがディグニクス09Cになります。

スピンアート(廃盤)のレビュー: https://katsuo000.com/review_spinart/

 ディグニクス09Cのプロモーションには、なんとドイツのトップ選手、40歳で今なお世界の最前線で活躍し続けるTimo Boll(ティモ・ボル)選手によるものでした。先日のヨーロッパ選手権(2021年)で8度目の優勝を修め、ヨーロッパ最強の皇帝、ティモ・ボル選手!そもそもディグニクス09Cの開発にはティモボル選手が深く関わっているようで、なんと7年もの長期間をかけて開発されたようです。ボル選手が「ずっとこんなラバーでプレーしたかった」とおっしゃるラバー、それがディグニクス09C、ということで嫌でも注目が集まるラバーになります。2020年3月末には流通が始まり、既に多くのレビューがYou tubeやブログなどで発信されています。
 また2020年1月にバタフライさんと電撃契約したドイツのDimitrij Ovtcharov(オフチャロフ)選手も、フォア面にディグニク09Cを使用しているそうです。ディグニクス09Cにラバー変更して直後のワールドツアーでオフチャロフ選手は、世界ランキング格上の選手、中国若手のFan Zhendong(樊振東)選手に勝利しました!この勝利は、ディグニクス09Cによるもの!、と宣伝したいバタフライさんの想いが伝わるような、オフチャロフ選手のインタビュー動画もYou Tubeなどで配信されています。これ以上ない宣伝となったと思います。

Dimitrij Ovtcharov選手の動画:https://www.youtube.com/watch?v=BK3w8t_LyJE

 卓球帝国中国では、若手左利きのエース、Lin Gaoyuan(林高遠)選手もバック側にディグニクス09Cを使用していますね!中国では、やはりDouble Happiness Shanghai (DHS)のHurricane(キョウヒョウ)シリーズが粘着ラバーとして君臨しています。流石にフォアに使用する中国トップ選手はいないようですが、中国選手が従来からバック側にバタフライのスピン系テンションを使用することがよくあり、ディグニクス09Cもその選択肢に入ったと言うことでしょう。

スピン系テンションと粘着ラバーの比較:

粘着ラバーの分類:

 また日本では、2021年1月の全日本選手権(天皇杯)を優勝した及川瑞基選手もフォアにディグニクス09Cを使用しての栄冠でした!確かな実績を築き上げていることがわかります。加えて日本のバタフライ契約選手の多くがディグニクス09Cを使用するようになりました。2021年7月には、イケメン選手松平健太選手やプロ転向した上田仁選手、高木和卓選手が両面に、また平野友樹選手や吉田雅己選手もフォアやバックに使用しています。若手の選手、世界ランキング日本トップで東京五輪メダルが期待される張本智和選手、インターハイおよび全日本選手権ジュニアの覇者戸上隼輔選手や2020年前日本選手権優勝の宇田幸矢選手らはスピン系テンションラバーですが、今後のジュニアの選手、松島輝空選手がフォア面に使用しています。新しい日本の卓球として粘着ラバーの時代が来るかもしれませんね!

 ディグニクス09Cの性能に関するバタフライのキーフレーズは「矛盾を乗り越えたラバーは、強い。」です。何が矛盾かというと、スピン系テンションラバーのようにスピードと弾みが得られるのに、粘着ラバーのようにストップが止まって台上が強い、ということだと思います。

公表性能値

 用具性能値からディグニクス09Cは、Tenergy 05(テナジー05)と同等のスピード、そしてDiginics05(ディグニクス05)などのラバーを超越する高いスピン性能を持つことがわかります。ディグニクス05を遥かに超えるスピン性能、ということでこれは嫌でも期待してしまうラバーだと思いました。
 また、バタフライさんはホームページ上で、アウター特殊素材系ラケットとの相性が良いということも発信されています。アウター特殊素材が好みのkatsuo000としては、嫌でも気になったラバーで、初めて予約購入させていただきました!

Dignics 09Cの重量と貼り

 ディグニクス09C特厚のラバー重量は約50 gでした。スピンアートやTenergy 05Hard(テナジー05ハード)と同じくらいの重量だと思います。全体的に高性能で軽量なラバーが多いのが、バタフライさんの特徴ですので、バタフライさんのラバーの中ではディグニクス09Cは重量級のラバーと言えるでしょう。

Dignics 09C(ディグニクス09C)
 Tacky High Tension(粘着性ハイテンション)裏ラバー
・スポンジ厚:厚(1.9 mm)、特厚(2.1 mm)
・スピン:13.0
・スピード:13.0
・Sponge硬度:44
・オープン価格(9,800円 + 税)
・78 g(切断前) → 50 g(張継科ZLCに貼って)

ディグニクス09Cの3つの特徴

限りなくテンションラバーに近い粘着テンションラバー

 食い込みがかなり良いので、限りなくテンションラバーに近い粘着テンションラバーだと感じました。最低限の粘着らしさを持たせつつ、ほぼスピン系テンションラバーと言って良いと思います。少なくともHurricane(キョウヒョウ)一筋の生粋粘着ラバー使用者は賛否が分かれると思います。個人の感想としては、ディグニクス09Cよりもテナジー05ハードの方が粘着っぽく感じます。よってこれも個人の意見ですが、粘着性ハイテンションラバーと思わずむしろ、高性能なスピン系テンションだと思って使った方が良いでしょう!
 また粘着ラバーをある程度使った経験から申し上げると、粘着ラバーらしい特徴である台上の止めやすさ対下回転を打球点を落としても弧線でスピードドライブを、ねじ込める打ちやすさは兼ね備えていると感じました。
 粘着ラバーとして考えた場合、明らかに弾みます。この弾む特性を活かして中陣からでもミート打ちでスピードボールを打つことができます。これは結構嫌らしくて、いい意味で回転量の差を生み出しやすいラバーだと思います。中陣からミート打法とドライブを併用することで回転量の差を生み出しやすいラバーだと思いました。ディグニクスやテナジーなどのスピン系テンションでも同じような打法は可能だと思いますが、ドライブの回転量が得られるディグニクス09Cであるからこそ、嫌らしさが際立つ打法だと思います。今までバタフライのラバー、テナジー05などは高性能ですが、ボールが揃いやすいと言われていました。技術力にもよりますがいい意味でボールに変化を与えやすいラバーに仕上がっていると思いました。

ディグニクスの中で一番ボールの弾道が急降下-急上昇する!

 確かに回転量13は伊達ではないと思いました。ドライブの引き合いなどでしっかり食い込ませたときのボールの台への急降下、台についてからの急上昇はえげつなかったです。テナジーでもそのような弾道は垣間みますが、ディグニクス05の方がより顕著で、ディグニクス09Cは最もエゲツない、急降下-急上昇する弾道だと感じました。これをコントロールできればかなり武器になると思います!恐らく、この急降下-急上昇する弾道がこのディグニクス09Cの癖球と言えるのでしょう。キョウヒョウの持つような、沈み込むような癖球はありませんでした。スピン系テンションラバーの最高峰の1つテナジーシリーズやディグニクスシリーズの癖球と同系統の癖球ということで、ディグニクス09Cはやはりスピン系テンションラバーですね!

ディグニクス05よりも扱いやすいディグニクス!

 くい込みの良いシートを採用したことで、ディグニクス05よりも明らかに扱いやすいラバーとなっていると思います。ディグニクス80も扱いやすかったですが、このディグニクス09Cも、万人受けすると感じました。スピン系テンションから粘着テンションへ移行したい人におすすめできるラバーだと思います。あるいはスピン系テンションだと思って使っても差し支えないでしょう。台上のやりやすさを維持したまま、ラリーでは必要最低限のレベルで弾みとスピードがあって、そこに十分以上の回転量が得られる粘着ラバーのようにミスしづらいラバーとなっています。ディグニクス05などはどちらかというと、テナジーよりも直線的で打ち抜きやすいラバーだと思いますが、ディグニクス09Cは一発で撃ち抜くというよりは、ミスがしづらくラリータイプにオススメしたいラバーになってますね。扱いやすい分、個人の感想としては、重量を気にしなければフォアよりバックにあうと感じました。

ディグニクス09Cの3つの課題

キョウヒョウのような癖球は出づらい

 上述と被りますが、キョウヒョウというラバーを好んで使用する粘着ラバーユーザーにとっては、ループドライブの癖球による得点力の低下を感じる可能性は高いと思います。もちろん、高い回転量の得られるラバーですので、十分ディグニクス09Cのループドライブは得点力のある打法ですが、ボールの沈み込みや癖球の嫌らしさはキョウヒョウの方が上と言って良いと思います。その分、キョウヒョウよりはスピードドライブは打ちやすいので、この辺りで差別化されると思います。

硬い

 硬さについて言及すると、ディグニクス09Cはシートはやや食い込みが良くて柔らかい分、スポンジは硬いラバーになっています。テナジー05ハードはシート形状も食い込みを感じにくい形状であり、スポンジも硬く、ラバー全体で硬いデザインになっています。ディグニクス09Cはシートは食い込みやすい分、テナジー05ハードスポンジよりもさらに硬くしている設計になっていると感じました。やはり人を選ぶ設計になっていますが、トップ選手の中にはバックハンドに使用する選手も登場しています。これはシートの食い込みの良さがあるためだと思います。

スピードが遅い

 打ち抜くがやや難しいラバーにもなっていると思います。アウターALCやアウタースーパーALCなどを使うことで初めて打ち抜けるような組み合わせになりますが、それはまさにトップ選手仕様になりますね。スピードを求めていくと、ラバーの味も出にくくなるようにも思いますので、この当たりが用具沼として卓人を誘い込もうとしているように思いますね。

各技術レビュー

フォアハンド系

軽打
 過去にHurricane NEO III Blue Sponge(省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジ)を使用しておりましたが、キョウヒョウNEO3ブルスポと比べると明らかにスピン系テンションのような弾みでした。キョウヒョウNEO3ブルスポは、ブルースポンジがノーマルキョウヒョウNEO3のオレンジスポンジよりも柔らかくて、食い込みやすいのですが、それでも軽打では全然弾みません。キョウヒョウはとにかく当てるだけだと、スポンジが厚とか中みたいに飛ばないんですよね。スピンアートもキョウヒョウと同じように、軽打はそこまで弾まないです。スピンアートをイメージしていたので、ディグニクス09Cは当てるだけだと粘着っぽくなく結構弾みました。これは驚きでしたね。また食い込みがとても良くて、テナジー05ハードよりもスポンジ硬度が硬いとは感じなかったです。打つ前、貼りたてで球をついてみたときにも感じましたが、ディグニクス09Cはかなりスピン系テンションラバーに近い粘着性テンションラバーだと思います。球つきのときの弾みから、ディグニクス05と同等のスピードが得られるのではないかと期待してしまいました。

ラリーでのドライブ
 軽くドライブをかけるだけだと、結構ボールが浅く入る印象を受けました。ディグニクス05と比較すると明らかに浅いですね。Dignics 80(ディグニクス80)もディグニクス05と比較するとボールが浅く入りやすいんですが、ディグニクス09Cの打球は多分ディグニクス80よりも浅く入っていたと思います。
 また回転を全くかけないで弾くようにドライブを打つと、ディグニクス09Cの良さが出ないと感じました。ミート気味に打つのではなく、ラバーへ食い込ませながら弧線を描くようにねじり上げるように回転をかけるとディグニクス05よりもディグニクス09Cの方が、弾道の急上昇-急降下が顕著に感じました。ディグニクス05でもドライブの引き合いなどで「オーバーする!?」ってボールが相手の台へ沈み込むような弧線を描いて入り、その後上へホップするドライブを打てる時がありますが、ディグニクス09Cはさらにエグい跳ね上がり方をするようなドライブが打てる印象です!決してキョウヒョウ系の台に入ってからさらに沈み込むような粘着特有の癖球ではないと感じました。
 しっかりラバー全体に食い込ませてドライブをかけることができた時は、ディグニクス05と比較して、弧線を強く描くので安定感があって、とても強い回転量のドライブとなります。
 またディグニクス09Cのドライブを受けて感じたことをあげます。まず回転量がエゲツなくてオーバーミスが増えました。加えて回転が強いと思って思い切りラケット角度を被せてブロックしようとすると、たまに全然回転のかかっていないドライブも来て落とすこともありました。弾むラバーなので回転の弱いドライブも打てるということですね。キョウヒョウでは、弾まないのでこのようなボールは打てないと思いました。またやはりテナジー05やディグニクス05と比べるとボールは遅いと感じましたね。中陣や後陣からのドライブであれば、逆をつかれない限り、ノータッチは少ないと思いました。

面を開いたドライブ
 やはりディグニクス09Cは粘着ラバーですので、面を開いてドライブした方が弧線が出やすくて、安定感があって威力のあるドライブが打てました!キョウヒョウNEO3だとインパクトやスイングスピードが甘いとネットミスしやすいのですが、ディグニクス09Cだとネットミスはほとんどイメージできないくらいボールが上へ上へと上がります。逆にオーバーミスしやすいのでそこは押さえ込むように、弧線を描かせるスイングやボールの上側を水平に捉えるようなスイングが必要だと感じました。ボールの重さでいうとキョウヒョウNEO3の方が重いと思いますが、ディグニクス09Cの良かった点はつぎの3点になります。

  1. 打球点を多少落としてもスピードドライブができるような粘着ラバーらしい弧線
  2. 食い込みが良いので、打球点がブレてもスピードドライブが安定して入る
  3. 台に入った後ホップする弾道のドライブが打てる

対下回転に対するループドライブ
 とても打ちやすいですし、安定感はありました。しかし、自分はディグニクス05よりもディグニクス09Cの方が柔らかく感じてしまいました。柔らかく感じるので、ドライブそのものを安定して入れやすいのですが、グッと強い回転量を出せているとは感じにくかったです。バタフライの回転性能公表値を考慮するとディグニクス05以上の回転量のループドライブが打てて欲しいところでしたが、対下回転ループドライブでは、それを感じることはできませんでした。どちらかというとディグニクス05と同等程度のドライブになりやすいと感じました。またディグニクス09Cは粘着ラバーですが、どちらかというとディグニク05と類似の高い弾道になりやすく、低くて沈むようなループドライブはやりにくいと感じました。キョウヒョウNEO3の方が、弾道が低くて回転量の多い質の高いループドライブは打ちやすいですね。スポンジ硬度の割に、ディグニクス09Cのシートへ食い込みやすいからだと思います。回転量もディグニクス05の方が安定して高い回転量のドライブが打ちやすいと感じました。これは普段からディグニクス05をメインで使っていて慣れているからだと言えます。また、食い込みが良いからとスイングが遅すぎるとディグニクス05でもあるのですが、ボトっと落ちる時も度々ありました。しっかり体幹や重心を低く固定して、円運動で持っていかないと安定しないと思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 スピードドライブもループドライブ同様、打ちやすかったです。特に好感触だったのが打点の速いドライブですね。ディグニクス05の場合、打点が速いと、ボールへ当てるときの角度、ボールへの当て方などの難しさ、弧線の出しにくさ、などを感じやすいのですが、ディグニクス09Cだと簡単に弧線を描きやすいので、基本的にスピードドライブ狙いで行った方が良いと感じましたね。これは利点だと思います。結構打点を落としてもスピードドライブで持っていけるくらいスピードドライブが打ちやすかったです。また打球点を積極的に体の前方へ持っていきやすいと感じました。下から上ではなく、後ろから前へ前へとスイングすることがやりやすいラバーでした。

ブロック
 特にやりにくいと感じませんでしたが、一瞬ボールを持ってしまうのでブロックのテンポがゆっくりになりやすいと感じました。自分から少しでも前へスイングしてカウンター気味にしたり、アクティブブロックのように伸ばすようなブロックにした方が、良いと思いました。ある意味ブロックのように相手のボールのスピードや威力を利用しやすい技術の方が、球持ちを感じやすいので好きな人はすごく好きな感覚で打てると思います。

カウンタードライブ
 確かにやりやすいです。ボールが上へ上へ上がりやすいので、当てた後ボールを沈めるようなボールの抜き方をしてあげた方が良いと感じました。あるいはトップ選手を拝見するとボールの上をとらえるのではなくて、ボールの後ろをぶつけるようにとらえながら回転をかける方が安定するのではないかと思います。多分フォアならキョウヒョウの方が、自分の回転をのせてカウンタードライブすることがやりやすいと感じました。キョウヒョウのようなドライブは難しいですが、ディグニクス05と比較すると粘着ラバーらしくカウンタードライブが打ちやすくて気持ち良かったです。試合じゃなかなかできないですけどね。ディグニクス05の方がカウンタースピードドライブが打ちやすく、ディグニクス09Cの方が、カウンターカーブドライブやシュートドライブ、上書きドライブがしやすいと感じました。

ストップ
 確かに止めやすいです。ただ回転をかけようとすると思ったより弾いてしまうので、難しく感じました。ただ硬いラバー、例えばテナジー05ハードやXIOM(エクシオン)のOmega VII Tour(オメガ7ツアー)やOmega VII Hyper(オメガ7ハイパー)、andro(アンドロ)のRasanter R53(ラザンターR53)でも、スポンジの硬さでやりやすいので、ディグニクス09Cの粘着シートだからストップがやりやすいという感じは受けませんでした。おそらくオメガ7ハイパーもシートは食い込みやすくてスポンジは硬いラバーだと思うのですが、ディグニクス09Cの方がより食い込みやすいと思います。また、ディグニクス05でストップに慣れると、切れたストップがピタッと出せるようになるので、ディグニクス09Cを使う必要性は、ストップに関しては感じませんでした。
 また印象として、食い込みが良いので、アップ系のショートサーブは浮かしてしまうことが多いように感じました。実際、ディグニクス09Cに変えた選手にはアップ系ショートサーブが今まで以上に効くようになった印象があります。

ツッツキ
 サイドを切るようなツッツキがしやすかったですね。切ろうとせずコースを狙って低く入れる分なら十分な性能を示してくれると感じました。切ろうとすると食い込みすぎるので、食い込ませずにシートだけで回転をかけた方が回転がかかると思います。

フリック
 フリックはとても安定して良いと感じました。軽く打つだけでドライブ回転もかけることができてフリックがとても安定する印象を受けました。スピードフリックも安定してやすかったですね。どちらかというとナックルフリックよりも勝手にドライブフリックになる感じですね。スピードを出すなら上方向へ強くスイングした方がドライブ回転がかかって安定するので良いと思います。

サービス
 強い回転がかかります。ディグニクス05では巻き込み系で逆横下回転をかけるのが少し難しいのですが、ディグニクス09Cなら巻き込み系でブチッと逆横下回転サーブを出しやすかったです。またディグニクス05と同様で、ぶつけるような軌道で縦切り系サーブが切れてないようでかなりブチッと切れる感じがありました。ボールの重さは感じ辛いですが、回転量はかなり高いサーブを出しやすいです。

バックハンド系

軽打
 軽打では、やはり普通のスピン系テンションに近い打球感でした。バックにSpin Art(スピンアート)を使っていた時の打感やボールの飛び方を覚えておりますが、スピンアートよりもディグニクス09Cの方が明らかにボールが食い込んで、弾んでいます。ボールはそこまで早くない印象ですが、弧線の出方が段違いでしたね。ディグニクス05と比較しても弧線が出ていることがよくわかります。 

ラリーでのドライブ
 ラリーでのバックハンドドライブはかなり好印象でした。食い込みやすいので相手のコートの深いところにドライブが入る感じがありました。テナジー05ハードやスピンアートだと少し浅く入りやすいんですよね。これはかなり好印象でした。 

対下回転に対するループドライブ
 結構オーバーしやすかったです。自分はバックハンドは一度ボールを食い込ませるように少し面を上へ向け気味にボールにぶつけてからドライブをかけるからオーバーミスが目立ったのだと思います。ディグニクス09Cはボールの弧線がめちゃめちゃ上に出るので、打点を落とし気味にしてシートでひっかけて打つと、しっかり回転がかかって、相手がその回転量にミスを誘えると思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 良いですね。自分のバックハンド技術が上達したと錯覚するような強烈なスピードドライブが打ちやすいです。食い込ませやすいので、バックにあっている部分もあると感じました。使うには慣れる必要を感じましたが、慣れれば武器になると思います。ただ自分は最近バックにバタフライのラバーは難しいと感じていることと、食い込ませてから回転をかけるスイングになりやすいので、あわないと感じてしまいました。

ブロック
 特にやりにくいということはありませんでした。粘着ラバーのような落ちる感じもなくてコントロールもしやすかったです。たまにオーバーミスすることが気になりましたが、これは慣れでしょうね。またこのラバーはサイドスピンブロックなどのブロックもやりやすくて非常に好印象でした。

カウンタードライブ
 バックハンドでのカウンタードライブは打点をあまり落とさないし落とせないので、あまり良さを感じませんでした。ディグニクス05でも十分良いカウンタードライブが打てると思います。ディグニクス05とディグニクス09Cのバックのカウンタードライブは同じくらいのやりやすさだと思います。スピードと直線性はディグニクス05の方がありました。

ストップ
 どちらかというとやりにくかったです。自分はハードなラバーが好きな理由はレシーブなどのツッツキで、回転の影響でボールは浮かさないためです。柔らかいと感じるラバーはバックだと感覚が悪いので、使いづらいと感じてしまいました。

ツッツキ
 入れるだけであれば問題なくやりやすいです。でもそれならテナジー05ハードでもできる気がしますね。スピンアートではかなりブチ切れのツッツキができて良かったのですが、ディグニクス09Cだと切りに行くと食い込みすぎてぶっ飛ぶのでやりにくいと感じてしまいました。自分はあまりツッツキが得意ではないので、上手な人は切ることができると思います。また、ディグニクス05に慣れてくると、ツッツキも浮きにくく、タイミングでしっかり切って低く出せるようになるのでツッツキに関してはディグニクス09Cを必要とは感じませんでした。

チキータ
 球持ちが良いのでかなり引き付けることができるのと、めちゃめちゃボールが上に上がるので、スイングスピードを意識しなくても良いので、ディグニクス05よりも安定したチキータがしやすいと感じました。スピードも台上であれば問題ないスピードが出しやすいですし、サイドスピンを入れると相手がかなり取りにくそうにしていたので、回転量による嫌らしさを含めると非常に良いと感じました。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 ディグニクス09C ≧ ディグニクス05 > Diginics 80(ディグニクス80) > テナジー05

スピード
 ディグニクス05 > ディグニクス09C > スピンアート

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 ディグニクス09C > ディグニクス05 > テナジー05

フォアカウンタードライブのやりやすさ
 ディグニクス09C > ディグニクス05

バックカウンタードライブのやりやすさ
 デイグニクス05 = ディグニクス09C

ボールの重さ(重いボールが打てたと感じやすいラバー)
 省チーム用キョウヒョウNEO3ブルースポンジ > ディグニクス09C ≧ ディグニクス05

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レビュー Dignics 05(ディグニクス05)

説明

 Dignics 05(ディグニクス05)はButterfly(バタフライ)が2019年4月に販売開始したラバーになります。今までバタフライの看板ラバーであるTenergy(テナジー)を超えるラバーとして販売されました。テナジーそのものが、トップ選手の半数以上が使用するラバーとしてワールドスタンダードに君臨していたわけですので、ディグニクスは次世代のワールドスタンダードと言えるでしょう。その性能はテナジー以上であり、バタフライと契約するトップ選手が次々に使用、その直後に結果を出す、その事実が高い宣伝効果となってディグニクスは注目の的となりました。まさにトップオブトップのラバーです。

 本ブログの初めてのレビューはやはり、このディグニクス05にしたいと思っておりました!(katsuo000の本音)

 このラバーとの出会いは、実はあまり良くありませんでした。当時フォアに粘着ラバーを使っており、初めはバックハンドに使ってみようと思って購入したのがきっかけです。実際にバックで使ってみましたがバックハンドの技術不足で使いこなせず、継続使用できませんでした。その後、団体の全国大会に出場する機会を得てそこで数名のバタフライ契約選手がディグニクス05を使って練習している様子を拝見させていただきました。それまでフォアには粘着ラバーを使っていたのですが、粘着ラバーはおろか、テナジー05でも得られないボールのスピードに驚いたことを覚えています。全国という舞台で戦いたい!と思い、用具を見直そうと思ってディグニクス05への変更を決めました。

公表性能値

 用具性能値比較からわかるように、回転性能とスピード性能がTenergy 05(テナジー05)を上回る性能を持つのがディグニクス05です。Tenergy 05(テナジー05)も高い回転性能を持っていて、ループドライブの質の高さやサーブの回転量などは粘着ラバーに負けない回転量を有します。そのテナジー05を上回る回転性能とスピード性能を持つラバーと公表されたラバーがディグニクス05というわけです。粘着ラバーを使っておりましたが、現在ディグニクス05を使っていて、回転量に不満は感じておりません。

Spring Sponge X(スプリングスポンジX)とDignics(ディグニクス)シリーズのシート

 Spring Sponge X(スプリングスポンジX)は、テナジーシリーズに採用されているSpring SPonge(スプリングスポンジ)の進化版だと思います。スプリングスポンジが独立気泡のスポンジ他のラバーメーカーでは製造できないもののようです。そのスプリングスポンジの独立気泡を、独立を維持したままより細かくしたものがスプリングスポンジXらしいです。結果、スプリングスポンジよりもスプリングスポンジXの方が、14%変形しやすくなり、反発力は3%向上しているそうです。
 テナジーシリーズのスプリングスポンジといえば、オレンジ色のスポンジが特徴的ですが、ディグニクスシリーズのスプリングスポンジXは真紅と言える赤色が特徴で、一眼でディグニクスシリーズとわかります。

 表面の強度と球持ちが改善したことも紹介されています。球持ちについてはシートで捉えるカウンターやチキータがより安定することが紹介されていますね。また強度ですが水谷選手も言及されていてラバーの交換までの時間が長くなったとおっしゃってます。確かにテナジーシリーズと比べてもシートが白くなるまでの時間が長くなっていて、保管条件が良ければ1年近くシートの劣化は感じません。ラバー全体で考えると、スプリングスポンジXのテンションというか張りが緩む感じがあるので、刻一刻と状態は変化していくと感じます。
 ディグニクスシリーズのシートは透明感が強くなっていますが、ドイツ製の曇り系シートに近い強いシートを採用しているようなので、抜群にチキータやカウンターがやりやすいと感じます。

Dignics 05の重量と貼り

 メインラケットであるZhang Jike ZLC(張継科ZLC)に貼りました。

 使用している接着剤はFree Chack II(フリー・チャック2)になります。何度もディグニクス05をフリー・チャック2で貼りましたが、だいたい48 g前後になりました。フリー・チャック2はトロネバ系で塗りすぎると重くなりやすいので気を付けた方が良いと思います。ディグニクス05は硬いラバーですが、あまり厚塗りするとスピン性能が落ちたりするのでオススメはしません。

Dignics 05(ディグニクス05)
 High Tension(ハイテンション)裏ラバー
・スポンジ厚:厚(1.9 mm)、特厚(2.1 mm)
・スピン:12.0
・スピード:13.5
・Sponge硬度:40
・オープン価格(9,800円 + 税)
・70 g(切断前) → 48 g(張継科ZLCに貼って)

Dignics 05の3つの特徴

最高峰の回転性能とスピード性能

 なんと言っても極めて高い回転性能を有しています。ループドライブは全日本選手権出場者の方にも、初見ならオーバーミスを誘うことが可能なレベルにあります。弾道は粘着ラバーと異なり高いですが、回転量は明らかに粘着ラバー顔負けな高性能ぶりを発揮します。さらにテナジー05よりも明らかにボールのスピードが速くなっています。回転性能とスピード性能がまさに両立した最強のラバーの一つと言って良いでしょう。有機溶剤を塗っていないのに、有機溶剤を使用したような回転とスピードが得られるハイエンドラバーです。

カウンタードライブがやりやすい!

 さらに、驚くべきはカウンタードライブのやりやすさです。正直言って角度はあまり関係なくて相手のドライブに対してボールを潰すようにボールの真上を捉えてスピードドライブを打てば、ほぼ入ってしまう驚異のカウンタードライブ性能を持っています。相手のドライブに対してかなり強いと言っても過言ではないと感じました。このカウンタードライブのやりやすさも、このラバーを本職ラバーとして使う理由になります。恐らくディグニクス05が高いカウンタードライブ性能を有する理由は、シートが強いためだと思います。テナジー05よりもシートが強く硬くなったために、相手のドライブに対して強いのだと思います。
 カウンタードライブができなくても、ブロック角度の繊細さも鈍くなったと思います。これもシートが強くなったためだと思います。回転性能の高いラバーは総じて、相手のドライブやサーブなどの回転量の多いボールに対して繊細であることが多いと感じます。個人の感想ですが、テナジー05の方が相手のドライブに対して角度で合わせづらいと感じます。一方ディグニクス05は、相手のドライブに対し入れるだけであれば、角度がわからなくても、なんとか入れられる印象があります。実際にこのラバーのおかげでブロックが入って勝てたと感じた試合もありました。このように相手の攻撃的なドライブボールに対しても、強さを発揮できるラバーは、現代卓球で求められる性能の一つだと思います!

最高峰の回転性能とスピード性能なのに軽い!

 先ほども触れましたが、この高いスピン性能とスピード性能を有しながら軽いという特徴を持っていることも特筆すべきだと考えます。軽いことでボールが軽くなるということを危惧する場合もあるかもしれませんが、自分はサイドバランサーでコントロール可能だと思いますので、むしろ軽いことはメリットであると考えます。これだけの回転性能とスピード性能を持つのに50 gを切るラバーは他にありません。よく一緒に練習する相手の方からも、ボールは重いとおっしゃっていただくので、ディグニクス05のボールは決して軽くはないと思います。唯一弾道が高くなりやすいので、低い弾道のドライブを打った方が良い場面があるかもしれません。

各技術レビュー

 それでは各技術を細かく紹介させていただきます。

フォアハンド系

軽打
 軽打から激しく回転がかかる感じはありません。シートの粒形状はおそらくテナジー05と類似または同形状であると感じました。テナジー05だとTenergy 80(テナジー80)などと比較してスピード感がかなり落ちるイメージがありますが、その分シートがしっかりボールをグリップするので回転がキュッとかかる感じがあります。ディグニクス05では、少しシートにひっかけると、相手がとても取りにくそうになってしまう位、ボールが伸びます。ミート気味に打つと体感としては直線的にボールが飛んでいるように感じるのですが、使い込んでいくと弧線を描いていることを感じます。ミート打ちですら弧線を描くあたりは、粘着ラバーに似ていると感じました。

ラリーでのドライブ
 かなり回転がかかります。特に相手のボールを利用してスポンジに食い込ませて打てた時は、相手の台に急降下するようなエグい弾道を示すことがあります。粘着ラバーの癖球のような沈むいやらしさはありませんが、強烈な回転で台上に飛び込んで思い切りホップして跳ね上がる弾道はテナジー05の上を行く、まさにディグニクス05特有の弾道と言えるでしょう。このディグニクス05特有の弾道は、自分にとってとても気に入っている点になります。またスピードはもちろんテナジー05よりも速いです。体感としてはテナジー80と同等以上だと感じます。イメージとしてはテナジー80よりも弧線を描いてるのにスピードが出ているという不思議なスピード感で、テナジー80のような速さなのに、弧線を描く分、対空時間は長い不思議なリズムでボールが台を疾走します。
 下がって打つときなどに、スピン系テンションラバーのようにただ弾いてしまうと、このラバーの持ち味は活かされないと感じました。打球点が落ちた時はラバーにしっかり食い込ませることで、えげつない弾道と回転量が出せます。まさに粘着ラバーのような回転重視のドライブができるのが良いですね。また粘着ラバーでは打てないようなスピードのスピードドライブが下がっても打てる点もとても気に入っております。まるで有機溶剤を塗っているような弾み具合で下がっても一発狙えるのがとても良いと感じます。
 カーブドライブ、シュートドライブ、どちらも打球点を落としてしっかり回転をかけるとエゲツない曲がり方をしますね。良好です!どちらかというと、カーブドライブではオーバーミスか、弾道がゆっくりになりやすいので、シュートドライブとか面を開き気味に打った方が素晴らしいドライブが打ちやすいです。

面を開いたドライブ
 粘着ラバーでスピードドライブを打つためには、面を開いてドライブを打つ打ち方があいます。自分の腕が悪いのだと思いますが、スピン系テンションラバーの中には、面を開いてドライブすると逆に回転がかかりにくくなるラバーも存在します。ディグニクス05でその面を開いた打ち方をしても、しっかり回転がかかりますので、スピードドライブもとても打ちやすいですね。ただ、打球点を落としすぎると流石に粘着ラバーではないので、相手のコートに入れるのが難しくなると感じました。スピン系テンションラバーなら十分な性能だと思います。

対下回転に対するループドライブ
 シートで回転をかけるループドライブをメインで使ってますが、かなり良いです。自分はまだ技術が足りないので、確実に相手コートに入れるためにだいぶ弧線を高くしてループドライブを打ってしまいますが、かなり高いボールになっても見た目以上にエゲツない回転がかかっているので、結果的にこのループドライブだけで得点できるくらいの武器になってしまいます。あと飛びついた時に食い込ませて入れるだけになった時も想像以上に回転がかかる感じがあってミスを誘うことができます。弧線の低いループドライブが打てるようになれば、かなりの質のループドライブになると思います。
 良いことばかり書いてしまいましたので、少し慣れが必要と感じた点を記載します。上回転に対しては敵なしに素晴らしいディグニクス05ですが、高い回転性能だからこそ、ボールに残っている下回転系の回転には影響を受けやすいです。また球離れがかなり速いです。この2点があるために、扱いづらいと感じる方が多いのではないかと想像します。自分自身は、ループドライブ含め対下回転ドライブ時は、腕だけではなく体や腰で打つことを意識して打球することで、安定するようになりました。グリップ感がとても乏しいと思いますので、この辺りが難しいと感じる人は多いと思います。

対下回転に対するスピードドライブ
 スピードドライブもかなり良いです。スピン系テンションらしい、インパクトで持っていくスピード重視のスピードドライブも、面を開いて回転量のかかった重いスピードドライブもどちらも行けます。スピードがテナジー05よりも速くなったことで、ノータッチエースが狙えるのに回転量もあって安定させることができるのが良いですね。球質が揃うとカウンターを狙われるので、スピードドライブも的を絞らせないように技術力を上げていきたいです。

ブロック
 テナジー05と比較して明らかに良くなったと感じるのがブロックです。テナジー05は相手の回転に影響もされやすく軽いので弾かれる感じもありました。しかしディグニクス05はスポンジが硬く、かつシートが強くなったためか、かなりブロックが安定します。雑に角度を作ってもブロックを入れやすいんですよね。なんとか当てて入れるということがとてもやりやすいと感じました。このラバーのブロックのおかげで勝てた試合もあるくらいです。上回転のボールに対してかなり強い印象があります!

カウンタードライブ
 これ!ディグニクス05はカウンタードライブがかなり良いです。コースがわかればあとは相手のボールの上を捉えて回転とスピードを与えるだけで、強烈なカウンタードライブを打つことができます。かなりカウンタードライブがしやすいラバーでした。このカウンタードライブの打ちやすさも、ディグニクス05の好きなところです。

ストップ
 初めは弾いてしまって、かなり難しかったです。でもシートでひっかけるようにすることで台上でもかなり回転をかけることができるようになり、安定するようになりました。スポンジも硬いのでおさまりが良かったです。多分、他のディグニクスよりもディグニクス05の方がストップは切れておさめやすいと思います。

ツッツキ
 ストップとも被りますが、回転をかけやすいです。Spin Art(スピンアート)と比較すると流石に劣りますが、ディグニクス05もかなりツッツキが武器になるラバーだと思います。個人的にはDignics 09C(ディグニクス09C)のツッツキよりも切れて武器にしやすいと思ってます。

フォアフリック
 角度を合わせるフリックはあまり安定しないと感じました。思い切って強打を狙った方が弾みもあるので良いと思います。自然と回転がかかるようにラケットがボールに当たってからさらに上へスイングするようにすると安定すると思います。台と平行にスイングするなら、ナックルフリック系の方が良いと思います。

サービス
 ディグニクス05に変えてから、回転量はもちろん上がりましたが、それ以上に、Young Generation(YG、ワイジー)サーブが切れるようになりました。ブチッと切れます。逆横回転系で下回転サーブが出せるようになったのはサーブにバリエーションが出せるようになったので非常に重宝しています。また、ぶっつけ系のサーブでブチッと切ったり、ナックルにしたりが、しやすいので重宝しています。回転量を確保するためにすくい上げる系の順横下回転系サーブ以外にも球足の早い下回転系のサーブも出しやすいと感じています。ただし慣れるまでには結構時間が掛かりました。

バックハンド系

軽打
 フォアハンドで感じたことですが、やはり少しシートにひっかけるだけでアクティブブロックのような伸びるボールが出せます。スピードも出しやすくて良いです!しかも多分相手からするとミートに近い直線弾道のようなボールが、とても安定します。オートマチックにミート系またはスピード系ドライブが安定するのでとても頼もしかったです。

ラリーでのドライブ
 1年前に使ってみた時は全く安定しませんでしたが、1年間でだいぶバックハンドのインパクトが良くなったようで、かなり良かったです。また自分はバックハンドのドライブはどちらかというと食い込ませてから回転をかけるドライブの打ち方をしますが、その打ち方でも十分に回転がかかり威力が出せるのがディグニクス05だと思います。余談ですが、テナジー05もディグニクス05もドイツ製ラバーにあった打ち方をしても、十分に威力のあるボールが打てます。高性能なラバーだと改めて感じます。個人的にはシートだけで打つような回転優先の打ち方にした方が、回転量が増す分、さらに安定して好感触でした。こういった打ち方を選ばない高性能さは、バタフライのラバーっぽいなと感じました。
 また、テナジー05やTenergy 05Hard(テナジー05ハード)では軽打時などあまり面を下に向けすぎるとボトッと落ちることもありましたが、ディグニクス05ではシートの引っ掛かりがより強力になっているためか、面を相当下に向けてもかなり安定すると感じました。

対下回転に対するループドライブ
 フォアハンドドライブと比較してしまうと少し回転量が劣ると感じましたが、それでも安定して入れることができました。1年前は手だけで打っていたために安定を感じることができませんでしたね。今はかなり腰と体を入れるようにしているので、かなり安定して入れることができました。しかもかなり攻撃的なドライブが打てるのが好印象でした。

対下回転に対するスピードドライブ
 これもかなり良かったです!個人的にはしっかりボールに負けないように体幹を意識して打つことで、簡単にスピードドライブを打つことができました。試合で使えば相手にブロックを強いることができるレベルのスピードドライブを安定して打つことができました。一発で抜くほどのスピードドライブはさすがに難しかったですが、回り込んでフォアハンドドライブするよりも安定感と威力のあるドライブが打ててかなり好感触でした。

ブロック
 フォアでも感じてましたが、バックでももちろん良いです。ディグニクス09Cのループでも難なくブロック可能でした。シートが強くなったためだと思います。

カウンタードライブ
 想像できましたが、かなり良いですね。ボールの上を捉えるように打てば勝手にカウンタードライブの完成です。さらに威力を狙って強く打てばライジングカウンターのようなボールが打てます。えげつないですね。

ストップ
 問題なく止めることができます。感触良好でした。

ツッツキ
 ツッツキ練習で感じましたが、想像以上にツッツキで切りやすいです。自分は下手くそなのとアウターZLCのZhang Jike ZLC(張継科ZLC)をメインに使うのでテナジー05でもツッツキが難しいと感じていたのですが、このディグニクス05ではテナジー05よりもツッツキしやすいと感じました。弾むので、とにかくシートだけで打つのがコツだと思います。

チキータ
 ラバーが軽いので急なボールの変化にも対応しやすくて、チキータしやすいと感じました。ただ、まだ自分の腕がついていけておらず、バックハンドドライブほど安定感はありません。今後はバックハンドドライブの延長としてチキータを安定できるように練習したいと考えてます。

他ラバーとの比較(あくまでも個人の感想)

回転量
 ディグニクス09C ディグニクス05 > Diginics 80(ディグニクス80) > テナジー05

スピード
 ディグニクス80 ディグニクス05 > ディグニクス09C

食い込ませたときの弧線の出しやすさ(ボールの沈み込みやすさ)
 ディグニクス09C > ディグニクス05 > テナジー05

寿命
 ディグニクス05 > テナジー05

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